吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ

月輪林檎

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出会いを楽しむ吸血少女

モードレッド邸へ

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 私が次に会いに行った騎士はモードレッドさんだ。色々と気になる事はあるけど、深くは聞かない事にする。向こうから話してくれるのなら聞くという感じだ。
 モードレッドさんの屋敷にも既にシルキーがいた。ただし、私が見た事のないシルキーだ。

「精霊界から?」

 私が確認すると、頷いて答えた。向こうにいたシルキーもこっちに来ていたみたい。しかも、何も言わずに既に仕事を始めている。
 シルキーは少し申し訳なさそうな表情になる。勝手に仕事をしていたからだろう。

「大丈夫。誰かに迷惑を掛けないなら、このままお仕事をしてくれて良いから。ご飯は食堂があるから、そこで食べてね」

 そう言うと、嬉しそうに頷いた。

「あなたと一緒にやって来たシルキー達にも伝えてくれる? ここら辺の掃除をしてくれるのは嬉しいから」

 嬉しそうに何度も頷いてから、シルキーは屋敷を出て行った。他のシルキー達と情報共有してくれるという事だろう。入れ替わりで、元々いたシルキーが入って来た。
 私に頭を下げてから、仕事を始める。それと同時に慌てた様子のモードレッドさんが二階から降りてきた。既に甲冑は脱いでおり、普通のワンピースを着ている。若干髪が濡れているから、お風呂にでも入っていたのかな。金色の少し長い髪と緑色の瞳の筋肉質で引き締まった女性だ。
 モードレッドさんはすぐに私の前で跪いた。

「遅れて申し訳ない」
「いえ、突然訪問したのは私ですので気にしないでください。髪をしっかり乾かした後でも構いませんよ?」
「いや、このままで構わない。すまないが、まだ屋敷を把握していなくてな。応接室がどこにあるのか……」
「ああ、こっちですよ」

 そもそも私が建てたものなので、部屋の場所くらいは普通に把握している。私が案内して、シルキーにお茶の用意を頼む。私とモードレッドさんが対面に座り、アスタロトは私の隣に座る。

「そちらのは」
「アスタロト。私が使役している悪魔です。私が命令しない限り、皆さんを害する事はありませんので安心して下さい」
「そうよぉ。主人の配下を害する程愚かさじゃないわぁ。私の可愛い主人が怒るところを……それはそれで見たいけれどぉ、好き好んで怒らせたくはないものぉ」

 時々怒ってはいるけど、アスタロトが私を怒らせようとしている訳では無い。向こうの常識がヤバいから、それを正して、ここで暮らす上での注意をしているだけだし。私と考えが違えば、私が望まない事をしてしまう可能性があるというのもあるから、アスタロト達もちゃんと直してくれる。

「悪魔……だが、あなたは……」
「神であり天使でもあります。鬼や竜や精霊でもありますが、本質は吸血鬼ですね」
「……中々に変わったお身体をしているようだ。だから、俺達の身体も変質させる事が出来たという事か……」

 モードレッドさんは、少しだけ怪訝な表情をしながらそう言った。まぁ、おかしな身体をしている自覚はあるので、特に気にはしない。

「そこは分からないですけど、私の周りには女性がほとんどですから、それに引っ張られたのかもですね。そこはごめんなさい」
「いや、気にしない……ん? そういえば、王の姿も女性に変わっていたな」
「はい。アーサーさんも私のせいですね。身体の再構築の際に、私の力が大きく関わった結果、私自身の性別などに引っ張られたらしいです」
「そして、王を起点として、俺達を召喚した。なるほどな。恐らく、あなたではなく王が影響しているな。王の性別が変わった事で、俺達の性別も変えられたという事だ。グィネヴィア様だけが、そのままなのは、元から女性だったからだろう」

 モードレッドさんはそう考察したみたい。確かに、アーサーさんに関わる英雄を召喚したので、アーサーさんの影響は少なからず受けているはず。もしかしたら、私とアーサーさん二人の影響が強いのかな。

「なるほど。そうかもですね」

 そこまで話したところで、モードレッドさんは改めて居住まいを正す。私も釣られて居住まいを正した。アスタロトは気にした様子もなく、横から私に寄り掛かってくる。ぶん殴って姿勢を正させるのは出来るけど、まぁ、モードレッドさんも気にした様子はないから放っておこう。私が重いのを我慢すれば良いだけだし。

「して、俺……私に何か御用でしょうか」

 私が来た本題を聞こうという姿勢になってくれたらしい。粗暴そうな見た目に反して、中身は結構しっかりとしているらしい。騎士としての礼儀がしっかりとしているみたいな感じかな。

「モードレッドさんの得意な事を聞きに来ました。今後、皆さんにお願いする事を決めるためのものです。ここには色々な仕事があるので、モードレッドさんが得意とする事もあると思いますから」
「…………」

 私の言葉に、モードレッドさんは少し驚いている様子だった。予想外の話題を振ってしまったらしい。

「何か意外でしたか?」
「いや……王から俺……私の事を聞いてないですか?」
「普通に話しやすい口調で構わないですよ。アーサーさんから深くは聞いていないですね。モードレッドさんと戦って相討ちになったという事だけは知っています」

 そう言うと、モードレッドはホッとしたような表情をしてから眉間に皺を寄せて固まった。最初は話しやすい口調で良いと言ったから、次はアーサーさんを裏切ったという事を私が知っていたからだろう。

「助かる。確かに、俺は王を裏切った。カムランにて、王に槍で貫かれ、俺は王の頭を割った。だから、ロンゴミニアドはカムランにあるのだろう」
「なるほど……貫かれたのに頭を割れたんですか?」
「ん? あ、ああ……そのまま前に進んで行ったからな。気になるのはそこなのか」

 モードレッドさんは少し戸惑い混じりそう言った。確かに、アーサーさんを裏切った経緯とかの方を訊くのが普通だったかも。でも、槍に貫かれたら、普通距離が出来ているのに、よく頭を割れたなと思ってしまったのだから仕方ない。

「う~ん……それって、私が聞いても良い事ですか? モードレッドさんが話したくないのなら、私は聞きませんよ? 過去はどうか知りませんが、今はアーサーさんの首を取ろうとは思ってないでしょう?」
「その通りだ。だが、今後あなたにも仕える身として、これは話しておきたい。その上で、俺を使うかどうか決めてくれ」
「分かりました」
「ふぅん、面白そうねぇええ!?」

 アスタロトが変な事を言おうとしたから、頬を抓ったら驚きながら喜んでいた。これには、モードレッドさんも引いていた。私も同じなので、モードレッドさんとは気が合うかもしれない。
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