19 / 30
19 誓い
しおりを挟む
そういえば、この前の夜に喧嘩した時にも同じことを聞かれていたのに答えていなかった。
「……口づけと愛撫です」
「そうか。辛い思いをさせたな。すまない」
「どうして究竟様が謝るんですか? 悪いのは僕なのに。慣れないお酒なんか飲んで少し優しくされたからって、あんな人の前で酔い潰れて屋敷に連れて行かれて……本当に馬鹿でした」
「酒のせいだけじゃない。お前の身体に染み付いていたあの香りは、媚薬の一種だ」
「媚薬!?」
間宮が首から提げていた匂袋の香りを思い出す。たしかにあの香りを嗅ぐと頭がふわふわして何も考えられなくなった。
「人の正常な判断力と理性を失わせ、愛欲のことしか考えられないようにするんだ。あの夜、普段とは違ってお前がらしくないことばかりを俺に言ったのはそのせいだ」
「究竟様はわかってたんだ……だから僕がどんなに喚いても冷静でいてくれたんですね。それなのに僕は……百合江お嬢様に嫉妬して、疑心暗鬼になって、究竟様を信じようとしなかった」
「嫉妬、恨み、猜疑心。人はそういった負の感情に支配されると、その心の隙間を邪悪なものに付け込まれやすくなる。間宮はそういった人の心の隙間に付け込むのが得意なんだ」
「そういえば、あの人に額をトンと小突かれて何度か意識を失ったような気がします」
「催眠術だ。お前は完全に操られていた。だから抵抗できなかったし、普段と全然違ってしまっていたんだよ」
「あんなに一方的に究竟様に食って掛かって、感情のまま勝手なことばかり言ってしまって……本当に後悔しています。ごめんなさい」
「気にするな。お前は何も悪くない」
「でも、あんな手足を縛られて裸にされて慰み者にされて。挙句の果てにその姿を究竟様に見られて。穢れていると思われても仕方ありません」
「間宮がお前に接触していることに気が付かなかった、俺の過失だ」
「こんなどうしようもない僕を、究竟様は見捨てずに助けに来てくれました。本当に感謝しています」
「俺の大事なお前を、あんな奴に弄ばれてたまるか」
耳を疑った。オレノダイジナオマエ?
その時、百合江が言っていた言葉を思い出した。究竟には好きな人がいるという言葉を。
でももうそんなことどうでもよかった。究竟の心は蒼衣のものではない。究竟が誰を想おうと自由だ。たとえ究竟の本心はわからなくても、もういい。間宮にあんな酷いことをされて身に染みてわかった。大事なのは究竟が自分を助けに来てくれたことだ。自分が究竟を好きなことだ。間宮との因縁のことなどまだまだ聞きたいこともたくさんあるが、今はそんなのもどうでもいい。ただ究竟と一緒にいたい。離れたくない。
背後から抱きしめたまま、究竟が蒼衣の肩に口づけした。強く強く吸って痕が残るくらいに。まるで蒼衣は自分の所有物だと刻印するかのように。
蒼衣はくるりと身体を回して究竟の方を向いた。湯気が立ち込めているから少しでも離れると、すぐに究竟の顔が見えなくなってしまう。そんなのはもう嫌だ。少しも離れていたくない。
蒼衣は決して見失うことのないよう究竟の首に両手を回した。究竟も湯の中で蒼衣の腰に両手を回している。
「好きです……究竟様……」
「俺もだよ……蒼衣……」
夢のようなずっと聞きたかった言葉。自分に向けられる究竟の言葉はすべて信じると決めた。
「うれしい……」
蒼衣は自分から究竟に口づけした。自分から究竟の唇を割って究竟の舌を求めた。究竟も蒼衣の舌を求めて濃厚に絡める。そうだ、欲しかったのはこの口づけだ。
口づけしながら桜色になった蒼衣の肌を、湯の中で究竟がやさしく撫でている。ああ、なんていう幸福感!
究竟の細く長い指が蒼衣の胸の突起を撫ではじめた。次第にそれが固くなってくるとそこはもう責めずに、その周りだけを円を描くように何度も何度も撫でられる。
「もどかしい?」
「……うん」
「ぷっくりしてきた」
「やっ……そんなことない……」
「粘膜みたいに吸い付いてきて、触ってても気持ちいい。ずっとこうしてようかな」
「……先端も」
「おねだりなんかして。いやらしい子だ」
「ちが……あんっ」
究竟に身体と同時に言葉で攻められるのが途方もなく好きだ。究竟の声を聞くだけで、とろけてしまっておかしくなりそうになる。自分はどれだけこの男が好きなんだろう。
究竟の首にしがみ付いて周りだけの緩やかな快感を楽しんでいると、不意に親指で先端を強く何度も擦られ最大限に大きくなったあと、陥没させるように押し込まれた。
「ああっ!!」
強烈な快感に襲われ首を仰け反らせた蒼衣の顔を、究竟が両手で包んで自分の方に向けさせた。とろけている蒼衣の瞳を真っ直ぐに見つめながら究竟が言った。
「いいか、これからは何があっても俺のことだけを信じろ。お前はもう、俺だけのものだ。他の誰にも渡さない」
「ほんと?」
「ああ」
究竟の瞳を食い入るように見つめた蒼衣は自分から究竟に口づけした。それは蒼衣にとって、誓いの口づけだった。
「……口づけと愛撫です」
「そうか。辛い思いをさせたな。すまない」
「どうして究竟様が謝るんですか? 悪いのは僕なのに。慣れないお酒なんか飲んで少し優しくされたからって、あんな人の前で酔い潰れて屋敷に連れて行かれて……本当に馬鹿でした」
「酒のせいだけじゃない。お前の身体に染み付いていたあの香りは、媚薬の一種だ」
「媚薬!?」
間宮が首から提げていた匂袋の香りを思い出す。たしかにあの香りを嗅ぐと頭がふわふわして何も考えられなくなった。
「人の正常な判断力と理性を失わせ、愛欲のことしか考えられないようにするんだ。あの夜、普段とは違ってお前がらしくないことばかりを俺に言ったのはそのせいだ」
「究竟様はわかってたんだ……だから僕がどんなに喚いても冷静でいてくれたんですね。それなのに僕は……百合江お嬢様に嫉妬して、疑心暗鬼になって、究竟様を信じようとしなかった」
「嫉妬、恨み、猜疑心。人はそういった負の感情に支配されると、その心の隙間を邪悪なものに付け込まれやすくなる。間宮はそういった人の心の隙間に付け込むのが得意なんだ」
「そういえば、あの人に額をトンと小突かれて何度か意識を失ったような気がします」
「催眠術だ。お前は完全に操られていた。だから抵抗できなかったし、普段と全然違ってしまっていたんだよ」
「あんなに一方的に究竟様に食って掛かって、感情のまま勝手なことばかり言ってしまって……本当に後悔しています。ごめんなさい」
「気にするな。お前は何も悪くない」
「でも、あんな手足を縛られて裸にされて慰み者にされて。挙句の果てにその姿を究竟様に見られて。穢れていると思われても仕方ありません」
「間宮がお前に接触していることに気が付かなかった、俺の過失だ」
「こんなどうしようもない僕を、究竟様は見捨てずに助けに来てくれました。本当に感謝しています」
「俺の大事なお前を、あんな奴に弄ばれてたまるか」
耳を疑った。オレノダイジナオマエ?
