俺の物語には主人公だけがいない

モコ

文字の大きさ
178 / 179
最終章 未来へ

俺の物語の主人公は

しおりを挟む
翌日。
桜の舞い散る中。
拓哉たちは居住地になる予定地を見に来ていた。

「何もないね。」
「今はな。」

「桜きれいだねー。」
「ほんとほんと。せっかくだから花見にすればよかったねー。」
「酒飲みてえけど、運転あるからな。」


「ていうか、俺全然知らなかったんだけど。陰でこんな計画してたの?」
「せや。あんたは西条家ちゃうし、しゃーない。」

「家を建てるんだよね?お金とか大丈夫なの?」
「ああ、問題ない。ここ三年で十分すぎるほど稼いだ。。」
「ええ!?そうなの!?」
「・・・。儲けられそうな情報は無いんじゃなかったっけ・・・?」
「直接はな。光の情報から推測だよ。リスクも多かったから誰にも言わずやってただけ。」

(まぁ確かに、自分の推測なら他の人には話さないか。それに乗っかるのも怖いし。)

「唯志君すごーい。莉緒ちゃんとかは?」
「私は将来的にフリーになるつもりだから、隠居先としてはちょうど良いかもね。」
「目途は立ちそうか?」
「うーん、まぁなんとかなるっしょ。」

「佐藤さんと間宮さんは即答だったね。」
「そうだな。独り身だし、そもそもその頃には死んでるから、か。まぁ二人の年齢ならわからなくも無いか。」
「結婚する気ないのかな?」
「気楽な方が良いんじゃね?特に素行調査が仕事の人は。」
「あー、なんとなくわかるかも。」
「まぁ気が変わったら受け入れれば良いさ。全員が同意するとも思ってなかったし。」

「ていうか俺らは検討の余地すら無いよね?」
「お前はどうせ西条家の屋敷に住むんだから良いじゃん。」
「せやで。移住者が増えれば活気も出るし、村も発展して万々歳やろ?」
「まぁ退屈はしないかもだけど、だいぶ先の話でしょ?」
「せやな。それまでにコンビニくらいは作っておきたいな。」
「・・・客が来ないよ、客が。」
「せめて電車でも通ってたら観光地化することも出来るんだろうけどね。」
「それじゃ移住する意味無くなるだろ。」
「あー、確かに。」

「何にしてもまだ先の話だ。それまで生きてるかもわからねーし。」
「え!?唯志君死ぬの!?やだよ!」
「俺に限らず、この中の誰かに不幸があっても不思議じゃないって話。まぁそん時はそん時。」
「そうならない様に頑張ろうね!」
「そうだな。じゃあさっさと帰るか。莉緒はうちに泊まっていくんだろ?」
「うん。いやー、悪いねー。新婚さんの家にお邪魔して。」
「新婚って言っても、もう半年も経つだろ。」
「まだ半年だよ!新婚気分大事だよ!」
「じゃあ莉緒には野宿してもらう?」
「マジで!?」
「そ、それはまた別の話だよ!莉緒ちゃん泊まっていってよ!」
「なんだー。ひかりん暗に私が邪魔だと言ってるのかと・・・。」
「そんなことないよー。」
「あはは。じゃあ二人の新居見に行くか―。」
「うん。賃貸だけどね。あ、そうそう――」

「じゃあ、吉田・・・。いや西条って言った方が良いか?」
「どっちでも良いよ。呼びやすい方で。」
「んじゃ吉田で良いや。それと御子も。俺らはそろそろ帰るわ。」
「おっけー。また来てやー。」
「おう。次はガキの顔でも見せてくれ。」
「それやと当分先になるやろ!もっとはよ来い!」
「それに子供はそっちのが先でしょ。先に結婚してるのに。」
「まぁその辺は人それぞれペースがあっから。おーい、光と莉緒!帰るぞー。」

「えー、もう帰るの?」
「遠いからな。それよりお前、仕事はどうなんだ?」
「楽しいよ。希望してた通りの仕事出来てるし。」
「なるほどなー。困ってることとかないのか?」
「今のところないかなー。あー、それよりねー――」

「タク君。」
「どうしたの?」
「色々とありがとね。」
「祝って貰ったのこっちだよ?」
「そうじゃなくて。おかげさまでたくさん友達出来たし、未来に手紙も残せそうだよ。」
「ああ。もう良いって。前から何度もお礼言って貰ってるよ。」
「うん。でも改めてね。唯志君と出会えたのも、結婚できたのもタク君のおかげだし。」
「そんなの言い出したら、俺が御子ちゃんと結婚するのも光ちゃんのおかげだけど。」
「そうなるのかな?」
「うん。」
「最初はタイムスリップなんかに巻き込まれて、本当に運が悪いって、ちょっと絶望しちゃったけど。」
「そうなの?」
「うん。でもね、私今はとっても幸せだよ。」

「だからさ、そんなことよりも、もっと未来のこと考えよっか。タク君。」

――

急に現れた未来人に一目ぼれして。

自分の人生の物語が始まったと思って。

可愛いヒロインがいて、主人公になろうと必死に頑張って。

でも、結局その物語でも俺はモブで。

俺の物語にはヒロインだけがいて、主人公がいないって思ったりした。



でも、その物語の主人公は別の人だったし、ヒロインは俺のヒロインじゃなかった。


――

「おーい、拓哉。うちらも帰るでー。我が家に。」

「うん、御子ちゃん。」


でも、思い描いてた物語とは違ったけど。

ありきたりで平凡で、何の特徴も無いけど俺だけど。


「何ボケーッとしてんねん。はよ帰ろ。」

「うん。今行くよ。」


俺の物語に主人公はいた。

普通の人からしたらほんの少し変わった物語だけど。

今はこんな物語も悪くないって、そう思う。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。 本宮 のい。新社会人1年目。 永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。 なんだけど。 青井 奏。 高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、 和泉 碧。 初恋の相手らしき人も現れた。 幸せの青い鳥は一体どこに。 【完結】 ありがとうございました‼︎

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい

みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。 それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。 願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。 スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。 ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。 ※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

処理中です...