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出会いを楽しむ吸血少女
モードレッドの懺悔
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モードレッドさんは、一度お茶で喉を潤してから話し始める。
「まず、俺は王を王として敬愛していた。だからこそ、王を裏切り続けるランスロットとグィネヴィア様が許せなかった。二人の不義を明るみに出し罰する。そのためにアグラヴェインと二人の不貞の現場に入り王に突きだそうとした。だが、ランスロットの反撃を受け、アグラヴェインは死に俺は重傷を負った。他にも何人かの騎士が殺された」
ランスロットさんは、思っていたよりも遙かにヤバいやらかしをしていた。この状況で袋だたきに遭っていないのが不思議なくらいだ。
「その後、王はグィネヴィア様に火刑の処罰を下した。それが法による決まりだったからだ。王からすれば裏切られたとはいえ、愛した女性を処刑にしたいとは思わなかっただろう。だが、王が法を無視すれば、法は機能しなくなる。王も苦渋の決断だっただろう。王の裁定に異議を申し立てる騎士は多く居た。それでも揺るがせてはいけない事だった」
国の代表者が定めた法を無視すれば、他の国民達が法の存在意義を疑う事になる。国を治める王として、定められた法には従わなければならない。例え、それがアーサーさんの意に反する事だとしても。
「グィネヴィア様の処刑場では、ガレスとガへリスが抗議の意を伝えるために、非武装で処刑場にいた。そこにランスロットが襲撃してきた。処刑されるグィネヴィア様を助けるためだ。その際、近くにいたガレスとガへリスを殺した。甲冑を着ておらず、普段とは違う身なりだったがために、ランスロットはただの護衛だと判断し、障害と見做して殺した。そして、グィネヴィア様を救出した」
ヤバいやらかしどころか取り返しの付かない事をしていた。そうして感情に任せた行動をした事によって、それがどれだけ危ない事なのかを実感したと言っていたのだろう。感情に任せすぎな気もするけど、今のランスロットさんは自分を律していたようだし、ひとまずは信頼しておこう。
「この裏切りにより、王は王としての尊厳と信念を失っていった。いや、もしかしたら、一人の男として、人間としての矜持すらも失っていたのかもしれない。かつて、私が敬愛していた王の姿はなくなっていた。あの時、王としての王は死んだ。俺が殺してしまったんだ」
その後物理的にも殺してしまっているわけだけど、その前にアーサーさんの精神を殺してしまった。モードレッドさんも精神的に相当追い込まれてしまっていたのかもしれない。
「弟達を殺されたガウェインに強く押されて、王はランスロット征伐のために動き出した。あの時の王は気が向いている様子ではなかったが、もはや何でも良いと思っていたのかもしれない。顔から生気が抜けているようだった。他の騎士は、それをランスロットの裏切りに怒っているからだと捉えていたようだがな」
アグラヴェインさん、ガレスさん、ガへリスさんは、ガウェインさんの弟達だったらしい。立て続けに弟を殺されたガウェインさんの怒りは想像に難くない。
ガウェインさんからすれば、ランスロットさんには義が存在しないし、アーサーさんにもランスロットさんを征伐する理由がある。
もしかしたら、そういう事もあって、ランスロットさん征伐に動かざるを得なかったのかもしれない。
忠臣と妻の裏切り。生気を失ったような顔も、激しい怒りを内部に押し込めている状態と見れば、意気消沈しているとは思わないのかも。いや、もしかしたら、他の騎士達もランスロットさんヘの怒りで周りが見えていなかったのかな。
「そして、王国はアーサー王派とランスロット派に二分された。ランスロットが見出した騎士やランスロットが持ち合わせていた志に感化されていた騎士が付いていったという形だ。俺は王に摂政を仰せつかり、国を治める事になった。国を動かしている間、俺は王としての王を殺してしまった事を激しく後悔していた。そこで、俺は一つの答えを出した。俺が王となり、王には王としての責務から身を引くきっかけを作れば良いと。俺がアーサー王になれば良いのだと」
本当にモードレッドさんも追い詰められていたのかな。考え方がかなり極端な気がする。モードレッドさんの考えなら、アーサーさんが戻ってくるまで国を支えて、アーサーさんに王を退き隠居しても良いと進言するのでも良かったはず。
ここで謀反を起こせば、アーサーさんがモードレッドさんを殺さないといけなくなるという風にも考えられなかったらしい。アーサーさんが戻ってくるまでに、謀反が落ち着かなかったという事は、周りの人達もモードレッドさんを推していたのかもしれない。
結局、アーサーさんもモードレッドさんも周りに持ち上げられすぎて、周囲が見えなくなっていたのかな。
「俺の反乱を知り、ランスロットと和解した王は、すぐに王国へと引き返して来た。今度は俺が征伐される側というわけだ。王を王から退けるために、俺は戦うしかなかった。カムランにて最後の決戦となり、俺は王達と戦った。騎士達を多く殺し、王との一騎打ちになった。最後はさっきも言ったとおり、ロンゴミニアドに貫かれ、俺は王の頭を割った。王を王としての責務から解放するために」
ランスロットさんと和解していたなら、アーサーさんのランスロットさんに対する態度にも納得が出来る。怒りはなくても、色々な事にきっかけになっていたのだから、ランスロットさんに思うところがあってもおかしくなかったからだ。
そして、モードレッドさんのアーサーさんへの想いは、王としてのアーサーさんを敬愛し過ぎていたが故のものだという事も分かった。だからと言って、仕方ないと許して貰えるような事ではない。
やっている事は、モードレッドさんが怒りを覚えていたランスロットさんと同じようなものだから。
「死後、エリュシオンに着いた俺は、自分の行動が幼稚な考えによるものだったと気付いた。死んでから気付くとは、本当に馬鹿だったな。取り返しの付かない事をしてしまった。だから、王に謝罪しようと思ったが、エリュシオンに王はいなかった。だが、他の騎士達はいた。何度も罵倒され、糾弾された。これはランスロットも同じだったな。到底許されない事をしたんだ。俺は全てを受け入れ続け、結果和解するに至った。エリュシオンに長い間いたからな。そのくらいの時間はあったというわけだ」
私が一番疑問に思っていたところは、エリュシオンにいる長い時間の中で解決していた。いや、実際にはアーサーさんと和解している訳では無いから、完全な解決とは言えないのかもしれない。そこは今後のアーサーさんとモードレッドさん次第だ。
「ふぅん……存外つまらなぶっ!?」
アホがアホな事を言おうとしていたので、取り敢えずフェイスクローで黙らせる。手の隙間から見えるアスタロトの顔は笑顔だったので、ただのご褒美で終わった。
「これでも俺を使うか?」
「はい。モードレッドさんは戦うのが得意みたいなので、ランスロットさんと同じく素材集めのために色々な場所に派遣します。モンスターを倒して素材を持ち帰って下さい」
そう言うと、モードレッドさんは目を大きく見開いた。
「だが、俺は……」
「それは過去の事ですし、私には関係ないです。他の人達と和解しているのであれば、私がとやかく言う資格はないですよ。あっ! でも、アーサーさんには謝罪しておいてくださいね」
「あ、ああ……」
モードレッドさんは、まだ驚いていた。私が言った事は本心だ。ここで私が糾弾する理由がない。だって、私は当事者でもないし、その状況を実際に見ていた訳でも無い。当事者同士で済んでいるのなら、私から言えるのは、もう一人の当事者であるアーサーさんとの和解を促す事だけだ。
「まず、俺は王を王として敬愛していた。だからこそ、王を裏切り続けるランスロットとグィネヴィア様が許せなかった。二人の不義を明るみに出し罰する。そのためにアグラヴェインと二人の不貞の現場に入り王に突きだそうとした。だが、ランスロットの反撃を受け、アグラヴェインは死に俺は重傷を負った。他にも何人かの騎士が殺された」
ランスロットさんは、思っていたよりも遙かにヤバいやらかしをしていた。この状況で袋だたきに遭っていないのが不思議なくらいだ。
「その後、王はグィネヴィア様に火刑の処罰を下した。それが法による決まりだったからだ。王からすれば裏切られたとはいえ、愛した女性を処刑にしたいとは思わなかっただろう。だが、王が法を無視すれば、法は機能しなくなる。王も苦渋の決断だっただろう。王の裁定に異議を申し立てる騎士は多く居た。それでも揺るがせてはいけない事だった」
国の代表者が定めた法を無視すれば、他の国民達が法の存在意義を疑う事になる。国を治める王として、定められた法には従わなければならない。例え、それがアーサーさんの意に反する事だとしても。
「グィネヴィア様の処刑場では、ガレスとガへリスが抗議の意を伝えるために、非武装で処刑場にいた。そこにランスロットが襲撃してきた。処刑されるグィネヴィア様を助けるためだ。その際、近くにいたガレスとガへリスを殺した。甲冑を着ておらず、普段とは違う身なりだったがために、ランスロットはただの護衛だと判断し、障害と見做して殺した。そして、グィネヴィア様を救出した」
ヤバいやらかしどころか取り返しの付かない事をしていた。そうして感情に任せた行動をした事によって、それがどれだけ危ない事なのかを実感したと言っていたのだろう。感情に任せすぎな気もするけど、今のランスロットさんは自分を律していたようだし、ひとまずは信頼しておこう。
「この裏切りにより、王は王としての尊厳と信念を失っていった。いや、もしかしたら、一人の男として、人間としての矜持すらも失っていたのかもしれない。かつて、私が敬愛していた王の姿はなくなっていた。あの時、王としての王は死んだ。俺が殺してしまったんだ」
その後物理的にも殺してしまっているわけだけど、その前にアーサーさんの精神を殺してしまった。モードレッドさんも精神的に相当追い込まれてしまっていたのかもしれない。
