28 / 30
28 復活
しおりを挟む
間宮は炎に包まれている蒼衣を見て驚いた。
「おい、どうしたんだその炎は!? お前、熱くないのか?」
「これは僕の怒りの炎だ。僕をこんなに怒らせたのは貴方がはじめてだ」
「ふん、お前ごときの怒りの炎が何だ。まだわからないのか? これはすべて、わしが究竟を愛している証だ!」
「貴方の愛など愛ではない。そんなのはただの逆恨みだ。愛する人を傷つけ悦んでいる貴方に、愛を語る資格などない」
「ほう、ならどうするんだ? さっきも言っただろ? 炎を纏ったところでお前ごときにわしは殺せん」
「そうだ、貴方は殺せない。でも卑怯な貴方は、まだ僕に嘘をついていた」
「何?」
「貴方はさっき、僕が死んだら究竟様の神通力も消滅すると言ったが、それは嘘だ。卑怯で残忍な貴方が僕を殺さずに記憶を消すだけに留める理由は、ただひとつ」
「よすんだ蒼衣! お願いだからやめてくれ!」
究竟が叫んで止めようとするが蒼衣は止まらない。
「究竟様、あとは頼みますね。よく見ていろ間宮! これは、僕を想いながら死んでいった、両親の仇だ!!」
蒼衣は鉄剣を頭上高く振り上げると、自分の背中の六芒星の印目掛けて一気に深く突き刺した。
「蒼衣――!!!!!」
磔にされたまま究竟が泣き叫ぶ。
蒼衣の背中から血飛沫が舞い飛び、鉄剣が突き刺さったままの六芒星の印からはどくどくと血が湧水のように湧き出ては背中を流れ落ちていく。
と同時に、蒼衣の全身から直視できないほどの眩い光が放たれ、間宮の暗黒の世界がその強烈な光で真っ白になった。
目が焼かれそうなほど眩しい光を避けるために腕で目を覆った間宮が叫ぶ。
「しまった! 結界が破られた!」
強烈な光が消えて目を開いた間宮は、怖ろしい殺気を背後から感じた。
恐る恐る振り返るとそこには、磔台や拘束具など疾うに破壊して神々しいほど美しく自信と力に満ち溢れた究竟が立っていた。
「200年ぶりに力が漲ったわ」
蒼衣が自ら命を絶って六芒星の印の結界を破ったことにより、蒼衣の中に封印されていた究竟の神通力が解放されて究竟のもとに戻ったのだ。
究竟に睨まれカッと目から光を放たれた間宮は動けなくなりその場で固まった。
究竟は岸辺で大量の血を流し倒れている蒼衣を抱き上げたが、すでに心音も呼吸も停止していた。
琥太郎をハチワレ猫から人の姿に戻し蒼衣を託すと、究竟は固まって身動きできない間宮に対峙した。
「さて、どう料理してやるか。いや、もう一分一秒たりともお前の顔など見たくない」
「ゆ、赦してくれ、究竟。これはすべてわしがお前を愛してしまったせいだ。お前がわしをほんの少しでも愛してくれたなら、こんなことにはならなかった」
「蒼衣を殺しさえしなければ、赦してやったものを」
「こいつは自分で死を選んだんだ」
「まだそんなことを言うのか。その汚い口には反吐が出る」
究竟は両手を合わせて口元を動かし呪文を唱えると、最後に片手を天に突き上げた。
すると間宮のおぞましい精神世界が崩れ、元の結城の屋敷の座敷部屋に戻ったかと思いきや、辺り一面黒い雲に覆われゴロゴロと雷鳴が鳴り始めた。
ぽつりぽつりと降り出した雨が俄かに激しい雷雨となり、すぐ頭上で稲妻と太鼓を打ち鳴らすような雷鳴が轟いた。
その暴風雨により屋敷の屋根や壁や襖などはすべて破壊され、ほとんど野外同然となった座敷に現れたのは、雷雲に乗り雷鼓を背負った雷神だった。
「誰に呼び出されたかと思いきや、究竟じゃないか。200年も沙汰なしとは薄情よのう」
「ちょっと野暮用でな。無沙汰ですまん」
「まあいい。で、何の用だ?」
「この男を雷で一撃してやってくれ。髑髏ごと」
究竟は間宮の懐から髑髏を取り出すと雷神に投げ渡した。雷神が間宮を一睨みする。
「ひいいいい!」
睨まれて悲鳴をあげた間宮に、雷神はニヤリと笑った。
