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可愛がられる聖女
帰宅の日
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それからさらに一ヶ月経った。その間、毎日のようにマーガレット達が泊まりに来ていた。だが、毎回二人で来るという訳では無く、どっちか一人の時もあった。
二人に囃し立てられてから、クララがリリン達に告白するという事はなかった。マーガレット達もあれから囃し立てるという事もなかったので、それ以上進まなかったのだ。
それ以外で言えば、クララの美術と裁縫がかなり上達した。そして、約束通り音楽も教えてもらい、簡単な曲であれば弾けるようになった。まだ、人に聴かせられるような演奏ではないが、楽しむ分には丁度良かった。
そして、今日はマーガレットとユーリーが元の街に戻る日だった。本当は、後一ヶ月いるつもりだったのだが、手紙で早く帰ってくるようにと言われてしまったため、帰る日を繰り上げざるを得なかった。
「せめてもう少し一緒にいたかったんだけど、これ以上空けたままに出来ないみたいで、ごめん」
「でも、また来る。あれだったら、クララが私のところに来ても良い」
「ああ、確かに、それも有りか。良いでしょ、お母さん?」
マーガレットとユーリーは、カタリナにクララの外出許可を求める。
「まぁ、二人がいる街なら城もあるし良いかしらね」
「やった! それじゃ、寂しくなったら、いつでも私の所に来てね」
「姉さんの所より私の所の方が良い」
そう言うと、二人は睨み合った。そんな二人にカタリナの鉄拳が振り下ろされる。
「全くくだらない事で喧嘩しない! どっちかしか行かないわけじゃないんだから」
脳天の痛みに、しばらく二人は悶えていた。
「そ、そうだ。もし興味があったら、そこの美術館にお願いして、クララの作品を飾らせて貰ったら? そのくらいの作品は描けるようになっているし、ある意味クララ自身が溶け込んできているってアピールにもなると思う。美術館が嫌だったら、小さなところ借りて、個展でも良いし」
「うん。服やぬいぐるみを飾るのも有りだと思う。元々は趣味の範囲内って話だったけど、売り物に出来るくらいの実力になってるから」
「えっと考えてみます」
「もしあれだったら、私達と共同でも良いしね。クララがやりたいって思ったら連絡して」
「はい」
クララとしては、趣味の範囲内で終わらせるつもりだったが、マーガレット達に誘われて、少し興味を抱いていた。だが、まだ自分の作品を不特定多数に見せるのは、緊張してしまうので踏ん切りは付かなかった。
「それじゃあ、そろそろ行くから」
「あ、はい。お世話になりました」
クララがそう言うと、マーガレットとユーリーは、きょとんとした後、二人で揃ってクララの頬を摘まんだ。
「そうじゃないでしょ」
「お姉さんに対して言う事と言えば?」
若干困惑するクララだったが、二人が言いたい事を理解する。
「あっ、えっと……またね?」
クララがそう言うと、二人は満足したように笑い、二人でクララの両頬にキスをする。
「またね」
「うん。また。あ、それとこれ」
最後にユーリーはクララに手紙を渡す。
「私達が帰ったら、読んで」
そう言って二人は馬車に乗り込む。そして、ナイトウォーカーが動き出し、馬車が進んで行く。二人は、窓から上半身を出して、クララに手を振った。
クララも二人が見えなくなるまで手を振る。
「久しぶりに騒がしい毎日だったわ。あの子達がいないとなると、少し寂しくなるわね」
「そうですね。でも、また会えます」
「そうね。近い内に遊びに行けるように調整しないといけないわね。でも、しばらくは、元の生活を送りなさい。しばらく運動もしていなかったんだから」
「はい。分かりました」
クララは、嫌そうな顔をしつつも素直に頷いた。また太ってきたという程ではないが、ぶくぶくになるのは嫌だからだ。
「講義も再開するから、魔法の復習を忘れないようにね」
「あ、はい!」
すっかり講義の事を忘れていたクララは、しっかり復習しないといけないと思い、やる気を出す。
その後、部屋に戻ったクララは、椅子に腰掛けてユーリーから貰った手紙を読む。
『布と糸が欲しくなったら、私の部屋を使って良い。姉さんも部屋にある画材は勝手に使って良いと言っているから、気にせずに使って』
短くそれだけ書かれているかと思いきや、手紙の下の方に、
『早く告白しちゃえ』
と書かれていた。クララはとっさに手紙をくしゃっと丸める。
「クララさん。何が書いてあったかは分かりませんが、頂いた手紙を粗末にするのはよろしくないと思いますよ?」
「良いんです。姉妹だから、このくらい当たり前です」
クララは頬を膨らませながらそう言って、ベッドの横にある棚に手紙を放り込んだ。
「おぉ……クララちゃんが珍しくご立腹だ」
「それだけ姉妹として打ち解けたという事でしょう。喜ばしい事です」
「そ、そうなんですかね……?」
リリンはクララの成長を喜んでいるが、サーファは、この成長は良いのかと困惑していた。
クララは、マーガレットとユーリーという自身の姉となる存在に出会った。この出会いは、クララの人生をより華やかに彩る事になる。
