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異世界転生
VSグリフォン
私が戦う意志を持った瞬間に、グリフォンが動き出す。地面に降りたまま羽を大きく動かす。それを見た私は、咄嗟に身体を投げて木の陰に隠れた。直後に、風の刃のようなものが飛んできて、木々に深い傷を残していく。
「やっぱり……グリフォンなら、そういう系の力は持ってるよね……」
ゲームでもよくやってくるので、予備動作から予測して行動した。風の刃は不可視だけど、威力的には木の幹の半ばまで傷を付けるくらいのものだ。まぁ、直撃したら、確実に私がちょんぱされるね。
『キエェェェェェェェ!!』
耳を劈くような咆哮だ。鳥の頭なのだから、もう少し耳心地の良い鳴き声にならないのかな。不快感が強い。
グリフォンは、再び低空で飛び木々の間を器用に抜けながら、私を中心に移動している。その目から、私を獲物としている事がよく分かる。しかも、飛ぶ速度も結構速い。
「その巨体で反則でしょ!?」
グリフォンの動きに合せてその場で回転していき、グリフォンに背後を取らせないようにする。そして、こっちに突っ込みながら振われる前脚での攻撃を、雷鎚トールを合わせる事で弾く。グリフォンは仰け反ったけど、その勢いを使って高く飛ぶので追撃を掛けられなかった。
「厄介だな……」
グリフォンは、高い位置のまま羽を思いっきり後ろに持っていく。風の刃の予備動作なので、再び木々を盾にして風の刃をやり過ごす。何度も風の刃が当たったいくつかの木が倒れていく。
「おらっ!」
私は雷鎚トールを金槌の大きさにして、木の陰から飛び出してからグリフォンに向かって投げつける。私は筋力ステータスが高いので、遠くまで投げる事が出来る。
勢いよく飛んでいった雷鎚トールを、グリフォンは身体を傾けるだけで避ける。
『キエッキエッキエッ』
気持ち悪い笑いをしているグリフォン。若干イラッとしながら、私は雷鎚トールに戻るように念じる。
『キエッ!?』
戻って来た雷鎚トールが、グリフォンの後頭部に命中して墜落する。さすがに、背後から勢いよく戻ってくるとは思っていなかったのか、全く避ける様子もなかった。後ろに目は付いてないらしい。鳥のような頭といっても、目が正面近くに付いているので、視野角は人間とほぼ同じくらいだと考えられる。
戻って来る雷鎚トールを迎えに行きながらキャッチして、元の大きさに戻す。そして、そのままグリフォンに向かって行き、その身体に叩き付ける。落下している身体に、横振りする事で命中させる事が出来た。
雷鎚トールのヘッドがグリフォンの身体にめり込み、腕にグリフォンの重みを感じながらも、全筋力で踏ん張って、そのまま吹っ飛ばす。
地面をバウンドしながら飛んでいくグリフォンに追撃を掛けるために駆け出そうとすると、左右から正面のグリフォンと同じ気配を感じた。
「まずっ……」
咄嗟に背後に跳ぶ。直後、さっきまで私がいた場所に左右から風の刃が飛んできた。
「やっぱり……」
左右から別のクリフォンが飛んできた。私が攻撃したグリフォンはフラフラとしながら立ち上がっている。二体のグリフォンは、ふらふらのグリフォンの隣に降り立つ。
『キャアアアアアアアア』
『キェエエエエエエエエ』
二体が鳴くと、ボロボロのグリフォンの身体を緑色の光が包み込む。嫌な予感がした私は、雷を纏わせた雷鎚トールを投げつけた。
グリフォン達は、ボロボロのグリフォンを前脚で掴んで空を飛ぶ。空振った雷鎚トールが近くの木に刺さって、雷鳴を撒き散らしながら木々をへし折った。
この間に、傷を負ったグリフォンは、自分で飛べるようになるまで回復していた。風だけで無く回復まで行う事が出来るグリフォンらしい。厄介な事この上ない。
しかも、今の状況は、その厄介なグリフォンが三体も相手になるという事だ。
「うわぁ……マジか……」
気のせいだと思うけど、グリフォンたちが笑っているようにも見える。その顔が腹立たしい。
私は雷鎚トールを手元に戻しながら、森の中を駆けていく。この状況で木々が少なくなっている場所で戦うのは得策じゃない。風の刃から身を隠せる場所がなくなるし、最低限グリフォン達の進路を制限させないと、こちらが優位に立てない。
私の移動に合わせて、グリフォン達も低空飛行で木々を抜けながら追ってくる。完全に私を獲物として見ているという事だ。
(羽の分通れる場所が限られているはずだけど、ルート取りが上手い……知能の高いモンスターって事かな。やばっ!)
