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第14話 義堂寺強襲
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学校から帰宅し小春とくつろいでいた千秋のスマートフォンが着信を知らせる。ディスプレイに表示されているのは朱音の名前で少々面倒そうに通話をタップした。
「あのさちーち・・・付き合ってくんない?」
「お断りよ。前にも言ったけれど、何故アナタと交際しなければならないの? それにそういう大事な話を面と向かって言えない人はアウトオブ眼中よ」
「ふっるい言葉使うなちーちは。てか違うんだよ。交際とかじゃなくて過激派狩りの誘いさ」
「なら最初からそう言いなさいよ。で、どこに敵がいるの?」
「義堂寺は知ってるだろ? 界同世薙の話では、そこに過激派が入り浸っているらしい」
我関せずな生徒会長が情報を提供してくれたのは謎だが、敵の居場所を知ったとなれば攻撃するしかない。
「決行はいつ?」
「今夜にでも出ようと思う。勿論ちーち達に合わせるけど」
「今夜でいいわよ。義堂寺なら・・・棚山よね?麓で合流しましょう」
「うい。じゃあ夜の十一時頃にな。あと神木さんも来るから」
「分かったわ」
通話を終え、千秋はスマートフォンを充電器に接続する。こういう地味な下準備はしておいて損は無い。
「千秋ちゃん、でかけるの?」
「急な話なのだけれど今夜出撃することになったわ」
「敵が出たんだね?」
「ええ。小春も来てくれるかしら?」
「勿論。千秋ちゃん達の手伝いをするって決めてるからね」
フェイバーブラッドの力を借りればそう簡単には負けはしないだろう。それに小春がいてくれた方が千秋のやる気も増し、理屈を超えて戦闘力が向上するのだ。
「なら少し仮眠を取っておいた方がいいわ。学校での疲れを残したまま戦地に行くのは自殺行為になるから」
吸血姫は血を飲めば体力が回復するが人間の小春はそうもいかない。前に出て戦うのは役割ではないとはいえ、逃走する時などには体力が必要になる。
「だね。じゃあ寝ておくよ」
千秋の助言に従い、小春は与えられたばかりの自室に戻って布団に入ったのだが・・・・・・
「・・・千秋ちゃん、寝ずらいんだけど・・・?」
すぐ隣に千秋が横になって小春の顔を見つめているのだ。そりゃ寝ずらいだろう。
「気にしないでちょうだい。私は寝ている小春を守る目的でここにいるのだから」
「それはありがたいんだけど・・・さすがに狭いかな」
しかも一人用の布団の中に二人で入っていた。守る目的ならわざわざ一緒になって寝る必要はあるのか。
「それにね、小春の国宝級の寝顔を見ておきたいの。今日死ぬかもしれないし、後悔のないようにしておきたいじゃない?」
「そんな悲しい事言わないでよ」
「でもあり得ることよ。ひとたび戦場に出れば死はつきまとうもの。これまでは運よく生き残れたけど、次も上手くいくとは限らない」
「そっか・・・そうだよね・・・・・・」
脳裏で金城や柳の死がフラッシュバックする。強者感のあった彼女達でさえ惨い最期を迎え、戦いに負けるということは尊厳も無く息絶えるということだ。千秋や朱音が同じような末路を今日迎えるかもしれず、小春だって戦場に身を置く以上は他人事ではない。
「千秋ちゃんは今まで戦ってきて怖くなかったの?」
「当然恐怖はあるわよ。でも戦わなかったら一方的に殺されるだけだし、世界が悪い方向へと変わってしまう」
「確かにそれは嫌だね」
「それにね、私には新しい戦う理由ができたもの、もう何も恐れはしない」
「新しい理由?」
小春の問いに千秋がほほ笑みながら、
「小春を守る、それが今の私にとってとても大切な理由になったの」
と優しい声色で答えた。最初に会った時、人間が好きというわけでないと言っていたあの千秋が小春という人間を目の前にしてである。
「最初は共存派の協力者となり得る人だから守ろうとしていた・・・けど、守るという意味合いがあの時とでは違う。私の個人的な感情があってのことよ」
始めは美広に言われたからという単純な理由であった。しかし千秋の中で小春の存在が大きくなるにつれ、自分の命よりも優先したい相手となっている。
「フェイバーブラッド持ちだからってわけじゃない。赤時小春という存在そのものを私は・・・好きになったの。だから失いたくない、絶対に守りたいとそう思えた」
「どうして私なんかを?」
「私にもどうしてかは分からない。でも小春は特別なのよ。他の誰にも感じなかった感情をあなたに抱いているの。こんなの迷惑かもしれないけど・・・・・・」
勢いのあまり心情を吐露した千秋だが少し冷静な思考が戻ってきて恥ずかしくなってきた。さっき朱音に対して大切な話を面と向かってしない者はダメだなどと言ったが、これは赤裸々になり過ぎではないだろうかと。
「迷惑なんてことは全然ないよ。むしろ嬉しい」
「本当に!?」
「うん。私もね、千秋ちゃんとずっと一緒にいたいって思えるんだ。不思議だよね・・・まだ出会って時間は経っていないはずなのに」
「想いは時間を超えるわ。そしてこれから二人の時間を積み重ねていけばいい」
千秋は心底安堵していた。何故なら気味が悪いと避けられることもなく真正面から小春に自分を受け入れてもらえたからだ。それに小春も千秋を特別視しているようで、千秋の独占欲も満たされていく。
「だから生き残らないとね。小春との明日を紡ぐだめに」
「なにそれカッコイイ」
「真剣に思ったのよ」
ぷっと小さく笑う小春が愛おしい。
千秋は手を伸ばして柔らかな頬に置く。温かく、弾力のある感触が心地よい。
「おやすみ、千秋ちゃん」
「おやすみ、小春」
まるで赤子のようにあやされて小春は眠気に襲われる。今はただ全てを忘れて眠りに就くのだった。
午後十一時という時間である。こんな深夜となればさすがに人影は少なくなり、歩道を歩いている人種は主に二つに分けられる。すなわち真正のヤバいヤツと、死んだ魚の目をしながら歩くサラリーマンやOLだ。
「よっ、待ってたぞ」
棚山の麓で朱音が手を振りながら千秋と小春を出迎えた。
この山は街の中心部から程近い場所にあり、標高は低いため少し隆起した森林のような認識を持たれている。そのため山頂と言っていいのか分からないが、ともかく頂上部分に建立されたのが義堂寺だ。
「アタシは少し早めに来て様子を窺っていたんだけどな、ここは当たりだ」
「敵がいるのね」
「ああ。傀儡吸血姫は間違いなくいる。数は分からないけど」
「それは突入前に索敵してできる限り見つけるしかないわね」
先導する朱音に付いて千秋達も暗い山道を上り始める。一応はかつての参拝道が残っているのだが、もはや草木に侵食されて原型を留めていない。
「しかし寺なんかに潜伏するとは罰当たりだな。ね、神木さん?」
「まったくよ。巫女としては自分のテリトリィに侵入されたようで非常に不愉快だわ」
「アタシのような善良な吸血姫ならともかくな」
「吸血姫自体に立ち入りをご遠慮してもらいたいわ」
「吸血姫差別反対!!」
などと言っているうちに義堂寺の鳥居が視認できる距離となった。といってもこの暗闇では小春には見えておらず、吸血姫は夜目によってある程度の視界を確保できているのだ。
「鳥居付近に傀儡吸血姫がいるわね。数は三体」
「守りを固めているな。アタシが突撃して陽動しようか?」
「もう少し状況を把握してからにしましょう」
朱音の運動性能なら敵を引きつけつつ逃げ回ることも可能ではある。しかし体力を消耗するので突入するタイミングは見極めなければならない。
「小春、足元に気を付けて」
つまづきそうになった小春の手を掴み千秋が寄り添いながら進んで行く。まるで姉のような気遣いを見ていた朱音がほっこりとしたように微笑んでいた。
「あのちーちが人に優しくなっちゃって・・・アタシは猛烈に感動しているよ」
「別に人に優しくなったわけではないわ。これは小春が相手だからよ」
「ほうほう・・・愛されてますなぁ赤時さんは」
千秋は当然だとばかりに頷き、えへへぇとにへら笑いを浮かべる小春はここが敵地であることを忘れそうになっている。
「アンタら平和でいいわね・・・・・・」
「いやいや緊張感も持ちつつも、その緊張に凝り固まらないよう配慮しているんだよ」
「警戒が緩んで死んでもしらないわよ」
「へーい。なあそろそろ相手に気づかれる距離だし、一旦足を止めよう」
鳥居の前で周囲を警戒している傀儡吸血姫に見つからないよう木の後ろに身を隠す。
「寺の周りは壁にグルっと囲まれている。アタシ達ならジャンプして飛び越えられるけど、入った瞬間会敵なんて心臓に悪いしな」
「なら先手を打って強襲して攪乱し、敵の混乱に乗して殲滅するのがいいかもしれないわね」
「ならやはりさっきの作戦でいくか」
「アナタの負担が大きいけれど、頼めるかしら?」
「まかせぃ」
朱音は木陰から飛び出して鳥居目掛けて階段を走ってゆく。
その迫力満点の突撃を目の当たりにした敵が臨戦態勢を取るが朱音が臆することはない。両手に真紅のグローブ状の魔具を装着し、一体に狙いを定めて跳躍する。
「な、何者だ!?」
「曲者だ!」
「自分で言うヤツがいるのか・・・!」
などと傀儡吸血姫がツッコミを入れた瞬間、朱音の全力パンチがクリーンヒットし、たった一撃で撃破される。
「この吸血姫はゴリラ並みの腕力を持っているのか!?」
「ゴリラだーっ! ゴリラが出たぞーっ!」
残った門兵二人は慌てふためきながら味方に危機を知らせようとするが、
「誰がゴリラじゃぼけぇ!!」
朱音の怒りの一撃が炸裂、両手で繰り出したダブルパンチで傀儡吸血姫を粒子へと変えた。
直接打撃による攻撃はリーチこそ短いものの、朱音本人のパワーも相まって直撃すれば吸血姫をも一発で倒すことができるのだ。
「どけどけーー!! ハードパンチャーこと相田朱音様のお通りだーーっ!!」
敵の気をワザと引くように叫び、寺の敷地内で暴れまわる。
「フッ・・・予定通りだな」
廃墟と化した寺の本堂で座禅を組んでいた吸血姫が外の喧噪を耳にし目を開ける。どことなく千秋に似ているが、果たして彼女は何者なのか・・・・・・
-続く-
「あのさちーち・・・付き合ってくんない?」
「お断りよ。前にも言ったけれど、何故アナタと交際しなければならないの? それにそういう大事な話を面と向かって言えない人はアウトオブ眼中よ」
「ふっるい言葉使うなちーちは。てか違うんだよ。交際とかじゃなくて過激派狩りの誘いさ」
「なら最初からそう言いなさいよ。で、どこに敵がいるの?」
「義堂寺は知ってるだろ? 界同世薙の話では、そこに過激派が入り浸っているらしい」
我関せずな生徒会長が情報を提供してくれたのは謎だが、敵の居場所を知ったとなれば攻撃するしかない。
「決行はいつ?」
「今夜にでも出ようと思う。勿論ちーち達に合わせるけど」
「今夜でいいわよ。義堂寺なら・・・棚山よね?麓で合流しましょう」
「うい。じゃあ夜の十一時頃にな。あと神木さんも来るから」
「分かったわ」
通話を終え、千秋はスマートフォンを充電器に接続する。こういう地味な下準備はしておいて損は無い。
「千秋ちゃん、でかけるの?」
「急な話なのだけれど今夜出撃することになったわ」
「敵が出たんだね?」
「ええ。小春も来てくれるかしら?」
「勿論。千秋ちゃん達の手伝いをするって決めてるからね」
フェイバーブラッドの力を借りればそう簡単には負けはしないだろう。それに小春がいてくれた方が千秋のやる気も増し、理屈を超えて戦闘力が向上するのだ。
「なら少し仮眠を取っておいた方がいいわ。学校での疲れを残したまま戦地に行くのは自殺行為になるから」