「ちょうどよいわ。とある生意気な悪大名の天守閣に、雷を一撃落としてやろうと思っていたところ。こいつをその天守閣の天辺に置いて一緒に撃ってやろう」
「頼んだ。礼はする」
「極上の酒を用意しとけ。じゃあな」
「ぎゃああああ―!」
喚き叫ぶ間宮を怖ろしい形相で掴んだ雷神は、激しく雷鼓を打ち鳴らし雷鳴を轟かせながら雷雲に乗って天の彼方へと消えていった。
それを見送ると究竟は琥太郎の腕の中で息途絶えている蒼衣の元へ駆け寄り、自分の胸の中へと抱き抱えた。
六芒星の印から夥しい血を流し、力なくがくんと頭も両手足も下にぶらさがってしまっている冷たい蒼衣の頬に、究竟は自分の頬を寄せて涙した。
体温も心音もない。いくら究竟が神仙と雖も、死人を蘇らすことは領域外だった。
蒼衣を抱き抱えたまま抑えきれずに声を上げて泣く究竟を、琥太郎は見守ることしかできなかった。
究竟が冷たい蒼衣の唇に、最後の口づけをした時だった。
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ」
翁の笑い声が天から降ってきた。
「おい、どうしたんだその炎は!? お前、熱くないのか?」
「これは僕の怒りの炎だ。僕をこんなに怒らせたのは貴方がはじめてだ」
「ふん、お前ごときの怒りの炎が何だ。まだわからないのか? これはすべて、わしが究竟を愛している証だ!」
「貴方の愛など愛ではない。そんなのはただの逆恨みだ。愛する人を傷つけ悦んでいる貴方に、愛を語る資格などない」
「ほう、ならどうするんだ? さっきも言っただろ? 炎を纏ったところでお前ごときにわしは殺せん」
「そうだ、貴方は殺せない。でも卑怯な貴方は、まだ僕に嘘をついていた」
「何?」
「貴方はさっき、僕が死んだら究竟様の神通力も消滅すると言ったが、それは嘘だ。卑怯で残忍な貴方が僕を殺さずに記憶を消すだけに留める理由は、ただひとつ」
「よすんだ蒼衣! お願いだからやめてくれ!」
究竟が叫んで止めようとするが蒼衣は止まらない。
「究竟様、あとは頼みますね。よく見ていろ間宮! これは、僕を想いながら死んでいった、両親の仇だ!!」
蒼衣は鉄剣を頭上高く振り上げると、自分の背中の六芒星の印目掛けて一気に深く突き刺した。
「蒼衣――!!!!!」
磔にされたまま究竟が泣き叫ぶ。
蒼衣の背中から血飛沫が舞い飛び、鉄剣が突き刺さったままの六芒星の印からはどくどくと血が湧水のように湧き出ては背中を流れ落ちていく。
と同時に、蒼衣の全身から直視できないほどの眩い光が放たれ、間宮の暗黒の世界がその強烈な光で真っ白になった。
目が焼かれそうなほど眩しい光を避けるために腕で目を覆った間宮が叫ぶ。
「しまった! 結界が破られた!」
強烈な光が消えて目を開いた間宮は、怖ろしい殺気を背後から感じた。
恐る恐る振り返るとそこには、磔台や拘束具など疾うに破壊して神々しいほど美しく自信と力に満ち溢れた究竟が立っていた。
「200年ぶりに力が漲ったわ」
蒼衣が自ら命を絶って六芒星の印の結界を破ったことにより、蒼衣の中に封印されていた究竟の神通力が解放されて究竟のもとに戻ったのだ。
究竟に睨まれカッと目から光を放たれた間宮は動けなくなりその場で固まった。
究竟は岸辺で大量の血を流し倒れている蒼衣を抱き上げたが、すでに心音も呼吸も停止していた。
琥太郎をハチワレ猫から人の姿に戻し蒼衣を託すと、究竟は固まって身動きできない間宮に対峙した。
「さて、どう料理してやるか。いや、もう一分一秒たりともお前の顔など見たくない」
「ゆ、赦してくれ、究竟。これはすべてわしがお前を愛してしまったせいだ。お前がわしをほんの少しでも愛してくれたなら、こんなことにはならなかった」
「蒼衣を殺しさえしなければ、赦してやったものを」