先回りして斜め前方に現れたグリフォンが風の刃の予備動作をしたのが見えて、即座にスライディングをして姿勢を低くする。私の頭上を風の刃が飛んでいった。その他に通っていった風の刃が掠ったみたいで、胸や鼻先、太腿などが軽く切られた。動きに支障はないけど、服が切られてしまった。
すぐに体勢を戻して、もう一度駆け出す。
「人の服を! 貰い物なんだけど!」
グリフォンにそんな事を言っても仕方ないけど、怒りはぶちまけないと溜まりすぎたら、誰かに八つ当たりしちゃうかもだしね。モンスター相手の苛つきは、ちゃんとモンスターにぶつけよう。
三体のグリフォンは、私の背後、左右を抑えている。それが分かれば、対処のしようはある。背後のグリフォンと軸を合せる。
そして、急ブレーキを掛けて背後に向かって跳び、追ってきたグリフォンの顔面に雷鎚トールを叩き付けようとした瞬間、右から火の球が飛んできた。
(は? いや、止まるな!)
私は歯を食いしばって火の球を受けながら、雷鎚トールに雷を纏わせる。そして、そのまま雷鎚トールをグリフォンに叩き付けた。打撃に雷の爆発力が加わってグリフォンの頭が弾け飛ぶ。同時に私の右腕から右肩、右首、右頬、右耳、髪が焼かれる。
「っ!」
【痛覚耐性】と【苦痛耐性】のおかげで泣き叫ぶ事はないけど、痛いという事には変わりなかった。耐性があっても痛み感じる程の傷という事だ。それに耐久が高くなかったら、今ので死んでいてもおかしくなかったかもしれない。
『ヒナのレベルが上昇しました。10SPを獲得』
『【気配察知】のレベルが上昇しました』
『【頑強】のレベルが上昇しました』
『スキル【火耐性】を獲得』
自分のレベルが上昇したし、スキルのレベルが上昇した。後は【火耐性】を獲得した。それだけの火傷と考えよう。
痛みを抱えたままグリフォンの死体をインベントリに回収して駆け出す。回収したのは、死体を生きているグリフォンと見間違いためにする事が目的だ。森の中を駆け回っている時に見間違えで意識を削がれたら、確実に死ぬ。まぁ、【不死】で死ぬ事はないのだけど、それでもこの状況で死んでも良いやとは思えない。
(右の視界が歪む……耳も聞こえない……腕も力が入らない。右側が使い物にならない。これだと、右は【気配察知】で動きを読むしかない。てか、風だけと思わせてた? それなら、風と火で終わりと考えない方が良いか……)
遠距離攻撃が風だけだという思い込みが、今の怪我の原因なので、様々な事を考えておく必要がある。全体的な相手の動きに集中しておこう。
グリフォンは、仲間をやられた事で怒り狂っているようで、風の刃を連続で飛ばしてくる。私は乱雑に動いて木々を盾にしつつ、抜けてくる風の刃を雷鎚トールで打ち消す。
「やっぱり……」
不可視と思われた風の刃は、集中して見るとほんの少しだけ空間に揺らぎのようなものが見える。その揺らぎの形と向き、速さを覚えて、それに合せて雷鎚トールを振るって打ち消す事が出来る。つまり、やろうと思えば、風の刃の密度が薄い箇所を見つけて、打ち消しながら進めば接近出来るという事だ。
『【見切り】のレベルが上昇しました』
【見切り】のレベルが上がっても、まだちょっと見づらい。でも、打ち消しの問題はなさそうだ。
私に打ち消されていても、グリフォンは、攻撃を止めない。通用しないのは今だけという判断だと思う。そして、それは正しい。全てを覚えて、何度も合わせるのは難しい。それに、こっちにも体力というものがある。ただでさえ、大火傷を負っているのに、そんな長く戦えるとは思えない。
「逃げるだけじゃ駄目か」
じり貧になるのなら、こっちから攻勢に出るしかない。幸い視界は少しずつ戻って来ている。目の方はあまり火傷が広がってないので、再生するのが早かったみたい。ただ聴力は戻っていない。音による判断は出来ないけど、今は気にしない。
大火傷を負っている右腕が使えない状態なので、左腕で振うしかない。その分を補うために常に雷を纏わせる。左腕にも雷を纏わせている事による火傷が軽く伸びて来るけど、それも気にしない。こんな火傷は右側と比べたら、大したことない。
