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お願いルパン
しおりを挟むお願いルパン
第一話
時は1980年✖️✖️県狩尾市に住む十六歳の有瀬祐也は幼い頃に母を亡くし父と祖父母に育てられた一人っ子である。祐也は家計を心配し中学を出た後すぐ働きに出て近所にある従業員二百人ほどの門気建設という大企業の下請け会社に入社し働き始める。かわいい顔立ちの祐也は女子事務員達のアイドル的な存在だ。現場作業に出る前に仕事全般を覚えさせたい社長の意向で事務所で手伝いをしてる時など、祐也が父子家庭という事もあり、お弁当は女子事務員が作ってくれる事もあった。そのうちの一人が蔵利すずという清楚な感じがする女の子だ。その日も蔵利が作ってくれた弁当を恥ずかしい気持ちもありながら食べている祐也。まるで天国のようだが、そんな日は長くは続かなかった。ついにビル工事現場にでる事になったのだ。高さは三十メートルほどでパイプの手すりはあるが極度の高所恐怖症を自覚し始める。
ある時など先輩から生コンを細部まで入れる為のバイブレーターを持ってくるよう命じられたが、パイプの手すりにかけてあるバイブレーターの場所まで死ぬ思いをして行き四つん這いで持って帰って来た。
すると先輩はお前戌年生まれかと笑った。
慣れた人など手すりがない場所にも材料を運ぶ。他の会社の鳶という職業の人達だ。若い祐也は鳶達からもよくからかわれた。おい若いの、まだ母ちゃんのお乳が欲しいんじゃないのかと言われ皆が笑うが、冗談だと分かっていても父子家庭の祐也は悲しい気持ちになった。
そんな苦労を現場で続ける祐也に転機が訪れる。会社のPRの為、その頃出始めたビデオで作業風景を撮影するというのだが、その助手に祐也が選ばれる。一緒に仕事をすることになった主任の銭形先輩からこれは高所恐怖症の祐也を現場から外し違う部署に入れる門気社長の計らいだと教えられ目を潤ませる祐也。そのビデオ撮影機と編集のやり方を教えに富士裕子という若い女性が門気建設にやってきた。その美しさに見とれる祐也。しばらく共に仕事をする事になる祐也と銭形先輩と裕子は最初は有瀬くんと呼んでいたが、ルパンくんと呼び始め、その内ルパンと呼び捨てになり、銭形先輩はというと、当初さんづけで呼んでいたが最後はとっつぁんになった。
富士さん、ルパンと呼び合うのふたりに事務員の蔵利が富士さんは怪しいと祐也に告げる。何が怪しいのか問うと私の机の引き出しからマジックがなくなっていて、その直前に富士さんが、誰もいない事務室から出てきたというのだ。よく編集の時マジックでボードにシーン名を書いてから撮影していたから、借りたのかなと思う祐也だが、黙って持って行くのはおかしいと思える。
次の日祐也は思い切って富士裕子にマジックの件を聞いてみた。富士は不思議そうに、変ね!私はマジックを幾つも持ってるから人のは借りないわよと答えたので謎は謎ままとなった。
日に日にビデオ撮影と編集の仕方を覚えていく祐也と銭形先輩だか、ついに富士裕子と別れの日がやってくる。ほんの二週間の間だか、祐也は楽しかった。何だか泣けてきそうだか、銭形先輩を見ると、そんな気持ちも薄らいだ。ビデオ編集部に見送られている富士裕子の手を取って泣きながら別れを惜しむ銭形先輩に笑顔で礼を言う富士裕子。銭形先輩は覚えたてのビデオ撮影機を持ちボードに富士さん、貴女を忘れないと書いて撮影を始める。その片方の手にはマジックが握られており、蔵利がそっと祐也に言った。あのマジック蔵利と書いて貼ってるから私のだと。銭形先輩に恐る恐る、その事を言うと、生真面目な銭形先輩は蔵利に歩み寄り真顔で言った。蔵利さん、私はあなたの大事なマジックを借りて忘れていました、ごめんなさい。
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