「こいつは自分で死を選んだんだ」
「まだそんなことを言うのか。その汚い口には反吐が出る」
究竟は両手を合わせて口元を動かし呪文を唱えると、最後に片手を天に突き上げた。
すると間宮のおぞましい精神世界が崩れ、元の結城の屋敷の座敷部屋に戻ったかと思いきや、辺り一面黒い雲に覆われゴロゴロと雷鳴が鳴り始めた。
ぽつりぽつりと降り出した雨が俄かに激しい雷雨となり、すぐ頭上で稲妻と太鼓を打ち鳴らすような雷鳴が轟いた。
その暴風雨により屋敷の屋根や壁や襖などはすべて破壊され、ほとんど野外同然となった座敷に現れたのは、雷雲に乗り雷鼓を背負った雷神だった。
「誰に呼び出されたかと思いきや、究竟じゃないか。200年も沙汰なしとは薄情よのう」
「ちょっと野暮用でな。無沙汰ですまん」
「まあいい。で、何の用だ?」
「この男を雷で一撃してやってくれ。髑髏ごと」
究竟は間宮の懐から髑髏を取り出すと雷神に投げ渡した。雷神が間宮を一睨みする。
「ひいいいい!」
睨まれて悲鳴をあげた間宮に、雷神はニヤリと笑った。
「ちょうどよいわ。とある生意気な悪大名の天守閣に、雷を一撃落としてやろうと思っていたところ。こいつをその天守閣の天辺に置いて一緒に撃ってやろう」
「頼んだ。礼はする」
「極上の酒を用意しとけ。じゃあな」
「ぎゃああああ―!」
喚き叫ぶ間宮を怖ろしい形相で掴んだ雷神は、激しく雷鼓を打ち鳴らし雷鳴を轟かせながら雷雲に乗って天の彼方へと消えていった。
それを見送ると究竟は琥太郎の腕の中で息途絶えている蒼衣の元へ駆け寄り、自分の胸の中へと抱き抱えた。
六芒星の印から夥しい血を流し、力なくがくんと頭も両手足も下にぶらさがってしまっている冷たい蒼衣の頬に、究竟は自分の頬を寄せて涙した。
体温も心音もない。いくら究竟が神仙と雖も、死人を蘇らすことは領域外だった。
蒼衣を抱き抱えたまま抑えきれずに声を上げて泣く究竟を、琥太郎は見守ることしかできなかった。
究竟が冷たい蒼衣の唇に、最後の口づけをした時だった。
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ」
翁の笑い声が天から降ってきた。
0
あなたにおすすめの小説
平凡高校生の俺にイケメンアイドルが365回告白してくる理由
スノウマン(ユッキー)
BL
高校三年生の橘颯真はイケメンアイドル星宮光に毎日欠かさず告白されている。男同士とのこともあり、毎回断る颯真だが、一年という時間が彼らの関係を少しずつ変えていく。
どうして星宮は颯真に毎日告白するのか、そして彼らの恋の行方は?
入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?
monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。
そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。
主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。
※今回の表紙はAI生成です
※小説家になろうにも公開してます
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
「大人扱いしていい?」〜純情当主、執務室で策士な従兄の『相性確認』にハメられる〜
中山(ほ)
BL
「ルイン、少し口開けてみて」
仕事終わりの静かな執務室。
差し入れの食事と、ポーションの瓶。
信頼していた従兄のトロンに誘われるまま、
ルインは「大人の相性確認」を始めることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる