俺の物語には主人公だけがいない

モコ

文字の大きさ
17 / 179
第一章 人生が始まった日

一日の終わり

しおりを挟む
2人でカレーを食べながら、拓哉は先ほどの2人の友人のことを簡単に説明した。
明日会うことになるわけだし、ある程度の事前情報は必要と思ったからだ。
ノキこと野村英樹は一番仲の良い友人で、当たり障りのない性格で金持ちだということなど。
dadaこと岡村唯志は今は少し縁が遠くなっていた、正直明日何を話すつもりなのか想像もつかない・・・など。
拓哉にとってはかなり久しぶりの自宅で2人の食事だった。
普段一人で黙々と食べるだけなので、これだけでも楽しかった。

食事も済ませ、光に使わなくてかつ割と綺麗なTシャツを渡した。
光には着替えたり、PCでもいじってもらっておいて、今度は自分がシャワーを浴びることにした。
「ごゆっくり~」と光が笑顔で送り出してくれたのが嬉しかった。

拓哉はシャワーを浴びながら考えていた。
光を未来へ帰すと約束したが、そんなことが自分に出来るのか。
そもそも帰してしまって良いのか。
少なくとも今日は楽しかったし、既に光に好意があるのも確かだ。
帰って欲しくないと本音では思っている。
でも協力しないならこの関係はここまでだろう。
(俺はどうしたらいいんだ・・・)
結局何の答えも出ないままシャワーを終えた。

シャワーを終えた後は、2人とも疲れ果てていたためもう寝ようということになった。
拓哉はどっちがどこで寝るか悩んだが、光がソファーで良いと押すので
拓哉は寝室、光はソファーで寝ることになった。

拓哉は寝室へと向かい、ベッドに入って今日の出来事を改めて思い返した。
梅田を歩いてたら部長が不倫してて、光って女の子が現れて、その女の子が未来人で、家に泊まる事になって・・・
普段何のイベントも起きない拓哉の生活からしたら、どれ一つをとっても大事件だ。
それが1日でこうも立て続けに起きたので、未だに少し興奮状態で、疲れているのにすぐ眠れそうになかった。

(あ、そう言えば今日イヌ娘やってないや)
ふと普段のルーティンワークなスマホゲーのことを思い出した。
イヌ娘とは、最近流行りのスマホゲームで擬人化した色んな犬種を育てるゲームだ。
いつもなら時間があればぽちぽちと遊んでいて、スタミナ(=ゲームをするためのポイントの様なもの)が余る事なんてなかった。

(とりあえずログインとデイリー分だけやるか)
この手のゲームの卑怯でもあり、上手でもある部分だが、毎日ある程度のミッションが課せられる。
たいていの場合そこまで時間のかかるものではないが、とにかく毎日続けさせようとする。
そして、1日でも逃したらもったいないという錯覚に陥らせて、ユーザーを離さない様に工夫されている。
拓哉も例に漏れず、なんとなくもったいない気がして惰性で続けてしまっている。
だがこの日は疲れていたので、ログインして育成しようとしたところで寝落ちしてしまった。

一方光の方は、リビングのソファーの上で今日の出来事を思い返していた。

結城光。大学生。本人は二十歳と言っているが、彼女は八月生まれだ。
今現在の月日は六月。この場合、次の誕生日で二十一歳になるのか、二十歳のやり直しになるのか・・・
前例がないのでよくわからない。
そう、光は確かに2120年の十一月にいたはずだった。
彼女が拓哉に話した話は作り話でもなんでもなく、自分の知っていることを素直に話していた。

その日、光は配達のバイトをしていた。
元々自分が請けていた仕事ではなかったが、友人からの頼みで代理でやっていた。
正規の様なバイトではなく、個人の頼まれごとの様なバイトだ。
内容はとある本を店から受け取り配達する。
現代でもありがちなバイトだったが、光のいる時代では少しいわくつきのバイトだった。

光の時代では配達などの仕事はドローンがこなす。
有人で対応するということは、荷物だった。
だから光はあまり乗り気ではなかったが、友人の頼みで仕方なく引き受けた。

配達物は本だったが、この本が問題だった。
そもそも光の時代では本は電子書籍が主流になっていた。
紙媒体もなくはないが、数としては減っていた。
特に今回の依頼物は既に販売中止されているどころか、政府から販売を禁止されている曰くつきの本だった。
とはいえ、持っているだけで逮捕されるような代物でもなく、閲覧に制限があり既刊分は処分されてはいるものの、完全な非合法物でもなかった。
それゆえに光もしぶしぶながら引き受けた。

店の場所は秋葉原。
かつては電気街として栄えていた辺りの一角にある古書店から品物を受け取り、とあるマンションまで運ぶ。
距離があるわけでもないし、曰くつきの品物でなければ簡単な仕事だった。

目的の古書店に行き、荷物を受け取る。
そしてマンションに向かうために駅に帰る途中には起こった。

光は曰くつきのものを持っていることもあって、少し速足で歩いていた。
一瞬、世界が消えた。
正確には拓哉が見たのと同じ、激しい光に包まれて前が見えなくなっていたのだった。
光は直感的に何か起こった、危ないと感じ、急いで駆け出そうとした。
気が付いたら目の前に男がいて、ぶつかって尻餅をついていた。

「いったーい・・・」
目の前では若い男が混乱した様子でキョドっていた。
どうやらぶつかってしまったようだった。

「あ、大丈夫ですか!?」

目の前の男(=拓哉)に話しかけた。

「え、あ、えっと・・・はい」
目の前の男は歯切れ悪く答えた。

こうして拓哉と出会うことになった。
その後は拓哉と別れ、駅に行き東京に帰ろうとしたが、何故か電子マネーが使えず、駅員に聞いても話があまり通じない。
困り果てた光は、さっきの場所に行けば何かわかるかもしれないと思い立ち、元の場所に帰る事にした。
さっき色々と教えてくれた男の人がまだいたら話も聞けるかもしれない。
そう思って元いた場所に戻る事にしたのだった。

そして色々とあり、今に至る。

「ほんと、色々あったなぁ・・・まさか過去に来ちゃうなんて・・・」
光はつぶやいた。
「あたしちゃんと帰れるのかなぁ」
光は少し不安になったが、元々ポジティブな性格な光だ。
「まぁなんとかなるか!」
すぐに切り替え、そしてそのまま寝てしまった。

こうして長かった1日が終わっていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。 本宮 のい。新社会人1年目。 永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。 なんだけど。 青井 奏。 高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、 和泉 碧。 初恋の相手らしき人も現れた。 幸せの青い鳥は一体どこに。 【完結】 ありがとうございました‼︎

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい

みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。 それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。 願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。 スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。 ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。 ※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

処理中です...