その時、百合江が言っていた言葉を思い出した。究竟には好きな人がいるという言葉を。
でももうそんなことどうでもよかった。究竟の心は蒼衣のものではない。究竟が誰を想おうと自由だ。たとえ究竟の本心はわからなくても、もういい。間宮にあんな酷いことをされて身に染みてわかった。大事なのは究竟が自分を助けに来てくれたことだ。自分が究竟を好きなことだ。間宮との因縁のことなどまだまだ聞きたいこともたくさんあるが、今はそんなのもどうでもいい。ただ究竟と一緒にいたい。離れたくない。
背後から抱きしめたまま、究竟が蒼衣の肩に口づけした。強く強く吸って痕が残るくらいに。まるで蒼衣は自分の所有物だと刻印するかのように。
蒼衣はくるりと身体を回して究竟の方を向いた。湯気が立ち込めているから少しでも離れると、すぐに究竟の顔が見えなくなってしまう。そんなのはもう嫌だ。少しも離れていたくない。
蒼衣は決して見失うことのないよう究竟の首に両手を回した。究竟も湯の中で蒼衣の腰に両手を回している。
「好きです……究竟様……」
「俺もだよ……蒼衣……」
夢のようなずっと聞きたかった言葉。自分に向けられる究竟の言葉はすべて信じると決めた。
「うれしい……」
蒼衣は自分から究竟に口づけした。自分から究竟の唇を割って究竟の舌を求めた。究竟も蒼衣の舌を求めて濃厚に絡める。そうだ、欲しかったのはこの口づけだ。
口づけしながら桜色になった蒼衣の肌を、湯の中で究竟がやさしく撫でている。ああ、なんていう幸福感!
究竟の細く長い指が蒼衣の胸の突起を撫ではじめた。次第にそれが固くなってくるとそこはもう責めずに、その周りだけを円を描くように何度も何度も撫でられる。
「もどかしい?」
「……うん」
「ぷっくりしてきた」
「やっ……そんなことない……」
「粘膜みたいに吸い付いてきて、触ってても気持ちいい。ずっとこうしてようかな」
「……先端も」
「おねだりなんかして。いやらしい子だ」
「ちが……あんっ」
究竟に身体と同時に言葉で攻められるのが途方もなく好きだ。究竟の声を聞くだけで、とろけてしまっておかしくなりそうになる。自分はどれだけこの男が好きなんだろう。
究竟の首にしがみ付いて周りだけの緩やかな快感を楽しんでいると、不意に親指で先端を強く何度も擦られ最大限に大きくなったあと、陥没させるように押し込まれた。
「ああっ!!」
強烈な快感に襲われ首を仰け反らせた蒼衣の顔を、究竟が両手で包んで自分の方に向けさせた。とろけている蒼衣の瞳を真っ直ぐに見つめながら究竟が言った。
「いいか、これからは何があっても俺のことだけを信じろ。お前はもう、俺だけのものだ。他の誰にも渡さない」
「ほんと?」
「ああ」
究竟の瞳を食い入るように見つめた蒼衣は自分から究竟に口づけした。それは蒼衣にとって、誓いの口づけだった。
2
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
平凡高校生の俺にイケメンアイドルが365回告白してくる理由
スノウマン(ユッキー)
BL
高校三年生の橘颯真はイケメンアイドル星宮光に毎日欠かさず告白されている。男同士とのこともあり、毎回断る颯真だが、一年という時間が彼らの関係を少しずつ変えていく。
どうして星宮は颯真に毎日告白するのか、そして彼らの恋の行方は?
入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?
monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。
そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。
主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。
※今回の表紙はAI生成です
※小説家になろうにも公開してます
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
「大人扱いしていい?」〜純情当主、執務室で策士な従兄の『相性確認』にハメられる〜
中山(ほ)
BL
「ルイン、少し口開けてみて」
仕事終わりの静かな執務室。
差し入れの食事と、ポーションの瓶。
信頼していた従兄のトロンに誘われるまま、
ルインは「大人の相性確認」を始めることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる