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不幸体質の私と婚約なんて正気の沙汰じゃない〜婚約破棄された男爵は灰かぶりの転生少女と出会い運命の恋を知る〜(攻略対象・おかん系男爵)
第3話 アンラッキーを蹴っ飛ばせ
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ミアの静止も聞かず、グイドはずんずんと川に向かっていく。
(こんな人だ)
困っている人がいたら放っておけない火の男爵。
「一人より二人の方が早く見つかるに決まってるだろ」
「あの、話を聞いてください! 多分もう見つからないんです」
グイドは立ち止まり、眉間に皺を寄せてミアを振り返った。
「どういう意味だ? 探しに行くって自分で言ってたのに」
「私ほんと運が悪くて。こういう時、どんなに探しても出て来ないんです。だから頭では諦めなきゃいけないと分かってて。でも、お母さんが遺してくれた物だから、気持ちは諦めきれなくて」
グイドはため息をつく。
「大事な物なんだろ」
「大事です」
「じゃあ探す。見つかるまで探す。見つからなければ水の伯爵に頼み込んでもいい」
水の伯爵。水の大精霊に愛される男性だ。確かに水全般が専門分野の水の伯爵なら何とかできそうである。
「分かりました、その人に頼みに行きましょ! わざわざ火魔法しか使えないグイド様が水の中に入らなくて良いじゃないですか、火の一族にとって水なんて分かりやすく不得意分野じゃないですか!」
「火魔法『しか』とは何だ失礼ぬぁ!?」
恐らく「失礼な」と言いかけたグイドが道の途中で突然何かを踏んでひっくり返る。
「ほらァ……」
「ほらァって何だ誰だこんなとこに石鹸落とした奴は!」
「私です」
「お前じゃねえか!!」
「いや今回は私ですけど、私がとんでもなく運が悪いのは本当なんですよ! 私の近くにいる人にも不幸が起きます、だから!」
「なら不幸を呼ぶな!」
「呼んでるつもりはありません!」
(誰が好きで呼ぶかそんなもの)
ミアは心の中で言い返す。
「とにかく私に関わると危ないんです。次こそ溺れて死ぬかもしれませんよ!?」
グイドは立ち上がり、川に向かって再び歩き出す。
「俺はな、そういう迷信みたいな奴が昔から、大嫌いなん」
グイドはそこでミアに服を掴まれ後ろに強く引っ張られた。
ガチャァン。
グイドの鼻先をかすめ、近くの家の塀にぶつかって粉々に割れたのは、何かの食器のようだった。
「あんた、また浮気かい!? いったい何度目だい!?」
「すまねえ! もう二度としねえから許してくれえ!」
夫婦喧嘩の声が聞こえる。
どうやら喧嘩の最中に投げた食器が窓から家の外にとびだしてしまったようだ。
「迷信、信じたくなりました?」
「お前どうやって生活してんだよ……」
「慣れです慣れ。『あ、そろそろアンラッキーが来る』って分かるようになります。避けられない時は運命だと受け入れます」
グイドは妖怪でも見るような目でミアを見た。
(嫌われた)
生まれ持っての不幸体質だから、もう色々諦めはついているが、推しに嫌われるというのは結構悲しいものである。
ミアは川のすぐ手前で立ち止まった。
「ここまででお別れしましょう。私は川にネックレスを探しにいきます。グイド様はお屋敷にお帰りになってください」
「断る」
「何で」
「男に二言は無いからだ!」
そう言うと、たどり着いた川岸でグイドはシャツやベストを脱ぎ、上半身裸になった。
丁寧に服を畳んで川岸に置くと、軽く体を動かして川に入る。
「この辺りだったよなー?」
そうしてグイドは川底に手を伸ばして探し始めた。
「グイド様!」
「どんなネックレスだ?」
グイドの声に、仕方なくミアも川に入って言葉を返す。
(こう言う時に引かないキャラだからなぁ……)
「一粒ダイヤです。ダイヤは小さめですけど」
「了解」
こうしてミアとグイドは川でネックレス探しを始めたのだが。
やはり、上流で壊れた丸太船の丸太が猛スピードで流れて来たり、少し遠くで石切遊びをしていた親子の石が妙な角度で曲がってグイドに当たったり、川に棲む毒蛇に襲われかけたりと不運は相変わらず続いた。
———夕刻。
「グイド様、もう大丈夫です。日も暮れて川底が見えないし、水温もだいぶ下がって……これ以上は危険です」
「俺を誰だと思ってる」
グイドは手を空にかざした。
「グイド様?」
「火の一族は攻撃魔法だけが取り柄じゃねえんだよ」
ポウ、と、手のひら大の球体の炎が、ミア達の周り、川面の上に何十個も浮かぶ。
川底までオレンジ色に明るく照らし出される幻想的な光景に、ミアは目を見開いた。
「綺麗。暖かい……」
水温もぬるま湯程度に感じる。
「今日中に見つけるぞ」
「は、はい!」
すっかりグイドのペースに巻き込まれているミアだった。
(こんな人だ)
困っている人がいたら放っておけない火の男爵。
「一人より二人の方が早く見つかるに決まってるだろ」
「あの、話を聞いてください! 多分もう見つからないんです」
グイドは立ち止まり、眉間に皺を寄せてミアを振り返った。
「どういう意味だ? 探しに行くって自分で言ってたのに」
「私ほんと運が悪くて。こういう時、どんなに探しても出て来ないんです。だから頭では諦めなきゃいけないと分かってて。でも、お母さんが遺してくれた物だから、気持ちは諦めきれなくて」
グイドはため息をつく。
「大事な物なんだろ」
「大事です」
「じゃあ探す。見つかるまで探す。見つからなければ水の伯爵に頼み込んでもいい」
水の伯爵。水の大精霊に愛される男性だ。確かに水全般が専門分野の水の伯爵なら何とかできそうである。
「分かりました、その人に頼みに行きましょ! わざわざ火魔法しか使えないグイド様が水の中に入らなくて良いじゃないですか、火の一族にとって水なんて分かりやすく不得意分野じゃないですか!」
「火魔法『しか』とは何だ失礼ぬぁ!?」
恐らく「失礼な」と言いかけたグイドが道の途中で突然何かを踏んでひっくり返る。
「ほらァ……」
「ほらァって何だ誰だこんなとこに石鹸落とした奴は!」
「私です」
「お前じゃねえか!!」
「いや今回は私ですけど、私がとんでもなく運が悪いのは本当なんですよ! 私の近くにいる人にも不幸が起きます、だから!」
「なら不幸を呼ぶな!」
「呼んでるつもりはありません!」
(誰が好きで呼ぶかそんなもの)
ミアは心の中で言い返す。
「とにかく私に関わると危ないんです。次こそ溺れて死ぬかもしれませんよ!?」
グイドは立ち上がり、川に向かって再び歩き出す。
「俺はな、そういう迷信みたいな奴が昔から、大嫌いなん」
グイドはそこでミアに服を掴まれ後ろに強く引っ張られた。
ガチャァン。
グイドの鼻先をかすめ、近くの家の塀にぶつかって粉々に割れたのは、何かの食器のようだった。
「あんた、また浮気かい!? いったい何度目だい!?」
「すまねえ! もう二度としねえから許してくれえ!」
夫婦喧嘩の声が聞こえる。
どうやら喧嘩の最中に投げた食器が窓から家の外にとびだしてしまったようだ。
「迷信、信じたくなりました?」
「お前どうやって生活してんだよ……」
「慣れです慣れ。『あ、そろそろアンラッキーが来る』って分かるようになります。避けられない時は運命だと受け入れます」
グイドは妖怪でも見るような目でミアを見た。
(嫌われた)
生まれ持っての不幸体質だから、もう色々諦めはついているが、推しに嫌われるというのは結構悲しいものである。
ミアは川のすぐ手前で立ち止まった。
「ここまででお別れしましょう。私は川にネックレスを探しにいきます。グイド様はお屋敷にお帰りになってください」
「断る」
「何で」
「男に二言は無いからだ!」
そう言うと、たどり着いた川岸でグイドはシャツやベストを脱ぎ、上半身裸になった。
丁寧に服を畳んで川岸に置くと、軽く体を動かして川に入る。
「この辺りだったよなー?」
そうしてグイドは川底に手を伸ばして探し始めた。
「グイド様!」
「どんなネックレスだ?」
グイドの声に、仕方なくミアも川に入って言葉を返す。
(こう言う時に引かないキャラだからなぁ……)
「一粒ダイヤです。ダイヤは小さめですけど」
「了解」
こうしてミアとグイドは川でネックレス探しを始めたのだが。
やはり、上流で壊れた丸太船の丸太が猛スピードで流れて来たり、少し遠くで石切遊びをしていた親子の石が妙な角度で曲がってグイドに当たったり、川に棲む毒蛇に襲われかけたりと不運は相変わらず続いた。
———夕刻。
「グイド様、もう大丈夫です。日も暮れて川底が見えないし、水温もだいぶ下がって……これ以上は危険です」
「俺を誰だと思ってる」
グイドは手を空にかざした。
「グイド様?」
「火の一族は攻撃魔法だけが取り柄じゃねえんだよ」
ポウ、と、手のひら大の球体の炎が、ミア達の周り、川面の上に何十個も浮かぶ。
川底までオレンジ色に明るく照らし出される幻想的な光景に、ミアは目を見開いた。
「綺麗。暖かい……」
水温もぬるま湯程度に感じる。
「今日中に見つけるぞ」
「は、はい!」
すっかりグイドのペースに巻き込まれているミアだった。
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