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捨てられた王女
幕間
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王の執務室にて。
サリドニア王国現国王アルバナム・トル・サリドニアは、大いに焦っていた。自分達が捨てた子供が、再びこの王都に戻ってきたからだ。
「マリーナリアの様子はどうだ?」
「はっ、今のところ何もしておりません。授業を受け、買い物に行き、友人達と語らっているだけでございます」
王の影であり腹心。隠密部隊の隊長カイト・ナイトウォーカーが、国王にそう報告した。マリーの今までの動向を監視していたのである。
しかし、マリーの家、つまり、カーリーの屋敷に入る事は叶わなかった。敷地に張ってある結界に邪魔されるのだ。カーリー自ら張った結界は、容易に突破できず、強引な手段に出るしかない。だが、それをしてしまえば、確実にカーリーに侵入を察知されてしまうため、外から確認するしかなかった。
「本当にそれだけか!? 何か情報を買っていることなどはなかったのか!?」
「はい。そのような事は全く。ただ、自宅の内部が見られないので、そちらでやられていると我々にもわかりません」
そのことを聞くと、国王は苦々しげに顔を歪める。
「ちっ、大賢者め。余計なことをしおって」
「マリー様には、何も野心は無いようですが、引き続き監視をするのですか?」
「当たり前だ! あれも王族の血を引いておるのだぞ! 私の王位を狙っているに決まっておる!」
国王は、マリーが王都に来た理由を、王位を狙って来たと思い込んでいた。国王からすると、王族の血を引いているものが、抱く野心は王位しかなかった。
「そもそも、貴様が遺体を確認しなかったのが、原因だぞ! 分かっておるのか!?」
「申し開きの言葉もございません」
この隠密部隊は、国王の護衛と諜報を両方担っている。マリーを森に置き去りにしたのもこのカイトだった。
「かしこまりました。引き続きマリー様の監視を続けます」
「ああ、なんとかして、マリーナリアを処分しなければ……」
国王は、少しの間考え込む。カイトが、マリーの監視任務に戻るため、執務室を後にしようとすると、王が引き留めた。
「待て! 思い付いたぞ! あの学院は、再来週に、野外演習をやるはずだ。そこで始末する。お前の手でやれば、私の仕業だとバレる可能性があるからな。引き寄せ餌を使え。森中の魔物を集めるのだ。そして、あれを呼び寄せろ」
「あれとは?」
「決まっているだろ!」
国王の怒声に、カイトは、嫌な予感がした。
「キマイラだ!」
キマイラとは、複数の動物が合体した姿をしている魔物だ。世界の各地に生息している。もちろん、サリドニアにも。
このキマイラを呼び寄せる方法は簡単だった。沢山の魔物の死体を用意すれば良い。キマイラは、魔物の死体を好んで食べる。その理由は、自身の強化だ。複数の動物が合わさっているキマイラは、他の生物を食べれば食べるほど強くなるという性質を持っている。特に魔物を食べるとより強化されるため、魔物の死体を食べるのだ。キマイラ、別名死体漁り。
「しかし、その場には、リリー様もいらっしゃいます! 危険過ぎかと!」
「カイト。多少の犠牲は仕方なかろう。ましてやリリーは、妾の子。最初から継承権も存在せん。死んでも何も困らん。リアの事は心配するな。私がなんとかする」
王妃であるリアディーニア・トル・サリドニアは、自らの子でなくとも、リリーを愛していた。確かにリリーは、側室の子だった。しかし、リリーの母は病によって、リリーを産んだ後、この世を去った。
そのため、リアが、リリーを育てていたのだ。この国では、側室の子が、王位を継ぐ事はほとんどない。正室との間に子が産まれなかった。あるいは、子供が全て亡くなった時にのみ王位を継ぐ権利が与えられる。
このことがあるため、国王は、リリーのことをさほど重要だと思っていない。必要であれば捨て駒にすらする。
「…………かしこまりました」
カイトは、少し迷いが生じていたが、了承の返事をして、今度こそ執務室を出た。
(王は、ご乱心なのか。マリー様だけでなく、リリー様まで殺すと)
カイトは、最初からマリーの処分に反対だった。国王に捨てるように命令されたとき何回も反論した。しかし、ことごとく却下されたのだ。国王に逆らい続ければ、自分の身も危険になるので、それ以上は反論できなかった。
(マリー様、リリー様、申し訳ありません)
カイトには、二人を犠牲にする選択肢しかなかった。カイトにも家族がいる。命令に従わなければ、家族にも危険が迫ってしまう。そのため、従うほかない。
