江戸の奉公人ですが美しい神仙の封印を解いたら運命の人でした

闇雲シャルロッテ

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19 誓い

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 そういえば、この前の夜に喧嘩した時にも同じことを聞かれていたのに答えていなかった。

「……口づけと愛撫です」
「そうか。辛い思いをさせたな。すまない」
「どうして究竟様が謝るんですか? 悪いのは僕なのに。慣れないお酒なんか飲んで少し優しくされたからって、あんな人の前で酔い潰れて屋敷に連れて行かれて……本当に馬鹿でした」
「酒のせいだけじゃない。お前の身体に染み付いていたあの香りは、媚薬の一種だ」
「媚薬!?」

 間宮が首から提げていた匂袋の香りを思い出す。たしかにあの香りを嗅ぐと頭がふわふわして何も考えられなくなった。

「人の正常な判断力と理性を失わせ、愛欲のことしか考えられないようにするんだ。あの夜、普段とは違ってお前がらしくないことばかりを俺に言ったのはそのせいだ」
「究竟様はわかってたんだ……だから僕がどんなに喚いても冷静でいてくれたんですね。それなのに僕は……百合江お嬢様に嫉妬して、疑心暗鬼になって、究竟様を信じようとしなかった」
「嫉妬、恨み、猜疑心さいぎしん。人はそういった負の感情に支配されると、その心の隙間を邪悪なものに付け込まれやすくなる。間宮はそういった人の心の隙間に付け込むのが得意なんだ」
「そういえば、あの人に額をトンと小突かれて何度か意識を失ったような気がします」
「催眠術だ。お前は完全に操られていた。だから抵抗できなかったし、普段と全然違ってしまっていたんだよ」
「あんなに一方的に究竟様に食って掛かって、感情のまま勝手なことばかり言ってしまって……本当に後悔しています。ごめんなさい」
「気にするな。お前は何も悪くない」
「でも、あんな手足を縛られて裸にされてなぐさみみ者にされて。挙句の果てにその姿を究竟様に見られて。けがれていると思われても仕方ありません」
「間宮がお前に接触していることに気が付かなかった、俺の過失だ」
「こんなどうしようもない僕を、究竟様は見捨てずに助けに来てくれました。本当に感謝しています」
「俺の大事なお前を、あんな奴にもてあそばれてたまるか」

 耳を疑った。オレノダイジナオマエ?
 その時、百合江が言っていた言葉を思い出した。究竟には好きな人がいるという言葉を。
 でももうそんなことどうでもよかった。究竟の心は蒼衣のものではない。究竟が誰を想おうと自由だ。たとえ究竟の本心はわからなくても、もういい。間宮にあんな酷いことをされて身に染みてわかった。大事なのは究竟が自分を助けに来てくれたことだ。自分が究竟を好きなことだ。間宮との因縁のことなどまだまだ聞きたいこともたくさんあるが、今はそんなのもどうでもいい。ただ究竟と一緒にいたい。離れたくない。
 背後から抱きしめたまま、究竟が蒼衣の肩に口づけした。強く強く吸って痕が残るくらいに。まるで蒼衣は自分の所有物だと刻印するかのように。
 蒼衣はくるりと身体を回して究竟の方を向いた。湯気が立ち込めているから少しでも離れると、すぐに究竟の顔が見えなくなってしまう。そんなのはもう嫌だ。少しも離れていたくない。
 蒼衣は決して見失うことのないよう究竟の首に両手を回した。究竟も湯の中で蒼衣の腰に両手を回している。

「好きです……究竟様……」
「俺もだよ……蒼衣……」

 夢のようなずっと聞きたかった言葉。自分に向けられる究竟の言葉はすべて信じると決めた。

「うれしい……」

 蒼衣は自分から究竟に口づけした。自分から究竟の唇を割って究竟の舌を求めた。究竟も蒼衣の舌を求めて濃厚に絡める。そうだ、欲しかったのはこの口づけだ。
 口づけしながら桜色になった蒼衣の肌を、湯の中で究竟がやさしく撫でている。ああ、なんていう幸福感! 
 究竟の細く長い指が蒼衣の胸の突起を撫ではじめた。次第にそれが固くなってくるとそこはもう責めずに、その周りだけを円を描くように何度も何度も撫でられる。

「もどかしい?」
「……うん」
「ぷっくりしてきた」
「やっ……そんなことない……」
「粘膜みたいに吸い付いてきて、触ってても気持ちいい。ずっとこうしてようかな」
「……先端も」
「おねだりなんかして。いやらしい子だ」
「ちが……あんっ」

 究竟に身体と同時に言葉で攻められるのが途方もなく好きだ。究竟の声を聞くだけで、とろけてしまっておかしくなりそうになる。自分はどれだけこの男が好きなんだろう。
 究竟の首にしがみ付いて周りだけの緩やかな快感を楽しんでいると、不意に親指で先端を強く何度も擦られ最大限に大きくなったあと、陥没させるように押し込まれた。

「ああっ!!」

 強烈な快感に襲われ首を仰け反らせた蒼衣の顔を、究竟が両手で包んで自分の方に向けさせた。とろけている蒼衣の瞳を真っ直ぐに見つめながら究竟が言った。

「いいか、これからは何があっても俺のことだけを信じろ。お前はもう、俺だけのものだ。他の誰にも渡さない」
「ほんと?」
「ああ」

 究竟の瞳を食い入るように見つめた蒼衣は自分から究竟に口づけした。それは蒼衣にとって、誓いの口づけだった。
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