転生乙女は愛する彼の運命を変えたい〜破滅の未来から必ず貴方を救ってみせる!〜

藤咲紫亜

文字の大きさ
15 / 34
眠れぬ侯爵様に捧ぐ、猛き竜も眠らす子守歌〜死にたがりの転生悪役令嬢は風の侯爵に拾われ王宮に返り咲く〜(攻略対象・歳上の美貌の侯爵)

第8話 竜との対決

しおりを挟む
 王命に応じて王都に集結した、水の伯爵クラウディオ、火の男爵、地の公爵、そして風の侯爵ジェラルドの4名とそれぞれの一族だったが、黒竜の抵抗は激しく、精霊達の魔法はことごとく弾かれた。

「損害が大きい。火と地の一族は一旦退け」
 ジェラルドの声にクラウディオは苦笑する。
 竜に吹き飛ばされ、鋭い爪で服や皮膚を切り裂かれ、この場に留まる人間の誰もが惨い状態だった。

 年長者であるジェラルドの指示に従い、火と地の一族は撤退を始める。
「侯爵閣下も余裕があるようには見えませんけど、ね!」
 軽い調子で言いつつ、クラウディオは片手を上空の黒竜に翳して氷の矢を放つ。黒竜の鱗は硬く、氷の矢を粉々にした。

「火も水も氷も効かない、岩は避けられてしまう」
 クラウディオは苦々しい表情で呟く。
 黒竜はクラウディオに反撃をしようとするが、その身体を竜巻が包み込んだ。

「こちらだ黒竜!」ジェラルドの声がする。
 竜巻の中で体勢を取り戻した黒竜は、ジェラルドに向かって飛びかかった。
(そよ風のよう、か)
 ジェラルドは心の中で忌々しげに呟いた。

 凄まじい威力であるはずの竜巻の魔法すら、黒竜には通じない。
 そして黒竜のスピードはどんどん上がっているようにすら感じる。

(これは死ぬかもしれないな)
 黒竜の攻撃を避けながら、ジェラルドは屋敷に置いてきたフィオレンティーナのことを考えた。

(君はどうか逃げて、生きて)
———「死な……せて、ください……」
 川から助けた直後の彼女の言葉と表情を思い出し、ジェラルドは戦闘中にも関わらず微笑んだ。
(この世界に生きる価値があることを、知るんだよ)

 ジェラルドが竜の爪を避けた時、その爪の衝撃で爆発するように飛び散った建物の瓦礫が彼の身体にいくつも襲いかかった。
「く……っ」

「ジェラルド様!!」

 瓦礫の下敷きになったジェラルドの耳に、信じられない声が聞こえてきた。
「フィオレンティーナ……!」
 どこかから駆け寄ってきたフィオレンティーナは、ジェラルドの上の瓦礫を一つずつ取り除こうとしている。

「どうしてここに」
 焦って黒竜の方を見ると、今は何とか黒竜をクラウディオが引き付けてくれていた。
 フィオレンティーナは瓦礫を細い手で急ぎどかしながら、ジェラルドに答えた。

「ご存知ですよね? 私、死ぬのは怖くないんです」
 冗談めかして言う彼女の顔は、涙と土に汚れている。
「でも、ジェラルド様が先に死んじゃダメです」
 大きな瓦礫を体重をかけてどかすフィオレンティーナ。

 息を切らして最後の瓦礫をどかし、彼女は告げた。
「私の命はジェラルド様のもの、ですよね? ジェラルド様が死んじゃったら私も生きていけないじゃないですか。言い出した者としての責任を考えてください」

 そう語る彼女は、今までで一番生命力に溢れているように見えた。
 だがジェラルドは言い聞かせるように言った。
「今すぐ逃げなさい、フィオレンティーナ」
(君が逃げる隙くらいは作れるだろう)

 ジェラルドの言葉に、フィオレンティーナは首を横に振る。
「嫌です、ジェラルド様。とりあえず今は死ににきたつもりではありません、策があります」
「策?」
「はい」

 フィオレンティーナは黒竜を見上げて言った。
「私の歌を届けられますか? あの竜に」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

死にキャラに転生したけど、仲間たちに全力で守られて溺愛されています。

藤原遊
恋愛
「死ぬはずだった運命なんて、冒険者たちが全力で覆してくれる!」 街を守るために「死ぬ役目」を覚悟した私。 だけど、未来をやり直す彼らに溺愛されて、手放してくれません――!? 街を守り「死ぬ役目」に転生したスフィア。 彼女が覚悟を決めたその時――冒険者たちが全力で守り抜くと誓った! 未来を変えるため、スフィアを何度でも守る彼らの執着は止まらない!? 「君が笑っているだけでいい。それが、俺たちのすべてだ。」 運命に抗う冒険者たちが織り成す、異世界溺愛ファンタジー!

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月 瑠々奈
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください

楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。 ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。 ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……! 「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」 「エリサ、愛してる!」 ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。

処理中です...