カイトは、歯を食いしばり、手を握りしめる。そして、命令を遂行するために動き出した。
サリドニア王国現国王アルバナム・トル・サリドニアは、大いに焦っていた。自分達が捨てた子供が、再びこの王都に戻ってきたからだ。
「マリーナリアの様子はどうだ?」
「はっ、今のところ何もしておりません。授業を受け、買い物に行き、友人達と語らっているだけでございます」
王の影であり腹心。隠密部隊の隊長カイト・ナイトウォーカーが、国王にそう報告した。マリーの今までの動向を監視していたのである。
しかし、マリーの家、つまり、カーリーの屋敷に入る事は叶わなかった。敷地に張ってある結界に邪魔されるのだ。カーリー自ら張った結界は、容易に突破できず、強引な手段に出るしかない。だが、それをしてしまえば、確実にカーリーに侵入を察知されてしまうため、外から確認するしかなかった。
「本当にそれだけか!? 何か情報を買っていることなどはなかったのか!?」
「はい。そのような事は全く。ただ、自宅の内部が見られないので、そちらでやられていると我々にもわかりません」
そのことを聞くと、国王は苦々しげに顔を歪める。
「ちっ、大賢者め。余計なことをしおって」
「マリー様には、何も野心は無いようですが、引き続き監視をするのですか?」
「当たり前だ! あれも王族の血を引いておるのだぞ! 私の王位を狙っているに決まっておる!」
国王は、マリーが王都に来た理由を、王位を狙って来たと思い込んでいた。国王からすると、王族の血を引いているものが、抱く野心は王位しかなかった。
「そもそも、貴様が遺体を確認しなかったのが、原因だぞ! 分かっておるのか!?」
「申し開きの言葉もございません」
この隠密部隊は、国王の護衛と諜報を両方担っている。マリーを森に置き去りにしたのもこのカイトだった。
「かしこまりました。引き続きマリー様の監視を続けます」
「ああ、なんとかして、マリーナリアを処分しなければ……」
国王は、少しの間考え込む。カイトが、マリーの監視任務に戻るため、執務室を後にしようとすると、王が引き留めた。
「待て! 思い付いたぞ! あの学院は、再来週に、野外演習をやるはずだ。そこで始末する。お前の手でやれば、私の仕業だとバレる可能性があるからな。引き寄せ餌を使え。森中の魔物を集めるのだ。そして、あれを呼び寄せろ」
「あれとは?」
「決まっているだろ!」
国王の怒声に、カイトは、嫌な予感がした。
「キマイラだ!」
キマイラとは、複数の動物が合体した姿をしている魔物だ。世界の各地に生息している。もちろん、サリドニアにも。
このキマイラを呼び寄せる方法は簡単だった。沢山の魔物の死体を用意すれば良い。キマイラは、魔物の死体を好んで食べる。その理由は、自身の強化だ。複数の動物が合わさっているキマイラは、他の生物を食べれば食べるほど強くなるという性質を持っている。特に魔物を食べるとより強化されるため、魔物の死体を食べるのだ。キマイラ、別名死体漁り。
「しかし、その場には、リリー様もいらっしゃいます! 危険過ぎかと!」
「カイト。多少の犠牲は仕方なかろう。ましてやリリーは、妾の子。最初から継承権も存在せん。死んでも何も困らん。リアの事は心配するな。私がなんとかする」
王妃であるリアディーニア・トル・サリドニアは、自らの子でなくとも、リリーを愛していた。確かにリリーは、側室の子だった。しかし、リリーの母は病によって、リリーを産んだ後、この世を去った。
そのため、リアが、リリーを育てていたのだ。この国では、側室の子が、王位を継ぐ事はほとんどない。正室との間に子が産まれなかった。あるいは、子供が全て亡くなった時にのみ王位を継ぐ権利が与えられる。
このことがあるため、国王は、リリーのことをさほど重要だと思っていない。必要であれば捨て駒にすらする。
「…………かしこまりました」
カイトは、少し迷いが生じていたが、了承の返事をして、今度こそ執務室を出た。
(王は、ご乱心なのか。マリー様だけでなく、リリー様まで殺すと)
カイトは、最初からマリーの処分に反対だった。国王に捨てるように命令されたとき何回も反論した。しかし、ことごとく却下されたのだ。国王に逆らい続ければ、自分の身も危険になるので、それ以上は反論できなかった。
(マリー様、リリー様、申し訳ありません)
カイトには、二人を犠牲にする選択肢しかなかった。カイトにも家族がいる。命令に従わなければ、家族にも危険が迫ってしまう。そのため、従うほかない。
カイトは、歯を食いしばり、手を握りしめる。そして、命令を遂行するために動き出した。
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