先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい

月輪林檎

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領主

教育不足

 結婚後のとある日の夜。セレーネは、ミュゼルの部屋に侵入していた。特に用がある訳では無く、今日はミュゼルと過ごそうという気分だった事に加えて、ミュゼルを驚かそうという悪戯心からだった。
 すると、ミュゼルはベッドの上で写真帳を見ているところだった。セレーネは、ミュゼルの背後から飛びついて写真帳を覗きこむ。

「ミュ~ゼル! 何見てるの?」
「わぁ!? セ、セレーネちゃん……? えっと……この前の結婚式の写真だよ……」
「本当だ。皆ドレスが綺麗だったね。サイズ確認とかはしてたけど、まさか陛下があそこまで良いドレスを用意してくれるとは思わなかったよ」
「お、お父様も張り切っていたみたいだから……それぞれの両親と相談で決めたみたいだよ」
「そうなんだ。それにしても、写真は良いね。これまでは絵で残すから、拘束時間が長かったみたいだけど、撮影機で撮れば、一瞬でその時の姿をそのまま残せるわけだし。正直、そんなに重要かなって思ったけど、ミュゼル達の綺麗な姿が残せるのは嬉しいって思ったかな。執務室にも飾ってるし」

 セレーネは、当時の姿を残せるという点で、そんなに良いものなのかと考えていたが、フェリシア、ユイ、ミュゼルの花嫁衣装姿を残せるというところから、その気持ちを理解した。
 セレーネは、三人と一緒に撮った写真を写真立てに入れて、執務室の自分の机に飾っている。いつでも三人の綺麗な姿を見る事ができるので、仕事のやる気も上昇していた。
 ミュゼルは、結婚式にてメイに撮影機を渡して、四人の姿を撮って貰っていた。その写真をこうして写真帳にまとめて何度も見返していた。そのくらい気に入っていたのだ。
 セレーネは、ミュゼルに背中から抱きついた状態のまま一緒に写真帳を見ていく。
 そうして全ての写真を見終えたところで、ミュゼルはサイドテーブルに写真帳を置く。

「セ、セレーネちゃんは、何か用事があったの……?」
「ううん。ミュゼルと過ごそうと思って来ただけ。昨日はユイと一緒にいたし、一昨日はフェリシアと寝てたから」
「そ、そっか。じゃあ、セレーネちゃんの部屋に行こうか。すぐに寝られるように」
「ん? ミュゼルの部屋でも大丈夫だよ?」
「ううん。セレーネちゃんのお着替えとかあるから」

 そう言ってミュゼルはセレーネと手を繋いで対面にあるセレーネの部屋に入ろうとすると、ちょうどフェリシアとユイがセレーネの部屋に行こうとしているところだった。

「フェリシア、ユイ、どうしたの?」
「セレーネと寝ようかなと思って来たのよ。ユイも同じ事を考えていたみたいね」
「ええ。でも、ミュゼルと寝るなら、今日は遠慮しておくわよ?」
「う~ん……皆で寝ようか。ミュゼルも良い?」
「う、うん。私もその方が嬉しいかな……」

 三人ともセレーネを愛しているが、それと同じくらいに互いを好いているため、一緒に寝る事にも何も抵抗がなかった。
 四人で寝室に入ったところで、セレーネはミュゼルに抱きついて横になる。元々ミュゼルと寝る予定だったため、フェリシアとユイも文句はない。
 ユイはミュゼルの隣に寝て、フェリシアはセレーネの隣に寝る。

「セレーネは、結婚しても何も変わらないわね」

 フェリシアは、セレーネの頭を撫でながらそう言う。

「だって、元々結婚する予定だったし、変わるものがないもん。フェリシアは何か変わると思ってた?」
「そうね。もう少し大人な夜を過ごすと思っていたわ」

 フェリシアはそう言って、セレーネを後ろから抱きしめる。

「大人な? えっちな事?」
「そうね」

 セレーネとフェリシアの会話でミュゼルが顔を真っ赤にしていた。セレーネと血を吸いあう事やセレーネがぴったりと抱きついてくる事などが多くあるが、まだそういった経験がないミュゼルには刺激が強い会話だった。
 セレーネとフェリシアは、セレーネの求愛行動によって近しい事をしている事があったので特に気にした様子はない。

