俺の物語には主人公だけがいない

モコ

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第四章 それぞれの選択

side Osaka1 -料理-

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「へぇ、家庭裁判所ってこんな感じなんだ~。」
莉緒があちこちをキョロキョロと見渡している。

「まぁ普通は縁が無いからな。俺もこの前来た時が初めてだったし。」
と唯志が言う。

「私に至ってはこの時代のもの全部新鮮だしねー。」
と光も同調して続けた。

日付は少し遡って八月十二日。
拓哉が帰省した初日、同窓会に参加していた日だ。

元々夏休みで暇にしていた莉緒だったが、今日から唯志も夏休み。
毎日が夏休みのような存在の光。
本日はこの三人で家庭裁判所に来ていた。
目的は当然光の就籍手続きの続きだ。

今日の目的は光の面談と指紋採取などを行うらしい。
まだ面談は一人では難しい(という体で)唯志たちも付き添いで来て良いと許可を貰っていた。
申し訳ないと思いつつも、唯志や莉緒がいた方が心強いのでついて来てもらうことにした。

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--
「つっかれたー!!」
光は家庭裁判所を出ると大きめな声を出した。

「お疲れ様、ひかりん」
莉緒が苦笑しながら労った。
「今回も時間かかったなー。」
面談と称されたよくわからない事情聴取他は約二時間近く行われた。
「ううー、事務的過ぎて肩がこるよ~。」
光が落としながら疲れたように言う。
「しゃーないよ、実際あっちは事務作業だし。」
莉緒は逆に楽しそうにしている。

「それよりひかりん、今日は泊まって行くんだろ?何が食べたい?寿司?焼肉?」
唯志が光に問いかける。
「え、そんな、悪いよ。」
「良いって良いって。一仕事終えたし、折角だから甘えなよー。」
と、何故か莉緒が更に追い打ちをかけた。
「お前、自分が良い物食べたいだけだろ?」
「おうよ!悪いか!?」
悪びれる様子は無さそうだ。
この辺がこの二人の仲の良さを象徴している。

「まぁ・・・莉緒がこんなだから、遠慮せず何でも好きなもの言ってくれ。」
唯志はやれやれといった感じで続けた。
「そうだよ、折角だからわがまま言っていいんだぜ?」
相変わらず何故か莉緒が追い打ちをかける。
恐らく準備するのも支払うのも唯志なんだろうが、莉緒は遠慮などしない。

「うーんと。じゃあ・・・、唯志君料理できるんだよね?」
「ん?人並みには。」
「莉緒ちゃんは?」
「あー、あたしはからっきし。そういうのは唯志の担当だから。」
「おい。」
唯志が莉緒にツッコんだ。

「なに?唯志の手料理食べたいの?」
莉緒がニヤニヤ言っている。

「えっと、その~、料理教えてほしいなと思って。」

----
唯志の部屋。
台所。

「はい、と言うわけでひかりんに料理を教えようのコーナーなわけですが、講師の唯志さん本日の料理は?」
「何が始まったんだよ。材料一緒に買ってるんだからわかるだろ。」
「えっと、カレーだよねこれ。ルーあるし。」
牛肉、たまねぎ、ニンジン、じゃがいも、そしてカレーのルー。
まごうことなくカレーが出来るだろう。

「てかなんでカレー?カレーくらいなら未来でも調理実習とかで習ったんじゃない?」
と莉緒は疑問を光に投げかけた。
「うん、確かに小学生の頃にやったと思う。」
「だよね。なら他のやつ教えた方が良いんじゃないの?」
莉緒は唯志のチョイスに疑問があった様だ。

「んじゃ莉緒はカレー作れるか?」
わーわー言ってくる莉緒に唯志が問いかける。
「んー?わかんないけど、適当に炒めて煮て、ルー入れたら出来るんじゃない?」
光もうんうん頷いている。

「だな。教えてもらった内容は覚えてないけど、そんな感じで適当でもある程度出来ちまう。」
「だよね。じゃあなんで?」
「でもカレーってのはちゃんとやると意外と手間なんだよ。料理の基本覚えるにはちょうど良い。」
そう言いながら唯志は淡々と準備をしている。
どこから出したのか葉っぱの様なものも用意されている。

「唯志君、この葉っぱ何?」
「ローリエ。後で使う。」
光には意味が分からなかったが、とりあえず何も言わずふんふん頷いていた。

「カレーってな、意外と応用が利くんだよ。ルーを変えればシチューにもなるし、調味料変えれば肉じゃがにもなる。最初にちゃんと覚えておいて損は無い。」
そう言ってる間にまな板やら包丁やらフライパンや鍋。
ひと通りの準備が出来てる雰囲気だ。

「さて始めるぞ。最初はジャガイモの皮をむいて、面取りして、あく抜きして--」
「え?え?面取り?あく抜き?」
「出たー、唯志の無駄なこだわり―。」
「無駄じゃねーって。意外と違いが出るんだよ。」

こうして唯志自己流のカレー講座が始まった。

----
--

「後は弱火でしばらく煮とけば出来るから。」
「了解です。確かに意外と手間だったね・・・。」
光は慣れない作業に少し疲れた様だ。

「つーか唯志があく抜きとか、下味つけてとかこだわるから手間なだけじゃん?」
莉緒はもう既に作業は見ておらず、横でスマホをいじって遊んでいた。

「でも、おかげさまでなんか料理した感があるよ。」
光は少し満足そうに言った。

「次は一人で出来そうか?」
「うん、大丈夫だと思う。手間だけど簡単な手順だし!」

光は次は一人で作ろうと意気込んでいた。
当然だが、教えてもらうってことは自分でも作るってことになる。

そもそも光は拓哉の家で料理をするために唯志に教えを請っていた。
拓哉の家では毎日コンビニ弁当ばかりだし、暇な自分が少しでも役に立とうと考えた様だ。
それに、未来に帰るとしても帰らないとしても覚えておいて損は無い。

何より、女の子なんだし料理は出来た方が良いよねって考えた。

そう伝えると
「おいおい、料理は女の仕事じゃないんだぜ?」
と莉緒にツッコまれた。
(当然いつもの冗談だが。)
「まぁ男女問わず、出来て損はねーよ。」
唯志には一応後押し?の様な感じの意見を貰った。

----
そんなこんなでカレーが出来上がるのを待っていると、不意に光のスマホが鳴った。

「あれ?誰だろ?・・・佐藤さん?」
佐藤から電話の様で、光はすぐに着信に応じた。

「はい、結城です。----え?バイト・・・ですか?」
光は驚いた表情をしていた。
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