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27 怒り
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「いいか、この悪趣味な世界は俺と間宮がここから立ち去ればすぐに消える。それまで岸で琥太郎と待っていろ。そうすれば自然と元の世界に戻れるから」
「嫌……行かないで、究竟様」
究竟は切ない顔をしたあと、微笑んだ。
「はじめて会った時からずっと好きだったよ。さよなら、俺の蒼衣」
そう言って究竟は蒼衣に口づけして蒼衣を岸辺へと促した。
あぶく立つ血の池から出て岸辺に上がった蒼衣は、岸辺に落としたままだった鉄剣を拾った。金縛りに遭って動けない琥太郎を蒼衣が抱き上げたのを見届けると、究竟は血の池の中を歩いて間宮のいる舟へと乗り込んだ。
間宮は待ってましたとばかりに究竟の両手両足を十字の磔台に拘束した。磔られた究竟には拘束具を解く神通力も、いや、ただの人間としての体力さえも残っていなかった。
無抵抗な究竟の唇を間宮が奪う。目を開いたまま顔色ひとつ変えることなく、しつこい間宮の深い口づけにも究竟は身動ぎひとつしなかった。
蒼衣は涙を流しながらそれを見つめていた。間宮が唇を離すと究竟は唾を吐いた。
「ふん、強がっていられるのも今のうちだ。そのうちお前は、わしの腕の中で力尽きて死んでいくのだ」
耐えられなくなった蒼衣は大声で叫んだ。
「どうして!? どうしてこんな酷いことができるの!?」
蒼衣を振り返った間宮は嘲笑うかのように言った。
「どうしてかって? まだまだこれからが本丸だぞ。わしがなぜ究竟の神通力をお前の中に封印したと思う? それはな、究竟が己の命ともいうべき神通力とお前を天秤にかけた時、どちらを選ぶのか見物するためだ」
「そんな……」
「神通力を選ぶならお前をわしに差し出すことになる。お前を選べば神通力を失うことになる。結果、究竟はお前を選びわしに負けを認めた」
「間宮、もう何も言うな。この子は関係ない」
制する究竟に振り向いた間宮が、究竟に唾がかかりそうなほど顔を近付けて大声で言う。
「そうだ! 蒼衣なんて関係ない! 究竟よ、わしの本当の目的がわかるか? それはな、お前に愛する者を手に入れられない苦しみを味わわせることだ! わしと同じ苦しみをな!」
間宮の究竟に対する執着に蒼衣は恐怖を覚えた。この男は常軌を逸している。
それでも究竟は取り乱すことなく間宮を無表情で見ていた。
くるりと向きを変えた間宮は、恐怖で震えが止まらない蒼衣を睨んだ。
「もうお前に用はない。だが、せめてもの情けとして、お前の記憶をすべて消してやろう。それでいいだろ? 究竟よ」
「ああ……」
間宮が蒼衣の記憶を消すことに、究竟は反対しなかった。
「嫌……究竟様のことを忘れるなんて嫌!」
間宮は蒼衣の瞳をじっと睨んで記憶を忘れさせる呪術をかけようとしたが、すっと睨むのをやめてしまった。
「そうだ、さっきお前は自分がどこから来たか知りたいとか言っていたな。それなら最後、記憶を消す前に教えてやろう。お前は……」
「やめてくれ!」
磔台に拘束されたままの究竟が叫ぶ。
「頼む、お願いだ、もうやめてくれ……俺はなんでもする。だからもうこれ以上、この子を冥い宿命で傷つけないでくれ……」
どういうこと? 二人は何を言っているの?
究竟の懇願を無視して間宮は笑いながら言った。
「蒼衣よ、お前はな、わしが祀られた祠に毎日熱心に参拝に来ていた、わしの家臣の末裔の夫婦の一人息子なんだよ」
蒼衣は蒼白した。自分の両親が間宮の家臣の末裔だったとは……。
「そういやあ身籠っている間ずっと夫婦二人して、健康で元気な赤ん坊が生まれるようにと祈ってたなあ。だからお前に張った結界の印を、母親が作った産着に縫い付けてあった背守りと同じ六芒星にしてやったんだ。有難く思え」
なんということだ!! 生まれたときから、いや、生まれる前から、自分の人生はすべてこの男のせいで狂わされていたのだ!
「僕のお父さんとお母さんは今、どこでどうしてるの?」
「会いたいか? だが、もう会えんぞ。20年前、お前を取り戻しに来れないよう、わしが切り刻んで惨殺してやったからな」
思考が停止する。手に持ったままの鉄剣が熱を持った気がした。
「……僕の……お父さんと……お母さんを……殺したの?」
「ああ、そうだ。どうだ? 出生の秘密とやらが聞けて満足したか? しかしこれから全部記憶を消して忘れさせてやるからな! ぶはははは!」
間宮が狂ったように高笑いしたときだった。
蒼衣の持っていた鉄剣が間違いなく熱を持った。
「許せない」
力を込めて握りしめる。
「ふん、そんな小さな鉄剣ではわしは殺せんぞ」
「許せない……究竟様や僕だけじゃない。琥太郎さんや百合江お嬢様まで巻き込んで……そして僕の両親まで殺していたなんて……絶対に許せない」
鉄剣が鉄が高熱で溶かされるときのように紅い光を放った。その光は炎となっていき、蒼衣の身体をも炎で包みだした。
「その鉄剣はまさか!!?」
究竟が驚愕《きょうがく》しながら炎に包まれていく蒼衣を見つめる。
「嫌……行かないで、究竟様」
究竟は切ない顔をしたあと、微笑んだ。
「はじめて会った時からずっと好きだったよ。さよなら、俺の蒼衣」
そう言って究竟は蒼衣に口づけして蒼衣を岸辺へと促した。
あぶく立つ血の池から出て岸辺に上がった蒼衣は、岸辺に落としたままだった鉄剣を拾った。金縛りに遭って動けない琥太郎を蒼衣が抱き上げたのを見届けると、究竟は血の池の中を歩いて間宮のいる舟へと乗り込んだ。
間宮は待ってましたとばかりに究竟の両手両足を十字の磔台に拘束した。磔られた究竟には拘束具を解く神通力も、いや、ただの人間としての体力さえも残っていなかった。
無抵抗な究竟の唇を間宮が奪う。目を開いたまま顔色ひとつ変えることなく、しつこい間宮の深い口づけにも究竟は身動ぎひとつしなかった。
蒼衣は涙を流しながらそれを見つめていた。間宮が唇を離すと究竟は唾を吐いた。
「ふん、強がっていられるのも今のうちだ。そのうちお前は、わしの腕の中で力尽きて死んでいくのだ」
耐えられなくなった蒼衣は大声で叫んだ。
「どうして!? どうしてこんな酷いことができるの!?」
蒼衣を振り返った間宮は嘲笑うかのように言った。
「どうしてかって? まだまだこれからが本丸だぞ。わしがなぜ究竟の神通力をお前の中に封印したと思う? それはな、究竟が己の命ともいうべき神通力とお前を天秤にかけた時、どちらを選ぶのか見物するためだ」
「そんな……」
「神通力を選ぶならお前をわしに差し出すことになる。お前を選べば神通力を失うことになる。結果、究竟はお前を選びわしに負けを認めた」
「間宮、もう何も言うな。この子は関係ない」
制する究竟に振り向いた間宮が、究竟に唾がかかりそうなほど顔を近付けて大声で言う。
「そうだ! 蒼衣なんて関係ない! 究竟よ、わしの本当の目的がわかるか? それはな、お前に愛する者を手に入れられない苦しみを味わわせることだ! わしと同じ苦しみをな!」
間宮の究竟に対する執着に蒼衣は恐怖を覚えた。この男は常軌を逸している。
それでも究竟は取り乱すことなく間宮を無表情で見ていた。
くるりと向きを変えた間宮は、恐怖で震えが止まらない蒼衣を睨んだ。
「もうお前に用はない。だが、せめてもの情けとして、お前の記憶をすべて消してやろう。それでいいだろ? 究竟よ」
「ああ……」
間宮が蒼衣の記憶を消すことに、究竟は反対しなかった。
「嫌……究竟様のことを忘れるなんて嫌!」
間宮は蒼衣の瞳をじっと睨んで記憶を忘れさせる呪術をかけようとしたが、すっと睨むのをやめてしまった。
「そうだ、さっきお前は自分がどこから来たか知りたいとか言っていたな。それなら最後、記憶を消す前に教えてやろう。お前は……」
「やめてくれ!」
磔台に拘束されたままの究竟が叫ぶ。
「頼む、お願いだ、もうやめてくれ……俺はなんでもする。だからもうこれ以上、この子を冥い宿命で傷つけないでくれ……」
どういうこと? 二人は何を言っているの?
究竟の懇願を無視して間宮は笑いながら言った。
「蒼衣よ、お前はな、わしが祀られた祠に毎日熱心に参拝に来ていた、わしの家臣の末裔の夫婦の一人息子なんだよ」
蒼衣は蒼白した。自分の両親が間宮の家臣の末裔だったとは……。
「そういやあ身籠っている間ずっと夫婦二人して、健康で元気な赤ん坊が生まれるようにと祈ってたなあ。だからお前に張った結界の印を、母親が作った産着に縫い付けてあった背守りと同じ六芒星にしてやったんだ。有難く思え」
なんということだ!! 生まれたときから、いや、生まれる前から、自分の人生はすべてこの男のせいで狂わされていたのだ!
「僕のお父さんとお母さんは今、どこでどうしてるの?」
「会いたいか? だが、もう会えんぞ。20年前、お前を取り戻しに来れないよう、わしが切り刻んで惨殺してやったからな」
思考が停止する。手に持ったままの鉄剣が熱を持った気がした。
「……僕の……お父さんと……お母さんを……殺したの?」
「ああ、そうだ。どうだ? 出生の秘密とやらが聞けて満足したか? しかしこれから全部記憶を消して忘れさせてやるからな! ぶはははは!」
間宮が狂ったように高笑いしたときだった。
蒼衣の持っていた鉄剣が間違いなく熱を持った。
「許せない」
力を込めて握りしめる。
「ふん、そんな小さな鉄剣ではわしは殺せんぞ」
「許せない……究竟様や僕だけじゃない。琥太郎さんや百合江お嬢様まで巻き込んで……そして僕の両親まで殺していたなんて……絶対に許せない」
鉄剣が鉄が高熱で溶かされるときのように紅い光を放った。その光は炎となっていき、蒼衣の身体をも炎で包みだした。
「その鉄剣はまさか!!?」
究竟が驚愕《きょうがく》しながら炎に包まれていく蒼衣を見つめる。
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