吸血少女ののんびり気ままなゲームライフ

月輪林檎

文字の大きさ
650 / 820
出会いを楽しむ吸血少女

新しいギルドエリア

しおりを挟む
 アカリにギルドエリアに関する情報を共有する。

「複数所持するメリットってあるの?」
「ん? どうだろう? ちょっと詳しく説明を見られるか試してみるね」

 確かに複数所持のメリットがよく分からないので、そこは調べるべきだ。ギルドエリアの複数所持に関するヘルプを探すとすぐに見つける事が出来た。

「あった。ギルドエリアを開放する事が可能になるって。他のプレイヤーも入る事が出来るみたい。行動制限とかは付けられるらしいけど」
「それってメリット?」

 アカリも怪訝な顔でそう言う。これまでの経験から、これがメリットとは思えないという事だ。私も同じ気持ちなので、それがよく分かった。

「考えようによってはメリットかもね。街を用意して、プレイヤー達からお金を巻き上げられるかも」
「商業都市?」
「それに当てはまるか分からないけど。最初から発展してるわけだし。プレイヤーが店を建てられるようにする訳でもないしね。露店とかをやろうとするなら、その分お金を取れば良いし」
「そっか……現状でもお金には困らないけど」

 アカリエの売上とかもあるから、ギルド内での資金という意味でもかなり裕福になっている。だから、お金を集める理由があまりないというのが現状でもあった。

「素材を買い取るって言っても、うちには派遣があるしね。まぁ、解放は抜きにしてもメリットはありそう。ここと同じように畑とかを作れるから、その分作物の収穫量とかが大幅に増える事になるし。こっちと違って家を沢山建てる必要もないから、資源エリアとして活用出来るかも」
「なるほど。それはメリットだね」

 資源は割といっぱいあるけど、最近は消費量も増えている。それだけ住人が増えているという事だし、アカリエの商品も増えているから良い事ではあると思うけど、出来ればもう少し資源の供給を増やしたい。それだけのためにギルドエリアを複数持ちする価値はある。

「解放するとしたら、解放するエリアを専用で作るかな」
「複数所持って、いくつまで出来るの?」
「最大で三らしいよ。そんなに必要かって思うけどね」

 最大で三つのギルドエリアを所有出来る。私は無限のギルドエリアを持っているから、そんな沢山必要かというとそうでもない。でも、資源エリアとかプレイヤー相手の商業エリアとして活用するのなら有りなのかな。

「取り敢えず、資源エリアだけは追加しておく?」
「私は賛成かな。生産職として、素材がいっぱいあるのは嬉しいしね」
「了解。じゃあ、早速作ろう」

 ギルドエリアのメニューを操作して、ギルドエリアを作り出す。神域の拡張というのが条件だから、こうしてギルドエリアのメニューからでも増やす事が出来るらしい。新たなギルドエリアを作りだし、メニューから鉱山などの資源が採れる土地を増やしていく。

「取り敢えず、こんな感じかな。アカリも確認してくれる?」
「うん」

 アカリもギルドエリアのメニューを操作して、私が作り出した新たなギルドエリアを確認する。

「うん。良いと思う。鉱山が増えているし、森もいっぱいだし。こっちも神界なの?」
「まぁ、当然私がいるからね。こっちでも畑作をするとして……ん?」

 そんな話をしている時に気付いた。床の下に力が走っている事を。そして、窓の外から金色の光が見えている事を。

「世界樹?」

 私とアカリは作業小屋から外に出て世界樹の方へと向かった。すると、世界樹の根が地中にどんどん潜っているのが分かった。

「え? 何が起きてるの?」
「貴様の世界が増えた。間違いないか?」

 いつの間にか隣にオーディンさんがいた。この質問は、ギルドエリアが増えた事の確認だろう。

「はい」
「その世界とこの世界を繋げようとしているのだ。世界樹とは世界を繋げ、世界を守る樹。世界が増えた事を感じ取り安定化させようとしているのだ。いずれは、世界樹を通じて世界の行き来が可能となるだろう」
「へぇ~、じゃあ、このままでも問題はないという事ですね?」
「ああ」

 それを聞いて一安心だ。取り敢えず、このまま世界樹は放置するとして、後は向こうの世界の確認をしに向かう。アカリは作業があるだろうから、ここの確認は私が行う事にした。
 転移ポータルから新しいギルドエリアに来ると、そこは大自然の中だった。かつては、向こうのギルドエリアもこんな感じだったなと思いながら、鉱山の位置などを確認していく。

「街を作る予定はないから問題はなし。鉱山近くには小屋と倉庫を建てるとして、向こう側に畑と果樹園を広げる。向こうの森は木材として利用するために残しておきながら林業をしていく形がいいかな。後は……漁業か。魚は出現するようにしておいたから、海は広くしておこう。うん。これで良し。こっちの畑の管理はどうしよう……」
「アヴァロンをこちらに移しなさい」

 唐突に横から声がして驚いた。そこにいたのはモルガンさんだ。唐突なのも当たり前だ。つい今し方転移してきたばかりのようだから。
 ここに来て、力の経路のデメリットを実感する事になった。それはモルガンさんに甘えたいという欲求が強くなっている事だった。母性を強く感じるようになるというのは、小さい頃に強く抱いていたお母さんとかに甘えたいという欲求の事らしい。
 この歳になると、大分収まっているものの力の経路のせいでそれくらいモルガンさんに甘えるのが魅力的に見えていた。ある意味ヤバい技術なのではと不安になる。

「どうしたの?」

 私がジッと見ていたからか、モルガンさんは私の頭を撫でながら心配していた。それが更に私の心を刺激してくる。

「いえ、何でもありません」

 鋼の意思で欲求を抑えつけて答える。このデメリットは、早く消したい。経路の力のコントロールが出来るスキルが欲しいな。

「えっと……アヴァロンをこっちに移すというのは?」
「向こうの農業も軌道に乗っているわ。こちらにアヴァロンを移せば、こっちでの管理人が出来て楽になるでしょう?」
「なるほど……でも、皆さんの意見も聞かないとですね」

 私がそう言うと、モルガンさんは、小さくため息をついた。

「はぁ……ここは貴方の世界なのよ? 貴方の自由にして良いの。私は住まわせて貰っている立場という事を覚えておきなさい」
「でも、それは私の世界の住人という事で、一緒に住んでいる以上意見は聞きたいです。皆が安心して住めて、皆が楽しく住める場所というのが私の理想ですから」
「……そうね。貴方はそういう子だったわ」

 モルガンさんが私の頭を撫でながらそう言う。そんな事をされると甘えたくなるからやめて欲しい。

「それならアヴァロンに行きましょう」
「はい」

 私とモルガンさんは、アヴァロンに向かって騎士の皆から話を聞いていく。すると、思っていたよりも皆が肯定的な意見を出してくれた。これはイズンさんやヴィヴィアンさんも同じだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

元公務員、辺境ギルドの受付になる 〜『受理』と『却下』スキルで無自覚に無双していたら、伝説の職員と勘違いされて俺の定時退勤が危うい件〜

☆ほしい
ファンタジー
市役所で働く安定志向の公務員、志摩恭平(しまきょうへい)は、ある日突然、勇者召喚に巻き込まれて異世界へ。 しかし、与えられたスキルは『受理』と『却下』という、戦闘には全く役立ちそうにない地味なものだった。 「使えない」と判断された恭平は、国から追放され、流れ着いた辺境の街で冒険者ギルドの受付職員という天職を見つける。 書類仕事と定時退勤。前世と変わらぬ平穏な日々が続くはずだった。 だが、彼のスキルはとんでもない隠れた効果を持っていた。 高難易度依頼の書類に『却下』の判を押せば依頼自体が消滅し、新米冒険者のパーティ登録を『受理』すれば一時的に能力が向上する。 本人は事務処理をしているだけのつもりが、いつしか「彼の受付を通った者は必ず成功する」「彼に睨まれたモンスターは消滅する」という噂が広まっていく。 その結果、静かだった辺境ギルドには腕利きの冒険者が集い始め、恭平の定時退勤は日々脅かされていくのだった。

名もなき民の戦国時代

のらしろ
ファンタジー
 徹夜で作った卒論を持って大学に向かう途中で、定番の異世界転生。  異世界特急便のトラックにはねられて戦国時代に飛ばされた。  しかも、よくある有名人の代わりや、戦国武将とは全く縁もゆかりもない庶民、しかも子供の姿で桑名傍の浜に打ち上げられる。  幸いなことに通りかかった修行僧の玄奘様に助けられて異世界生活が始まる。  でも、庶民、それも孤児の身分からの出発で、大学生までの生活で培った現代知識だけを持ってどこまで戦国の世でやっていけるか。  とにかく、主人公の孫空は生き残ることだけ考えて、周りを巻き込み無双していくお話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神様のせいで最強魔力持ちにされたけどコミュ障だから、森の奥で人外の弟子とひっそり暮らしたい

☆ほしい
ファンタジー
極度のコミュニケーション障害で、まともに人と話せない青年、相川静(あいかわ しずか)。 彼はある日、女神の手違いで異世界に転移させられてしまう。 お詫びとして与えられたのは、世界を滅ぼせるほどの規格外の魔力。 しかし、コミュ障のシズカにとって、そんな目立つ力はトラブルの元でしかない。 彼は人目を避けるように、魔物が住む広大な森の奥深くへと逃げ込んだ。 そこで出会ったのは、親を亡くした一匹の幼いドラゴン。 言葉が通じないはずのドラゴンになぜか懐かれ、なし崩し的に弟子(?)として面倒を見る羽目に。 シズカは強すぎる魔力で獲物を狩り、ドラゴンに食事を与え、魔法をジェスチャーで教える。人間相手には一言も話せないが、ドラゴン相手なら不思議と心が安らぐのだった。 これは、最強の力を持つコミュ障青年が、人間社会から完全に孤立し、人外の弟子とのんびり暮らそうと奮闘する物語。

NEOの風刺ジョーク集

夜美神威
SF
世の中のアレやコレを面白おかしく笑い飛ばせ! クスッと笑える世相を切る風刺ジョーク集 風刺ジョークにおいて ご気分が害される記事もあるかと思いますが その辺はあくまでジョークとして捉えて頂きたいです

処理中です...