私は風の刃を放っているグリフォンに向かって駆け出す。密度が薄いところを狙って、雷鎚トールで打ち消しながら進んで行く。そこにもう一体のグリフォンが火の球を放った。風の刃が、火を纏って飛んでくる。これは逆に有り難い。火を纏って可視化された今なら、集中しなくても避けられる。
最小限の移動だけで避けて、グリフォンに接近する。身体に細かい傷や火傷が付く事は構わない。それくらいでは問題は無い。
『スキル【風耐性】【斬撃耐性】を獲得』
『【火耐性】のレベルが上昇しました』
風の刃を掠めるようにして進んでいたからか、風と斬撃に対する耐性スキルを手に入れた。それに炎が纏っているから【火耐性】も上がる。それで火傷とかがしなくなるのなら嬉しいけど、そんな事はない。向こうの火力は相当高い。
私が最低限しか避けないのを見て、狙っていたグリフォンが空を飛ぶ。そして、もう一体のグリフォンが低空を高速で移動して、感覚の鈍い右側から突っ込んで来た。
実はそれが狙いだった。一体を狙えば、仲間意識の強いグリフォンはフォローに入ってくる。そして、その際は私の弱点になっている右側から来るであろう事は予測出来た。
「くらえっての!!」
身体を回して、グリフォンの身体を下からかち上げるように振り、グリフォンの顎から上を消し飛ばした。
『ヒナのレベルが上昇しました。10SPを獲得』
そのまま死体を回収して、空にいるグリフォンを見る。また一体の仲間を失ったからか、怒りの咆哮と共に、上から火の球を次々に降らせてくる。その光景は、私に向かって降り注いで来る流星群のようだった。周囲にある木々は燃えて折れてしまっているので、命中しそうなものは、雷鎚トールで打ち消していた。その余波で火傷が広がる。
『スキル【火耐性】が上昇しました』
【火耐性】のレベルが上昇しても、炎で火傷を負っていく。火力が凄まじい。延焼して森が炎に包まれている。周囲に逃げ場が消え去っていた。
そうして私を牽制したグリフォンは、現在の高度よりも高く飛び上がった。そして、羽を思いっきり後ろに引いている。それは風の刃の予備動作だった。これまでよりもかなり長い溜めだ。
「あの距離は……いや、自分のステータスを信じる!」
金槌の大きさにした雷槌トールにありったけの雷を纏わせる。私の身体に雷による火傷が更に広がっていく。
『【雷耐性】のレベルが上昇しました』
『【火耐性】のレベルが上昇しました』
『【雷耐性】のレベルが上昇しました』
『【頑強】のレベルが上昇しました』
『【高速再生】のレベルが上昇しました』
雷を纏った雷鎚トールを思いっきりぶん投げた。本気の本気で投げた。地上から雷が上がっていき、空からは特大の風の刃が放たれる。二つは拮抗する事なく、雷が刃を切り裂いてグリフォンの身体を貫いていった。
でも、グリフォンの風の刃も散り散りになって、地上を削り取る。その中には私がいるところもあった。周囲の地面が抉れ、木々が吹き飛んでいく。
雷鎚トールを引き戻そうとしても間に合う訳も無く、風の刃の直撃を受けた。身体に深い切り傷を負い、腕と脚がどこかに飛んでいくのが歪んだ視界から見えた。左の視界が失われ、聴覚はどちらも駄目になっている。口の中に血の味がしない。まるで味覚がないかのように。
『ヒナのレベルが上昇しました。10SPを獲得』
『スキル【投擲】【雷魔法】を獲得』
『【頑強】のレベルが上昇しました』
『【頑強】のレベルが上昇しました』
『【頑強】のレベルが上昇しました』
『【見切り】のレベルが上昇しました』
『【風耐性】のレベルが上昇しました』
『【風耐性】のレベルが上昇しました』
『【斬撃耐性】のレベルが上昇しました』
『【斬撃耐性】のレベルが上昇しました』
『【高速再生】のレベルが上昇しました』
『【斬撃耐性】の
レベルアップ通知とスキル獲得通知、スキルレベルアップ通知が流れていく。そんな中で、私の意識は途絶えた。
「やっぱり……グリフォンなら、そういう系の力は持ってるよね……」
