17 / 54
第17話 心休まる場所
しおりを挟む
千祟真広率いる過激派吸血姫との戦いに勝利した千秋達。戦場となった義堂寺は静寂に包まれ、屋根の大部分が崩落した本堂は寂しい廃墟そのものと化している。
「皆、お疲れ様」
屋根から地上へと降りた千秋達を小春が手を振って迎える。戦闘中は蔵の中に隠れていたが、窓から様子は窺っていて此度の戦いがいかに激戦だったかは前線に立たなくたって分かった。だからこそ一人も欠けることなく生還できてホッと胸をなで下ろす。
「千秋ちゃん、大丈夫? 顔色が良くないようだけど」
小春の目も暗がりに慣れて千秋の体調の悪さにも気がつく。疲労困憊で歩幅も小さく、戦闘中のような活気ある様子とは真逆だ。
「ちーちは凶禍術を使って体が限界なんだ。そうだ、赤時さんが血を飲ませてあげれば回復するかも」
「なるほど。さあ千秋ちゃん、私の血を」
小春は髪を手でよけ、首筋を差し出す。
「ありがとう、小春。それじゃあ頂くわね・・・・・・」
ゆっくりとした動作で噛みつき血を吸い出す。疲れもあって普段よりも小春の血が美味しく感じ、今の千秋の気分は砂漠地帯でオアシスを見つけた旅人だ。
多めに血を飲んだことで千秋の体力は回復し始め、これならすぐにでも元通りになるだろう。これがフェイバーブラッドの効果の一つであり、小春が協力してくれる心強さを改めて実感していた。
「でもまさか真広さんが出てくるなんてなぁ。もしアタシと神木さんだけだったら死んでいたね」
「そうね・・・悔しいけど千祟千秋がいたからこそ勝てたんだとあたしも思う」
愛佳の本分は吸血姫狩りなのだが、吸血姫である千秋の手を借りなければ間違いなく瞬殺されていただろう。これはプライド的には許せないことだが理性は案外冷静で、共存派吸血姫との共闘は必要なことだと実感している。
「いえ、私だけでもどうしようもなかったし、ここにいる全員のおかげよ」
「あら謙虚ね」
「傲慢な真広と同じにしないでちょうだい。ちゃんと感謝するのが私なのよ。小春のことも匿ってくれたし、時間も稼いでもらって助かったわ」
「素直で謙虚で逆に気持ち悪い」
「えぇ・・・・・・」
またしても気持ち悪いと言われて千秋は少し悲しそうに眉を下げる。
「でも・・・勝ったとはいえ逃がしてしまったわ。ヤツらはまた現れるでしょうね」
「だろうね。でもちーちの怖さを知らしめることができたし、戦力をかなり削ることができたから少しは引っ込んでいてくれるだろうよ」
「だといいけれど、次会ったら必ず仕留める」
千祟真広を倒せば過激派勢力に打撃を与えることができるし、私怨からも絶対に殺さなければならない相手だ。
「さっき相田さんが言っていた凶禍術っての凄かったね。千秋ちゃんの髪が真っ赤になって、月明かりを反射して眩しかったよ」
「アタシも久しぶりに見たけどやっぱカッコイイよな。アレは千祟家に伝わる秘儀でアタシ達みたいな吸血姫には使えないんだ」
「それほど千祟家ってのはスゴイ血筋なんだね」
「そりゃあ吸血姫界隈では有名な家柄だしな。中でもちーちは純血のプリンセスって呼ばれていて畏怖の対象でもあるのさ」
「千秋ちゃん自体が恐れられるほどの吸血姫なんだ」
かつての真広が自分の真の後継者に千秋を指名したことにより、他の吸血姫から一目置かれる存在となったのだ。
「そんな千秋ちゃんの役に立てて嬉しいよ」
「ふふ、そんなかしこまらないで。さあ今日はもう帰りましょう。明日も学校だし」
肉体的にはフェイバーブラッドによって疲れも取れはじめていたが精神的な疲れまでは癒せない。殺意だけでなく、真広への様々な感情が千秋の中で渦巻いているのだ。
迎えに来た美広の車に乗り、千秋と小春は義堂寺の立つ棚山を後にした。ちなみに朱音と愛佳のことも送ると申し出たが遠慮して先に帰っている。
「・・・そう。お姉ちゃんが居たのね・・・・・・」
美広は千秋から今日の事を聞き、千秋と真広と戦った事実に心を痛めていた。千秋の決意は知るところであるが、できれば千秋が曇るような事態だけは起きて欲しくない。しかし過激派との戦いを・・・いや、どちらかが生きている限り激突する宿命からは逃れられないのだろう・・・・・・
「しかも凶禍術を使ったって・・・体は大丈夫なの?」
「一時は動けなくなったけれど、小春の血のおかげで今は問題ないわ」
