俺の物語には主人公だけがいない

モコ

文字の大きさ
50 / 179
第三章 日常時々非日常

拓哉の作戦

しおりを挟む
週末の土曜日。
この週は特に代わり映えはなく、ただただ時間だけ経過した拓也と光。
(この間に朝田と川俣の不倫が公になり、修羅場となっていたが…)
明日は間宮との遠征…という前日。
拓也と光には少しだけ重要なイベントがあった。

--

[少し相談があるんだけど・・・良い?]

--

数日前の金曜日。
拓哉はskypoで宮田と会話していた。

[相談?珍しいな。何?]
[金なら貸さねーよ?w]

[そういうのではないんだけど・・・]

---
そして拓哉は現在の状況をある程度宮田にした。
未来人と言うことは伏せたが、ある程度状況を話さないと話にならない。
とりあえず光は身元不明住所不定で保護してるって体だ。

だが、元々人と話すのが得意ではない拓哉。
更に言うと良い意味でも悪い意味でも実直であり、嘘を吐いた経験も少ない。
嘘を吐くというのは簡単な事じゃない。
嘘を吐くのにもセンスと思慮深さ、そして経験がいる。
それらすべてが備わってない拓哉の『作り話』は当然綻びも多い。

ざっくりと説明した内容だと、光は住所不定無職戸籍無しの状態で拓哉に保護されている。
ついでに今は未来に行く方法を探しているといった感じだ。
何ともお粗末なストーリである。

--
[なるー。なんとなくだが把握したぜ。]
宮田の返事は何とも軽かった。

[何とかなるかな?]

[うーん、わからんwとりあえずだけど、今度その子と会わせてよ。会ってみないと何とも言えないしw]
またか・・・と拓哉は思った。
唯志の時も似たような感じだったっけ。
だが拓哉は気づいていないが、唯志の場合と今回はわけが違う。
唯志は色々と考えた上で自分の目で確かめたかった。
だが、宮田はどこまで考えているのか謎だ。

[うーん、会って何か解決するなら・・・]
[解決も何も、会ってみて話してみないとわからないだろ?とりあえず会わせてよ]
どうやら宮田は光と会うの最優先の様だ。

「光ちゃん。この会話相手の宮田ってやつが光ちゃんと会いたいみたいなんだけど・・・」
「そうなの?私は良いんだけど、未来人とか伏せてるんだよね?それで良い案出てくるかな?」
「それは会ってみないとわからない・・・かな?とりあえず協力者は多いに越したことないし、来週の土曜日とかでどうかな?」
「うん、それはタク君に任せるけど・・・本当に唯志君に相談しなくていいんだよね?」
「大丈夫、俺に任せて!」

--
先週の金曜日にこの様なやり取りがあり、現在に至る。
拓哉としては光の情報は隠しつつ、宮田の協力と人脈、知識などを得るというのが目的だ。
拓哉としては上手く行けば一気に唯志を出し抜ける・・・などと色気も出ているかもしれない。

正直なところ、この拓哉の考えは甘い。
自分の目的がどれほど目的になっているか気づいていないからだ。
交渉と言うのは相手にもある程度メリットを与えないと上手く行くことは無い。
圧倒的に優位な立場にいれば別だが、現状で宮田を一方的に利用できるほどの優位性は拓哉には無い。
だが唯志への対抗心から、自分も交渉で上手く立ち回ってみせると功を焦りすぎているのは明らかだ。
光に良いところを見せたかったのだろう。

・・・だが強いて言えば、拓哉たちがやろうとしているという奇跡を成就する為には、この程度の事は当たり前の様に出来ないといけないのかもしれない。
拓哉がそれを意識しているか否かは別として・・・

--待ち合わせ時間の10分前。16時50分。阪急梅田駅改札を降りた某大型書店前の待ち合わせ場所に拓哉と光はいた。
例によって遅刻上等で行動しようとする拓哉に、光が尻を叩いて早めの行動をとっていた。

17時3分。待ち合わせ時間に3分遅れで宮田が現れた。
拓哉ほどではないが、宮田も時間にはルーズな方だった。
(平気で三十分遅れる拓哉とは大違いだが・・・)

「おー、吉田っち久しぶりー」
そう言って宮田は気さくに声をかけてきた。
拓哉も社交辞令で挨拶を返す。どうやら拓哉は宮田には『吉田っち』と呼ばれている様だ。
「で、そっちが噂の子?・・・めっちゃ可愛いじゃん!」
宮田の表情が見るからに明るくなり、テンションが跳ね上がっていた。
「えっと・・・結城光って言います。」
当の光は少し引いていた。

ここに来るにあたって光はある程度拓哉が話した情報を聞いてはいる。
前述したのことを。
それゆえに光も少し不安があった。
今日はを演じなければならない。
唯志の様にどうしろと明確に指示があるわけでもなく、ただただそのキャラを演じる・・・
根が素直で嘘を吐けない光には少し・・・いや、かなり不安があった。

「で、話をってことで集まったけど、この後どうするの?」
拓哉は宮田に今日のプランを聞いてみた。
「いやーあんまり考えてない。その辺の適当な居酒屋で良くない?」
・・・案の定の答えだ。
言ってることは唯志と近いんだが、明確に違う。
こいつは明らかに考え無しで動いている。
それは拓哉も重々承知していた。
しょうがなしに宮田に誘われるがまま少し梅田を彷徨い、本当に適当な居酒屋に入った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。 本宮 のい。新社会人1年目。 永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。 なんだけど。 青井 奏。 高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、 和泉 碧。 初恋の相手らしき人も現れた。 幸せの青い鳥は一体どこに。 【完結】 ありがとうございました‼︎

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい

みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。 それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。 願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。 スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。 ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。 ※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

処理中です...