ゲームでもよくやってくるので、予備動作から予測して行動した。風の刃は不可視だけど、威力的には木の幹の半ばまで傷を付けるくらいのものだ。まぁ、直撃したら、確実に私がちょんぱされるね。
『キエェェェェェェェ!!』
耳を劈くような咆哮だ。鳥の頭なのだから、もう少し耳心地の良い鳴き声にならないのかな。不快感が強い。
グリフォンは、再び低空で飛び木々の間を器用に抜けながら、私を中心に移動している。その目から、私を獲物としている事がよく分かる。しかも、飛ぶ速度も結構速い。
「その巨体で反則でしょ!?」
グリフォンの動きに合せてその場で回転していき、グリフォンに背後を取らせないようにする。そして、こっちに突っ込みながら振われる前脚での攻撃を、雷鎚トールを合わせる事で弾く。グリフォンは仰け反ったけど、その勢いを使って高く飛ぶので追撃を掛けられなかった。
「厄介だな……」
グリフォンは、高い位置のまま羽を思いっきり後ろに持っていく。風の刃の予備動作なので、再び木々を盾にして風の刃をやり過ごす。何度も風の刃が当たったいくつかの木が倒れていく。
「おらっ!」
私は雷鎚トールを金槌の大きさにして、木の陰から飛び出してからグリフォンに向かって投げつける。私は筋力ステータスが高いので、遠くまで投げる事が出来る。
勢いよく飛んでいった雷鎚トールを、グリフォンは身体を傾けるだけで避ける。
『キエッキエッキエッ』
気持ち悪い笑いをしているグリフォン。若干イラッとしながら、私は雷鎚トールに戻るように念じる。
『キエッ!?』
戻って来た雷鎚トールが、グリフォンの後頭部に命中して墜落する。さすがに、背後から勢いよく戻ってくるとは思っていなかったのか、全く避ける様子もなかった。後ろに目は付いてないらしい。鳥のような頭といっても、目が正面近くに付いているので、視野角は人間とほぼ同じくらいだと考えられる。
戻って来る雷鎚トールを迎えに行きながらキャッチして、元の大きさに戻す。そして、そのままグリフォンに向かって行き、その身体に叩き付ける。落下している身体に、横振りする事で命中させる事が出来た。
雷鎚トールのヘッドがグリフォンの身体にめり込み、腕にグリフォンの重みを感じながらも、全筋力で踏ん張って、そのまま吹っ飛ばす。
地面をバウンドしながら飛んでいくグリフォンに追撃を掛けるために駆け出そうとすると、左右から正面のグリフォンと同じ気配を感じた。
「まずっ……」
咄嗟に背後に跳ぶ。直後、さっきまで私がいた場所に左右から風の刃が飛んできた。
「やっぱり……」
左右から別のクリフォンが飛んできた。私が攻撃したグリフォンはフラフラとしながら立ち上がっている。二体のグリフォンは、ふらふらのグリフォンの隣に降り立つ。
『キャアアアアアアアア』
『キェエエエエエエエエ』
二体が鳴くと、ボロボロのグリフォンの身体を緑色の光が包み込む。嫌な予感がした私は、雷を纏わせた雷鎚トールを投げつけた。
グリフォン達は、ボロボロのグリフォンを前脚で掴んで空を飛ぶ。空振った雷鎚トールが近くの木に刺さって、雷鳴を撒き散らしながら木々をへし折った。
この間に、傷を負ったグリフォンは、自分で飛べるようになるまで回復していた。風だけで無く回復まで行う事が出来るグリフォンらしい。厄介な事この上ない。
しかも、今の状況は、その厄介なグリフォンが三体も相手になるという事だ。
「うわぁ……マジか……」
気のせいだと思うけど、グリフォンたちが笑っているようにも見える。その顔が腹立たしい。
私は雷鎚トールを手元に戻しながら、森の中を駆けていく。この状況で木々が少なくなっている場所で戦うのは得策じゃない。風の刃から身を隠せる場所がなくなるし、最低限グリフォン達の進路を制限させないと、こちらが優位に立てない。
私の移動に合わせて、グリフォン達も低空飛行で木々を抜けながら追ってくる。完全に私を獲物として見ているという事だ。
(羽の分通れる場所が限られているはずだけど、ルート取りが上手い……知能の高いモンスターって事かな。やばっ!)
先回りして斜め前方に現れたグリフォンが風の刃の予備動作をしたのが見えて、即座にスライディングをして姿勢を低くする。私の頭上を風の刃が飛んでいった。その他に通っていった風の刃が掠ったみたいで、胸や鼻先、太腿などが軽く切られた。動きに支障はないけど、服が切られてしまった。
すぐに体勢を戻して、もう一度駆け出す。
「人の服を! 貰い物なんだけど!」
グリフォンにそんな事を言っても仕方ないけど、怒りはぶちまけないと溜まりすぎたら、誰かに八つ当たりしちゃうかもだしね。モンスター相手の苛つきは、ちゃんとモンスターにぶつけよう。
三体のグリフォンは、私の背後、左右を抑えている。それが分かれば、対処のしようはある。背後のグリフォンと軸を合せる。
そして、急ブレーキを掛けて背後に向かって跳び、追ってきたグリフォンの顔面に雷鎚トールを叩き付けようとした瞬間、右から火の球が飛んできた。
(は? いや、止まるな!)
私は歯を食いしばって火の球を受けながら、雷鎚トールに雷を纏わせる。そして、そのまま雷鎚トールをグリフォンに叩き付けた。打撃に雷の爆発力が加わってグリフォンの頭が弾け飛ぶ。同時に私の右腕から右肩、右首、右頬、右耳、髪が焼かれる。
「っ!」
【痛覚耐性】と【苦痛耐性】のおかげで泣き叫ぶ事はないけど、痛いという事には変わりなかった。耐性があっても痛み感じる程の傷という事だ。それに耐久が高くなかったら、今ので死んでいてもおかしくなかったかもしれない。
『ヒナのレベルが上昇しました。10SPを獲得』
『【気配察知】のレベルが上昇しました』
『【頑強】のレベルが上昇しました』
『スキル【火耐性】を獲得』
自分のレベルが上昇したし、スキルのレベルが上昇した。後は【火耐性】を獲得した。それだけの火傷と考えよう。
痛みを抱えたままグリフォンの死体をインベントリに回収して駆け出す。回収したのは、死体を生きているグリフォンと見間違いためにする事が目的だ。森の中を駆け回っている時に見間違えで意識を削がれたら、確実に死ぬ。まぁ、【不死】で死ぬ事はないのだけど、それでもこの状況で死んでも良いやとは思えない。
(右の視界が歪む……耳も聞こえない……腕も力が入らない。右側が使い物にならない。これだと、右は【気配察知】で動きを読むしかない。てか、風だけと思わせてた? それなら、風と火で終わりと考えない方が良いか……)
遠距離攻撃が風だけだという思い込みが、今の怪我の原因なので、様々な事を考えておく必要がある。全体的な相手の動きに集中しておこう。
グリフォンは、仲間をやられた事で怒り狂っているようで、風の刃を連続で飛ばしてくる。私は乱雑に動いて木々を盾にしつつ、抜けてくる風の刃を雷鎚トールで打ち消す。
「やっぱり……」
不可視と思われた風の刃は、集中して見るとほんの少しだけ空間に揺らぎのようなものが見える。その揺らぎの形と向き、速さを覚えて、それに合せて雷鎚トールを振るって打ち消す事が出来る。つまり、やろうと思えば、風の刃の密度が薄い箇所を見つけて、打ち消しながら進めば接近出来るという事だ。
『【見切り】のレベルが上昇しました』
【見切り】のレベルが上がっても、まだちょっと見づらい。でも、打ち消しの問題はなさそうだ。
私に打ち消されていても、グリフォンは、攻撃を止めない。通用しないのは今だけという判断だと思う。そして、それは正しい。全てを覚えて、何度も合わせるのは難しい。それに、こっちにも体力というものがある。ただでさえ、大火傷を負っているのに、そんな長く戦えるとは思えない。
「逃げるだけじゃ駄目か」
じり貧になるのなら、こっちから攻勢に出るしかない。幸い視界は少しずつ戻って来ている。目の方はあまり火傷が広がってないので、再生するのが早かったみたい。ただ聴力は戻っていない。音による判断は出来ないけど、今は気にしない。
大火傷を負っている右腕が使えない状態なので、左腕で振うしかない。その分を補うために常に雷を纏わせる。左腕にも雷を纏わせている事による火傷が軽く伸びて来るけど、それも気にしない。こんな火傷は右側と比べたら、大したことない。
私は風の刃を放っているグリフォンに向かって駆け出す。密度が薄いところを狙って、雷鎚トールで打ち消しながら進んで行く。そこにもう一体のグリフォンが火の球を放った。風の刃が、火を纏って飛んでくる。これは逆に有り難い。火を纏って可視化された今なら、集中しなくても避けられる。
最小限の移動だけで避けて、グリフォンに接近する。身体に細かい傷や火傷が付く事は構わない。それくらいでは問題は無い。
『スキル【風耐性】【斬撃耐性】を獲得』
『【火耐性】のレベルが上昇しました』
風の刃を掠めるようにして進んでいたからか、風と斬撃に対する耐性スキルを手に入れた。それに炎が纏っているから【火耐性】も上がる。それで火傷とかがしなくなるのなら嬉しいけど、そんな事はない。向こうの火力は相当高い。
私が最低限しか避けないのを見て、狙っていたグリフォンが空を飛ぶ。そして、もう一体のグリフォンが低空を高速で移動して、感覚の鈍い右側から突っ込んで来た。
実はそれが狙いだった。一体を狙えば、仲間意識の強いグリフォンはフォローに入ってくる。そして、その際は私の弱点になっている右側から来るであろう事は予測出来た。
「くらえっての!!」
身体を回して、グリフォンの身体を下からかち上げるように振り、グリフォンの顎から上を消し飛ばした。
『ヒナのレベルが上昇しました。10SPを獲得』
そのまま死体を回収して、空にいるグリフォンを見る。また一体の仲間を失ったからか、怒りの咆哮と共に、上から火の球を次々に降らせてくる。その光景は、私に向かって降り注いで来る流星群のようだった。周囲にある木々は燃えて折れてしまっているので、命中しそうなものは、雷鎚トールで打ち消していた。その余波で火傷が広がる。
『スキル【火耐性】が上昇しました』
【火耐性】のレベルが上昇しても、炎で火傷を負っていく。火力が凄まじい。延焼して森が炎に包まれている。周囲に逃げ場が消え去っていた。
そうして私を牽制したグリフォンは、現在の高度よりも高く飛び上がった。そして、羽を思いっきり後ろに引いている。それは風の刃の予備動作だった。これまでよりもかなり長い溜めだ。
「あの距離は……いや、自分のステータスを信じる!」
金槌の大きさにした雷槌トールにありったけの雷を纏わせる。私の身体に雷による火傷が更に広がっていく。
『【雷耐性】のレベルが上昇しました』
『【火耐性】のレベルが上昇しました』
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雷を纏った雷鎚トールを思いっきりぶん投げた。本気の本気で投げた。地上から雷が上がっていき、空からは特大の風の刃が放たれる。二つは拮抗する事なく、雷が刃を切り裂いてグリフォンの身体を貫いていった。
でも、グリフォンの風の刃も散り散りになって、地上を削り取る。その中には私がいるところもあった。周囲の地面が抉れ、木々が吹き飛んでいく。
雷鎚トールを引き戻そうとしても間に合う訳も無く、風の刃の直撃を受けた。身体に深い切り傷を負い、腕と脚がどこかに飛んでいくのが歪んだ視界から見えた。左の視界が失われ、聴覚はどちらも駄目になっている。口の中に血の味がしない。まるで味覚がないかのように。
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凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。