「ならいいけど・・・戦いに送り出しておいて言えることではないけど、無理し過ぎないで」
千祟家の一人である美広も凶禍術を使うことはできる。しかし才能が無いためか長時間維持できないし扱いこなせない。その点千秋なら有効に使えるのだろうが、肉体への過剰な負荷がかかることに違いはない。
「もしお姉ちゃんの居る場所が分かったら、その時は私も呼んで」
「ママ・・・?」
「お姉ちゃんとは私が戦うわ。千秋ちゃんに嫌な役ばかり味わわせたくないもの」
「でも・・・・・・」
「一度くらい全力を出さないとね。確かに能力差はあるけど・・・やれるだけやってみる」
以前小春に姉と刺し違える覚悟があると話したことがある。それは今だって変わっていないし、むしろその覚悟は大きくなっていた。真広は千秋の心身を傷つける存在で美広にも許せない相手となっている。
千祟宅へと帰り軽くシャワーを浴びた小春は寝床に就こうとする。すると部屋の扉が開いて千秋がパジャマ姿で室内に入ってきた。
「あれ、どうかしたの?」
「その・・・夕方仮眠を取った時みたいに、また一緒に寝たいなって・・・・・・」
恥ずかしそうに千秋がもじもじとしながら呟く。戦いの前に一つの布団に二人で密着しながら仮眠を取ったのだが、また同じようにして就寝したいらしい。
「イヤだったかしら・・・?」
「ううん、そんなことないよ。ほらどうぞ」
小春は布団をめくり手で自分の隣へと誘う。一緒に寝るのは小春にとってイヤなことなどではない。
「あ、ありがとう」
拒否されなくて安心した千秋は小春のすぐ隣に横になり、ふぅっと一息ついた。
「温かい・・・小春の体温が伝わって来て心地良いわ」
「うふふふ・・・・・・」
「どうしたの?」
「いやあ千秋ちゃんって意外と甘えん坊で寂しがり屋さんなんだなって」
「そ、そんなこと・・・あるかもしれないわね」
きっと小春の温もりを知ってしまったからだろう。小春と会う以前の千秋はこんなではなかった。人と距離を取って生きてきたのに、今では少しでも多くの時間を共にしたいと願っている。
「それに逃げ場にしているのよ、私は」
「逃げ場?」
「小春と一緒ならマイナス思考にならずにいられる・・・辛いことを考えずにすむって・・・最低よね」
「そうかな? 私はそうは思わないけどな」
逃げ場にしてくれるほど千秋が自分を信頼してくれている証拠だと小春は捉えていた。
基本的に人間というものは他人に弱ったところを見せたくないもので、これは生物としての本能に起因する。例えば野生の動物などが弱れば狩られるのと同じで、他者につけいられる隙を与えることになるからだ。
「逃げたっていいじゃない。千秋ちゃんは特に重い因縁を背負っているようだし、一人で抱え込むのは体にも心にもよくないよ。私で助けになれるなら、喜んで受け入れるよ」
「どうしてそう優しいの? だから一層依存したくなるわ」
「してくれていいよ。千秋ちゃんなら」
この感情をどうしたものか千秋には分からない。小春に対する気持ちがますます昂っているが解放する方法を知らなかった。
「小春・・・ずっと傍に居て。私を見捨てないで」
「どっちかというと、見捨てられるのは私のほうじゃ?」
フェイバーブラッドの代わりが見つかれば自分はいらなくなるのではという不安が無いわけではない。
「私がそんなことするわけないでしょう?小春に代わりはいないし、こんなにも想っているのよ?」
「そっか。なら私達の将来は安泰だね」
未来を誓い合ったパートナーが別れる例はいくらでもあるが、千秋とは一生一緒にいるような気がした。
「そういえばさ、一つ気になったことがあるんだけど」
「何かしら?」
「純血のプリンセスって、どういう由来なの?」
「千祟家は吸血姫だけで繁栄してきた血筋なの。つまり人と交わったことのない吸血姫のサラブレッドとも言えるもので、偉大だった千祟真広の娘であったことから純血のプリンセスって」
「ふむふむ・・・ん?」
小春は何かに引っかかったようだ。
「吸血姫って女性だけの種族だよね?それでどうやって子孫を・・・?」
「気づいてしまったわね・・・・・・」
千秋は小春の耳元に顔を近づける。
「教えてあげるわ。吸血姫の繁殖の仕方をね」
「繁殖・・・?」
スッと動いた千秋の手が小春の服をめくり下腹部に指を這わせる。それがくすぐったくて身動きするが、直後にお腹の内側から不思議な感覚が広がり始めた。
「なに、これ・・・体が熱い・・・!」
「まずはこうやって対象者の子宮に術をかけるの。これで準備は完了よ」
「えっ・・・?」
「そして噛みつけば子宮に子が宿る。簡単でしょう?こうして女性同士でも子孫を残せるのが吸血姫なの」
とろけた目の小春の脳では千秋の話は半分くらいしか理解できていない。思考力そのものが低下しているのだ。
「どうする? このまま私が小春の首筋に歯を立てるだけでいいのよ?」
「だめぇ・・・まだ、そういうのは・・・・・・」
「ふふ、そうね。軽々しくすることではないわね」
千秋はもう一度小春の下腹部を撫で上げ術を取り消した。それでも体の熱は冷めず、小春はまるで自慰をしている時のような荒い息を吐いている。
「小春には吸血姫のことをもっと知ってもらいたいわ。勿論、私についても」
「う、うん・・・・・・」
「まあとりあえず今日は寝ましょう。小春も疲れたでしょう?」
疲れてはいるが、それ以上に千秋の術のせいで眠気など飛んでいってしまった。その責任をどう取ってもらうか考えつつ、いたずらっぽい笑みを浮かべる千秋の腕を抱き寄せた。
-続く-
「皆、お疲れ様」
屋根から地上へと降りた千秋達を小春が手を振って迎える。戦闘中は蔵の中に隠れていたが、窓から様子は窺っていて此度の戦いがいかに激戦だったかは前線に立たなくたって分かった。だからこそ一人も欠けることなく生還できてホッと胸をなで下ろす。
「千秋ちゃん、大丈夫? 顔色が良くないようだけど」
小春の目も暗がりに慣れて千秋の体調の悪さにも気がつく。疲労困憊で歩幅も小さく、戦闘中のような活気ある様子とは真逆だ。
「ちーちは凶禍術を使って体が限界なんだ。そうだ、赤時さんが血を飲ませてあげれば回復するかも」
「なるほど。さあ千秋ちゃん、私の血を」
小春は髪を手でよけ、首筋を差し出す。
「ありがとう、小春。それじゃあ頂くわね・・・・・・」
ゆっくりとした動作で噛みつき血を吸い出す。疲れもあって普段よりも小春の血が美味しく感じ、今の千秋の気分は砂漠地帯でオアシスを見つけた旅人だ。
多めに血を飲んだことで千秋の体力は回復し始め、これならすぐにでも元通りになるだろう。これがフェイバーブラッドの効果の一つであり、小春が協力してくれる心強さを改めて実感していた。
「でもまさか真広さんが出てくるなんてなぁ。もしアタシと神木さんだけだったら死んでいたね」
「そうね・・・悔しいけど千祟千秋がいたからこそ勝てたんだとあたしも思う」
愛佳の本分は吸血姫狩りなのだが、吸血姫である千秋の手を借りなければ間違いなく瞬殺されていただろう。これはプライド的には許せないことだが理性は案外冷静で、共存派吸血姫との共闘は必要なことだと実感している。
「いえ、私だけでもどうしようもなかったし、ここにいる全員のおかげよ」
「あら謙虚ね」
「傲慢な真広と同じにしないでちょうだい。ちゃんと感謝するのが私なのよ。小春のことも匿ってくれたし、時間も稼いでもらって助かったわ」
「素直で謙虚で逆に気持ち悪い」
「えぇ・・・・・・」
またしても気持ち悪いと言われて千秋は少し悲しそうに眉を下げる。
「でも・・・勝ったとはいえ逃がしてしまったわ。ヤツらはまた現れるでしょうね」
「だろうね。でもちーちの怖さを知らしめることができたし、戦力をかなり削ることができたから少しは引っ込んでいてくれるだろうよ」
「だといいけれど、次会ったら必ず仕留める」
千祟真広を倒せば過激派勢力に打撃を与えることができるし、私怨からも絶対に殺さなければならない相手だ。
「さっき相田さんが言っていた凶禍術っての凄かったね。千秋ちゃんの髪が真っ赤になって、月明かりを反射して眩しかったよ」
「アタシも久しぶりに見たけどやっぱカッコイイよな。アレは千祟家に伝わる秘儀でアタシ達みたいな吸血姫には使えないんだ」
「それほど千祟家ってのはスゴイ血筋なんだね」
「そりゃあ吸血姫界隈では有名な家柄だしな。中でもちーちは純血のプリンセスって呼ばれていて畏怖の対象でもあるのさ」
「千秋ちゃん自体が恐れられるほどの吸血姫なんだ」
かつての真広が自分の真の後継者に千秋を指名したことにより、他の吸血姫から一目置かれる存在となったのだ。