吸血姫は血を飲めば体力が回復するが人間の小春はそうもいかない。前に出て戦うのは役割ではないとはいえ、逃走する時などには体力が必要になる。
「だね。じゃあ寝ておくよ」
千秋の助言に従い、小春は与えられたばかりの自室に戻って布団に入ったのだが・・・・・・
「・・・千秋ちゃん、寝ずらいんだけど・・・?」
すぐ隣に千秋が横になって小春の顔を見つめているのだ。そりゃ寝ずらいだろう。
「気にしないでちょうだい。私は寝ている小春を守る目的でここにいるのだから」
「それはありがたいんだけど・・・さすがに狭いかな」
しかも一人用の布団の中に二人で入っていた。守る目的ならわざわざ一緒になって寝る必要はあるのか。
「それにね、小春の国宝級の寝顔を見ておきたいの。今日死ぬかもしれないし、後悔のないようにしておきたいじゃない?」
「そんな悲しい事言わないでよ」
「でもあり得ることよ。ひとたび戦場に出れば死はつきまとうもの。これまでは運よく生き残れたけど、次も上手くいくとは限らない」
「そっか・・・そうだよね・・・・・・」
脳裏で金城や柳の死がフラッシュバックする。強者感のあった彼女達でさえ惨い最期を迎え、戦いに負けるということは尊厳も無く息絶えるということだ。千秋や朱音が同じような末路を今日迎えるかもしれず、小春だって戦場に身を置く以上は他人事ではない。
「千秋ちゃんは今まで戦ってきて怖くなかったの?」
「当然恐怖はあるわよ。でも戦わなかったら一方的に殺されるだけだし、世界が悪い方向へと変わってしまう」
「確かにそれは嫌だね」
「それにね、私には新しい戦う理由ができたもの、もう何も恐れはしない」
「新しい理由?」
小春の問いに千秋がほほ笑みながら、
「小春を守る、それが今の私にとってとても大切な理由になったの」
と優しい声色で答えた。最初に会った時、人間が好きというわけでないと言っていたあの千秋が小春という人間を目の前にしてである。
「最初は共存派の協力者となり得る人だから守ろうとしていた・・・けど、守るという意味合いがあの時とでは違う。私の個人的な感情があってのことよ」
始めは美広に言われたからという単純な理由であった。しかし千秋の中で小春の存在が大きくなるにつれ、自分の命よりも優先したい相手となっている。
「フェイバーブラッド持ちだからってわけじゃない。赤時小春という存在そのものを私は・・・好きになったの。だから失いたくない、絶対に守りたいとそう思えた」
「どうして私なんかを?」
「私にもどうしてかは分からない。でも小春は特別なのよ。他の誰にも感じなかった感情をあなたに抱いているの。こんなの迷惑かもしれないけど・・・・・・」
勢いのあまり心情を吐露した千秋だが少し冷静な思考が戻ってきて恥ずかしくなってきた。さっき朱音に対して大切な話を面と向かってしない者はダメだなどと言ったが、これは赤裸々になり過ぎではないだろうかと。
「迷惑なんてことは全然ないよ。むしろ嬉しい」
「本当に!?」
「うん。私もね、千秋ちゃんとずっと一緒にいたいって思えるんだ。不思議だよね・・・まだ出会って時間は経っていないはずなのに」
「想いは時間を超えるわ。そしてこれから二人の時間を積み重ねていけばいい」
千秋は心底安堵していた。何故なら気味が悪いと避けられることもなく真正面から小春に自分を受け入れてもらえたからだ。それに小春も千秋を特別視しているようで、千秋の独占欲も満たされていく。
「だから生き残らないとね。小春との明日を紡ぐだめに」
「なにそれカッコイイ」
「真剣に思ったのよ」
ぷっと小さく笑う小春が愛おしい。
千秋は手を伸ばして柔らかな頬に置く。温かく、弾力のある感触が心地よい。
「おやすみ、千秋ちゃん」
「おやすみ、小春」
まるで赤子のようにあやされて小春は眠気に襲われる。今はただ全てを忘れて眠りに就くのだった。
午後十一時という時間である。こんな深夜となればさすがに人影は少なくなり、歩道を歩いている人種は主に二つに分けられる。すなわち真正のヤバいヤツと、死んだ魚の目をしながら歩くサラリーマンやOLだ。
