Sinclair

藍川 かの

文字の大きさ
1 / 4
シーズン1

プロローグ

しおりを挟む
その日、裏社会を動かす者たちは次々に処刑された。それだけでなく、それらに関わる親戚や友人らもまとめて殺されていった。

「……」

とある所に、その様子を正気が無い死んだ魚のような目で見つめている少女がいた。

この少女の名をクレア・ウォーカーという。

クレアの兄、シン・ウォーカーはクレアにとって自慢の兄であった。まさに裏社会のエリートである。忙しくて家にはなかなか顔を見せてくれなかったが、クレアはシンのことが大好きであった。小さい頃から一緒に、裏社会の見習い研究生として頑張ってきたのだ。

しかし。

今、その兄のシンが処刑されるところなのである。

「……」

クレアはパーカーに身を包んで、処刑の様を騒ぎ立てる民衆の隅にひっそりといた。クレアもその素性が明かされたあかつきには、シンと同じように処刑台に立たされてしまう。なので、ひっそりと影から兄の最後の姿を見守ることしかできなかったのだ。

何故、シンは殺されなければならないのだろう。

そもそもこの騒ぎの原因はシンではない。なのに……。

クレアの胸は怒りと悲しみで熱く燃え上がっていた。胃が煮えたぎっている。

だが、このままではシンどころか、クレアや、その周りのクレアと同じ境遇にいる見習い研究生達まで殺されてしまう。クレアの力ではまだ、大人しく見守ることしかできなかった。

そして、クレアは兄の最期を見届けることになった。

シンとクレアの目が合った。クレアは涙が出そうになるのを堪えて、最後のシンを見届けることにした。これが兄に対してできる、最低限のことだった。変に泣いたり暴動を起こしたりすれば、余計に兄に迷惑をかけることになってしまう。クレアはそう考えたのだった。

最期に何か言い残すことは無いか、と処刑執行人が民衆にも聞こえるようにシンに聞いた。

シンは最期に、こう、言った。

「歴史は、繰り返される__」

シンの首に斧が振りかざされた。

わあああああぁぁぁ……っと、民衆が腕を振り上げ、歓声を上げた。気づいたら、シンは処刑されてしまったのだ。クレアは宙を見つめることしかできなかった。目が無意識に真っ赤になっていく。頭の中は白くチカチカし始め、体もふらついている。

__歴史は繰り返される……?

シンは、何を伝えたかったのだろうか。

だけど、クレアは今からすべきことは決まっていた。

クレアは仲間の見習い研究生たちの面々を思い浮かべてみた。どれも、大切な仲間だった。


これからは、兄の意志を継いで自分が仲間達を守らなくては。仲間達を帝国の目から逃しつつ、見習い研究生としての学びを貫き通すのだ。


少女は熱く胸に誓った。






__だが結局、少女は死ぬまで「歴史は繰り返される」と言った兄の謎の遺言の意味を知ることは無かったのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...