「そうは言うけれど、セレーネもフェリシアもどういう事をするのか知識にあるの?」

 この中で最年長であるユイは、当然そういう会話に動じる事はない。それどころか、二人はそういう知識がちゃんとあるのかという心配をしていた。

「えっと、揉む?」
「まぁ、そういうものもあるけれど……カノンは、そういう教育はしてないの?」
「う~ん……子供の出来る仕組みは授業でやったけど、どうすれば良いのかとかはないかな。でも、何となくは分かるもん」
「心配ね……」

 結婚後も添い寝やキスなどで止まっており、それ以上の事はやっていない。なので、ユイとしては他の二人がちゃんと出来るのかという心配が出て来ていた。

「ユイに知識があるのなら、ユイからやって貰うのはどうかしら? そうしたらセレーネもやりやすくなると思うのだけど。私も知識はある気がするけれど、ちゃんとしているかと聞かれたら自信が無いから」
「でも、普通は第一夫人のフェリシアからするべきよ。そこら辺の順序はしっかりとしておいた方が良いわ。後々に揉める……事にはならないだろうけど、気持ち的にね」

 フェリシアとユイの話し合いに、ミュゼルは完全にショートしていた。そんなミュゼルを見ながら、セレーネはとある解決方法を思い付いた。

「皆一緒だったら、問題ないんじゃない?」
『…………』

 セレーネの提案に、フェリシアとユイは顔を見合わせた。二人は目だけで会話をする。

(この子本気で言っているのよね?)
(勿論。セレーネの目を見れば分かるわ。全く冗談じゃなく、皆一緒なら楽しいと思っているわ)
(本当に四人でするの?)
(それが良いでしょうね。セレーネが安心するだろうから)

 ユイは諦めが付いたのか頷いて、セレーネを見た。

「そうね。皆一緒にしていきましょうか」
「やった。皆一緒だと安心だね、ミュゼル」
「あ、う、うん……そうだ……ね……?」

 ミュゼルにとって刺激の強い話だったが、王女という立場からそういった講義も受けている。そのためある程度知識にはあるが、複数人でという状態での知識が一切ないため、若干困惑していた。
 セレーネは全員で一緒という状態が嬉しいのか楽しげにしている。そんなセレーネを見て、フェリシアとユイは苦笑いしていた。

────────────────────

 セレーネ達がそんな会話をしている部屋の下。カノンとスピカの居室では、スピカとお茶を飲みながらカノンが何とも言えない表情をしていた。

「どうかしたの? セレーネ様?」

 カノンの様子がおかしい事に気付いたスピカが少し心配そうにしながら訊く。カノンの様子がおかしいという事から、スピカは即座にセレーネに結びつけていた。こういう事があるのは、基本的にセレーネが関係しているからだ。

「ああ、まぁ、そうだね」
「まさか! とうとうセレーネ様が大人の階段を……」
「いや、今日はそうじゃないみたいだけど……どうやら四人一緒にって感じみたい」
「え? ああ……まぁ、良いとは思うけど……セレーネ様にそういう教育はしていないの?」
「ある程度はしてあるけど、具体的な事は全部避けておいたから……下手に教えると、私にやってみてと言いそうだったのもあって……」
「ああ……セレーネ様ならあり得るかも……」

 スピカはセレーネの好奇心を思い出して、カノンの言うとおりだと納得した。同時にセレーネへの性教育の難しさを理解し、どうすれば良いのかを考えたが、どうやってもセレーネの興味津々の顔が思い浮かんでしまい、後はフェリシア達に任せるしかないと結論付けた。そのため、三人にちゃんとした性教育がされている事を願うばかりだった。
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