「よっ、待ってたぞ」
棚山の麓で朱音が手を振りながら千秋と小春を出迎えた。
この山は街の中心部から程近い場所にあり、標高は低いため少し隆起した森林のような認識を持たれている。そのため山頂と言っていいのか分からないが、ともかく頂上部分に建立されたのが義堂寺だ。
「アタシは少し早めに来て様子を窺っていたんだけどな、ここは当たりだ」
「敵がいるのね」
「ああ。傀儡吸血姫は間違いなくいる。数は分からないけど」
「それは突入前に索敵してできる限り見つけるしかないわね」
先導する朱音に付いて千秋達も暗い山道を上り始める。一応はかつての参拝道が残っているのだが、もはや草木に侵食されて原型を留めていない。
「しかし寺なんかに潜伏するとは罰当たりだな。ね、神木さん?」
「まったくよ。巫女としては自分のテリトリィに侵入されたようで非常に不愉快だわ」
「アタシのような善良な吸血姫ならともかくな」
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「守りを固めているな。アタシが突撃して陽動しようか?」
「もう少し状況を把握してからにしましょう」
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「小春、足元に気を付けて」
つまづきそうになった小春の手を掴み千秋が寄り添いながら進んで行く。まるで姉のような気遣いを見ていた朱音がほっこりとしたように微笑んでいた。
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「別に人に優しくなったわけではないわ。これは小春が相手だからよ」
「ほうほう・・・愛されてますなぁ赤時さんは」
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「いやいや緊張感も持ちつつも、その緊張に凝り固まらないよう配慮しているんだよ」
「警戒が緩んで死んでもしらないわよ」
「へーい。なあそろそろ相手に気づかれる距離だし、一旦足を止めよう」
鳥居の前で周囲を警戒している傀儡吸血姫に見つからないよう木の後ろに身を隠す。
「寺の周りは壁にグルっと囲まれている。アタシ達ならジャンプして飛び越えられるけど、入った瞬間会敵なんて心臓に悪いしな」
「なら先手を打って強襲して攪乱し、敵の混乱に乗して殲滅するのがいいかもしれないわね」
「ならやはりさっきの作戦でいくか」
「アナタの負担が大きいけれど、頼めるかしら?」
「まかせぃ」
朱音は木陰から飛び出して鳥居目掛けて階段を走ってゆく。
その迫力満点の突撃を目の当たりにした敵が臨戦態勢を取るが朱音が臆することはない。両手に真紅のグローブ状の魔具を装着し、一体に狙いを定めて跳躍する。
「な、何者だ!?」
「曲者だ!」
「自分で言うヤツがいるのか・・・!」
などと傀儡吸血姫がツッコミを入れた瞬間、朱音の全力パンチがクリーンヒットし、たった一撃で撃破される。
「この吸血姫はゴリラ並みの腕力を持っているのか!?」
「ゴリラだーっ! ゴリラが出たぞーっ!」
残った門兵二人は慌てふためきながら味方に危機を知らせようとするが、
「誰がゴリラじゃぼけぇ!!」
朱音の怒りの一撃が炸裂、両手で繰り出したダブルパンチで傀儡吸血姫を粒子へと変えた。
直接打撃による攻撃はリーチこそ短いものの、朱音本人のパワーも相まって直撃すれば吸血姫をも一発で倒すことができるのだ。
「どけどけーー!! ハードパンチャーこと相田朱音様のお通りだーーっ!!」
敵の気をワザと引くように叫び、寺の敷地内で暴れまわる。
「フッ・・・予定通りだな」
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