「そんな千秋ちゃんの役に立てて嬉しいよ」
「ふふ、そんなかしこまらないで。さあ今日はもう帰りましょう。明日も学校だし」
肉体的にはフェイバーブラッドによって疲れも取れはじめていたが精神的な疲れまでは癒せない。殺意だけでなく、真広への様々な感情が千秋の中で渦巻いているのだ。
迎えに来た美広の車に乗り、千秋と小春は義堂寺の立つ棚山を後にした。ちなみに朱音と愛佳のことも送ると申し出たが遠慮して先に帰っている。
「・・・そう。お姉ちゃんが居たのね・・・・・・」
美広は千秋から今日の事を聞き、千秋と真広と戦った事実に心を痛めていた。千秋の決意は知るところであるが、できれば千秋が曇るような事態だけは起きて欲しくない。しかし過激派との戦いを・・・いや、どちらかが生きている限り激突する宿命からは逃れられないのだろう・・・・・・
「しかも凶禍術を使ったって・・・体は大丈夫なの?」
「一時は動けなくなったけれど、小春の血のおかげで今は問題ないわ」
「ならいいけど・・・戦いに送り出しておいて言えることではないけど、無理し過ぎないで」
千祟家の一人である美広も凶禍術を使うことはできる。しかし才能が無いためか長時間維持できないし扱いこなせない。その点千秋なら有効に使えるのだろうが、肉体への過剰な負荷がかかることに違いはない。
「もしお姉ちゃんの居る場所が分かったら、その時は私も呼んで」
「ママ・・・?」
「お姉ちゃんとは私が戦うわ。千秋ちゃんに嫌な役ばかり味わわせたくないもの」
「でも・・・・・・」
「一度くらい全力を出さないとね。確かに能力差はあるけど・・・やれるだけやってみる」
以前小春に姉と刺し違える覚悟があると話したことがある。それは今だって変わっていないし、むしろその覚悟は大きくなっていた。真広は千秋の心身を傷つける存在で美広にも許せない相手となっている。
千祟宅へと帰り軽くシャワーを浴びた小春は寝床に就こうとする。すると部屋の扉が開いて千秋がパジャマ姿で室内に入ってきた。
「あれ、どうかしたの?」
「その・・・夕方仮眠を取った時みたいに、また一緒に寝たいなって・・・・・・」
恥ずかしそうに千秋がもじもじとしながら呟く。戦いの前に一つの布団に二人で密着しながら仮眠を取ったのだが、また同じようにして就寝したいらしい。
「イヤだったかしら・・・?」
「ううん、そんなことないよ。ほらどうぞ」
小春は布団をめくり手で自分の隣へと誘う。一緒に寝るのは小春にとってイヤなことなどではない。
「あ、ありがとう」
拒否されなくて安心した千秋は小春のすぐ隣に横になり、ふぅっと一息ついた。
「温かい・・・小春の体温が伝わって来て心地良いわ」
「うふふふ・・・・・・」
「どうしたの?」
「いやあ千秋ちゃんって意外と甘えん坊で寂しがり屋さんなんだなって」
「そ、そんなこと・・・あるかもしれないわね」
きっと小春の温もりを知ってしまったからだろう。小春と会う以前の千秋はこんなではなかった。人と距離を取って生きてきたのに、今では少しでも多くの時間を共にしたいと願っている。
「それに逃げ場にしているのよ、私は」
「逃げ場?」
「小春と一緒ならマイナス思考にならずにいられる・・・辛いことを考えずにすむって・・・最低よね」
「そうかな? 私はそうは思わないけどな」
逃げ場にしてくれるほど千秋が自分を信頼してくれている証拠だと小春は捉えていた。
基本的に人間というものは他人に弱ったところを見せたくないもので、これは生物としての本能に起因する。例えば野生の動物などが弱れば狩られるのと同じで、他者につけいられる隙を与えることになるからだ。
「逃げたっていいじゃない。千秋ちゃんは特に重い因縁を背負っているようだし、一人で抱え込むのは体にも心にもよくないよ。私で助けになれるなら、喜んで受け入れるよ」
「どうしてそう優しいの? だから一層依存したくなるわ」
「してくれていいよ。千秋ちゃんなら」
この感情をどうしたものか千秋には分からない。小春に対する気持ちがますます昂っているが解放する方法を知らなかった。
「小春・・・ずっと傍に居て。私を見捨てないで」
「どっちかというと、見捨てられるのは私のほうじゃ?」