「弟達を殺されたガウェインに強く押されて、王はランスロット征伐のために動き出した。あの時の王は気が向いている様子ではなかったが、もはや何でも良いと思っていたのかもしれない。顔から生気が抜けているようだった。他の騎士は、それをランスロットの裏切りに怒っているからだと捉えていたようだがな」
アグラヴェインさん、ガレスさん、ガへリスさんは、ガウェインさんの弟達だったらしい。立て続けに弟を殺されたガウェインさんの怒りは想像に難くない。
ガウェインさんからすれば、ランスロットさんには義が存在しないし、アーサーさんにもランスロットさんを征伐する理由がある。
もしかしたら、そういう事もあって、ランスロットさん征伐に動かざるを得なかったのかもしれない。
忠臣と妻の裏切り。生気を失ったような顔も、激しい怒りを内部に押し込めている状態と見れば、意気消沈しているとは思わないのかも。いや、もしかしたら、他の騎士達もランスロットさんヘの怒りで周りが見えていなかったのかな。
「そして、王国はアーサー王派とランスロット派に二分された。ランスロットが見出した騎士やランスロットが持ち合わせていた志に感化されていた騎士が付いていったという形だ。俺は王に摂政を仰せつかり、国を治める事になった。国を動かしている間、俺は王としての王を殺してしまった事を激しく後悔していた。そこで、俺は一つの答えを出した。俺が王となり、王には王としての責務から身を引くきっかけを作れば良いと。俺がアーサー王になれば良いのだと」
本当にモードレッドさんも追い詰められていたのかな。考え方がかなり極端な気がする。モードレッドさんの考えなら、アーサーさんが戻ってくるまで国を支えて、アーサーさんに王を退き隠居しても良いと進言するのでも良かったはず。
ここで謀反を起こせば、アーサーさんがモードレッドさんを殺さないといけなくなるという風にも考えられなかったらしい。アーサーさんが戻ってくるまでに、謀反が落ち着かなかったという事は、周りの人達もモードレッドさんを推していたのかもしれない。
結局、アーサーさんもモードレッドさんも周りに持ち上げられすぎて、周囲が見えなくなっていたのかな。
「俺の反乱を知り、ランスロットと和解した王は、すぐに王国へと引き返して来た。今度は俺が征伐される側というわけだ。王を王から退けるために、俺は戦うしかなかった。カムランにて最後の決戦となり、俺は王達と戦った。騎士達を多く殺し、王との一騎打ちになった。最後はさっきも言ったとおり、ロンゴミニアドに貫かれ、俺は王の頭を割った。王を王としての責務から解放するために」
ランスロットさんと和解していたなら、アーサーさんのランスロットさんに対する態度にも納得が出来る。怒りはなくても、色々な事にきっかけになっていたのだから、ランスロットさんに思うところがあってもおかしくなかったからだ。
そして、モードレッドさんのアーサーさんへの想いは、王としてのアーサーさんを敬愛し過ぎていたが故のものだという事も分かった。だからと言って、仕方ないと許して貰えるような事ではない。
やっている事は、モードレッドさんが怒りを覚えていたランスロットさんと同じようなものだから。
「死後、エリュシオンに着いた俺は、自分の行動が幼稚な考えによるものだったと気付いた。死んでから気付くとは、本当に馬鹿だったな。取り返しの付かない事をしてしまった。だから、王に謝罪しようと思ったが、エリュシオンに王はいなかった。だが、他の騎士達はいた。何度も罵倒され、糾弾された。これはランスロットも同じだったな。到底許されない事をしたんだ。俺は全てを受け入れ続け、結果和解するに至った。エリュシオンに長い間いたからな。そのくらいの時間はあったというわけだ」
私が一番疑問に思っていたところは、エリュシオンにいる長い時間の中で解決していた。いや、実際にはアーサーさんと和解している訳では無いから、完全な解決とは言えないのかもしれない。そこは今後のアーサーさんとモードレッドさん次第だ。
「ふぅん……存外つまらなぶっ!?」
アホがアホな事を言おうとしていたので、取り敢えずフェイスクローで黙らせる。手の隙間から見えるアスタロトの顔は笑顔だったので、ただのご褒美で終わった。
「これでも俺を使うか?」
「はい。モードレッドさんは戦うのが得意みたいなので、ランスロットさんと同じく素材集めのために色々な場所に派遣します。モンスターを倒して素材を持ち帰って下さい」
そう言うと、モードレッドさんは目を大きく見開いた。
「だが、俺は……」
「それは過去の事ですし、私には関係ないです。他の人達と和解しているのであれば、私がとやかく言う資格はないですよ。あっ! でも、アーサーさんには謝罪しておいてくださいね」
「あ、ああ……」
モードレッドさんは、まだ驚いていた。私が言った事は本心だ。ここで私が糾弾する理由がない。だって、私は当事者でもないし、その状況を実際に見ていた訳でも無い。当事者同士で済んでいるのなら、私から言えるのは、もう一人の当事者であるアーサーさんとの和解を促す事だけだ。
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