だが、クララの知らないところで、この幸せな日々に暗雲が立ちこめてきていた。クララの人生の中で、最大規模の争いが始まる。
二人に囃し立てられてから、クララがリリン達に告白するという事はなかった。マーガレット達もあれから囃し立てるという事もなかったので、それ以上進まなかったのだ。
それ以外で言えば、クララの美術と裁縫がかなり上達した。そして、約束通り音楽も教えてもらい、簡単な曲であれば弾けるようになった。まだ、人に聴かせられるような演奏ではないが、楽しむ分には丁度良かった。
そして、今日はマーガレットとユーリーが元の街に戻る日だった。本当は、後一ヶ月いるつもりだったのだが、手紙で早く帰ってくるようにと言われてしまったため、帰る日を繰り上げざるを得なかった。
「せめてもう少し一緒にいたかったんだけど、これ以上空けたままに出来ないみたいで、ごめん」
「でも、また来る。あれだったら、クララが私のところに来ても良い」
「ああ、確かに、それも有りか。良いでしょ、お母さん?」
マーガレットとユーリーは、カタリナにクララの外出許可を求める。
「まぁ、二人がいる街なら城もあるし良いかしらね」
「やった! それじゃ、寂しくなったら、いつでも私の所に来てね」
「姉さんの所より私の所の方が良い」
そう言うと、二人は睨み合った。そんな二人にカタリナの鉄拳が振り下ろされる。
「全くくだらない事で喧嘩しない! どっちかしか行かないわけじゃないんだから」
脳天の痛みに、しばらく二人は悶えていた。
「そ、そうだ。もし興味があったら、そこの美術館にお願いして、クララの作品を飾らせて貰ったら? そのくらいの作品は描けるようになっているし、ある意味クララ自身が溶け込んできているってアピールにもなると思う。美術館が嫌だったら、小さなところ借りて、個展でも良いし」
「うん。服やぬいぐるみを飾るのも有りだと思う。元々は趣味の範囲内って話だったけど、売り物に出来るくらいの実力になってるから」
「えっと考えてみます」
「もしあれだったら、私達と共同でも良いしね。クララがやりたいって思ったら連絡して」
「はい」
クララとしては、趣味の範囲内で終わらせるつもりだったが、マーガレット達に誘われて、少し興味を抱いていた。だが、まだ自分の作品を不特定多数に見せるのは、緊張してしまうので踏ん切りは付かなかった。
「それじゃあ、そろそろ行くから」
「あ、はい。お世話になりました」
クララがそう言うと、マーガレットとユーリーは、きょとんとした後、二人で揃ってクララの頬を摘まんだ。
「そうじゃないでしょ」
「お姉さんに対して言う事と言えば?」
若干困惑するクララだったが、二人が言いたい事を理解する。
「あっ、えっと……またね?」
クララがそう言うと、二人は満足したように笑い、二人でクララの両頬にキスをする。
「またね」
「うん。また。あ、それとこれ」
最後にユーリーはクララに手紙を渡す。
「私達が帰ったら、読んで」
そう言って二人は馬車に乗り込む。そして、ナイトウォーカーが動き出し、馬車が進んで行く。二人は、窓から上半身を出して、クララに手を振った。
クララも二人が見えなくなるまで手を振る。
「久しぶりに騒がしい毎日だったわ。あの子達がいないとなると、少し寂しくなるわね」
「そうですね。でも、また会えます」
「そうね。近い内に遊びに行けるように調整しないといけないわね。でも、しばらくは、元の生活を送りなさい。しばらく運動もしていなかったんだから」
「はい。分かりました」
クララは、嫌そうな顔をしつつも素直に頷いた。また太ってきたという程ではないが、ぶくぶくになるのは嫌だからだ。
「講義も再開するから、魔法の復習を忘れないようにね」
「あ、はい!」
すっかり講義の事を忘れていたクララは、しっかり復習しないといけないと思い、やる気を出す。
その後、部屋に戻ったクララは、椅子に腰掛けてユーリーから貰った手紙を読む。
『布と糸が欲しくなったら、私の部屋を使って良い。姉さんも部屋にある画材は勝手に使って良いと言っているから、気にせずに使って』
短くそれだけ書かれているかと思いきや、手紙の下の方に、
『早く告白しちゃえ』
と書かれていた。クララはとっさに手紙をくしゃっと丸める。
「クララさん。何が書いてあったかは分かりませんが、頂いた手紙を粗末にするのはよろしくないと思いますよ?」
「良いんです。姉妹だから、このくらい当たり前です」
クララは頬を膨らませながらそう言って、ベッドの横にある棚に手紙を放り込んだ。
「おぉ……クララちゃんが珍しくご立腹だ」
「それだけ姉妹として打ち解けたという事でしょう。喜ばしい事です」
「そ、そうなんですかね……?」
リリンはクララの成長を喜んでいるが、サーファは、この成長は良いのかと困惑していた。
クララは、マーガレットとユーリーという自身の姉となる存在に出会った。この出会いは、クララの人生をより華やかに彩る事になる。
だが、クララの知らないところで、この幸せな日々に暗雲が立ちこめてきていた。クララの人生の中で、最大規模の争いが始まる。
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