フェイバーブラッドの代わりが見つかれば自分はいらなくなるのではという不安が無いわけではない。
「私がそんなことするわけないでしょう?小春に代わりはいないし、こんなにも想っているのよ?」
「そっか。なら私達の将来は安泰だね」
未来を誓い合ったパートナーが別れる例はいくらでもあるが、千秋とは一生一緒にいるような気がした。
「そういえばさ、一つ気になったことがあるんだけど」
「何かしら?」
「純血のプリンセスって、どういう由来なの?」
「千祟家は吸血姫だけで繁栄してきた血筋なの。つまり人と交わったことのない吸血姫のサラブレッドとも言えるもので、偉大だった千祟真広の娘であったことから純血のプリンセスって」
「ふむふむ・・・ん?」
小春は何かに引っかかったようだ。
「吸血姫って女性だけの種族だよね?それでどうやって子孫を・・・?」
「気づいてしまったわね・・・・・・」
千秋は小春の耳元に顔を近づける。
「教えてあげるわ。吸血姫の繁殖の仕方をね」
「繁殖・・・?」
スッと動いた千秋の手が小春の服をめくり下腹部に指を這わせる。それがくすぐったくて身動きするが、直後にお腹の内側から不思議な感覚が広がり始めた。
「なに、これ・・・体が熱い・・・!」
「まずはこうやって対象者の子宮に術をかけるの。これで準備は完了よ」
「えっ・・・?」
「そして噛みつけば子宮に子が宿る。簡単でしょう?こうして女性同士でも子孫を残せるのが吸血姫なの」
とろけた目の小春の脳では千秋の話は半分くらいしか理解できていない。思考力そのものが低下しているのだ。
「どうする? このまま私が小春の首筋に歯を立てるだけでいいのよ?」
「だめぇ・・・まだ、そういうのは・・・・・・」
「ふふ、そうね。軽々しくすることではないわね」
千秋はもう一度小春の下腹部を撫で上げ術を取り消した。それでも体の熱は冷めず、小春はまるで自慰をしている時のような荒い息を吐いている。
「小春には吸血姫のことをもっと知ってもらいたいわ。勿論、私についても」
「う、うん・・・・・・」
「まあとりあえず今日は寝ましょう。小春も疲れたでしょう?」
疲れてはいるが、それ以上に千秋の術のせいで眠気など飛んでいってしまった。その責任をどう取ってもらうか考えつつ、いたずらっぽい笑みを浮かべる千秋の腕を抱き寄せた。
-続く-
0
あなたにおすすめの小説
リビルドヒストリア ~壊れたメイド型アンドロイドを拾ったので私の修復能力《リペアスキル》で直してあげたら懐かれました~
ヤマタ
ファンタジー
一級魔導士の少女マリカ・コノエは《リペアスキル》という物を直せる特殊能力を持っている。
ある日、廃墟都市で壊れたメイド型アンドロイドを拾ったマリカはリペアスキルを行使して修復に成功した。するとアンドロイドはマリカを新たな主として登録し、専属メイドとして奉仕すると申し出るのだった。愛らしい少女の外見をしたそのアンドロイドメイドはカティアと名付けられ、二人の同棲生活が始まる。
カティアはマリカが営むジャンク屋を手伝い、アンドロイドとしての機能や知識を駆使して様々な仕事に取り組んでいく。時には魔物や兵器などとの戦いも経験し、困難を切り抜ける度に二人の距離は近づいて、人間とアンドロイドという種族を超えて惹かれ合っていくのだった。
そして、廃れた世界に点在する滅亡した文明の遺産をリペアスキルで直していくマリカは、やがて恐ろしい計画に巻き込まれていくが、強まっていくカティアとの絆と共に立ち向かう。
これは人間の少女マリカと、アンドロイドメイドのカティアを中心とした百合ファンタジー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
異世界帰りのハーレム王
ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。
で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか?
異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕!
異世界帰りのハーレム王
朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる