転生乙女は愛する彼の運命を変えたい〜破滅の未来から必ず貴方を救ってみせる!〜

藤咲紫亜

文字の大きさ
33 / 34
不幸体質の私と婚約なんて正気の沙汰じゃない〜婚約破棄された男爵は灰かぶりの転生少女と出会い運命の恋を知る〜(攻略対象・おかん系男爵)

第7話 夢ならば

しおりを挟む
 グイドはミアを見送ると、ミアの継母を見据えた。
 グイドの周りに火の玉が幾つも出現する。
「さっきのようにミアに手出ししてみろ。お前を燃やす」

「何のことかしら?」
 継母は不思議そうな顔をする。
 グイドは継母を睨んで声を張り上げた。

「シャンデリアと天井の木材は、上の階からミアを狙って落とした。花瓶も上の階から何か仕掛けを使ったんだろう。窓枠は少し触れただけで外れるように細工していた。使用人がいないこの家で、窓に触るのはミアだけだ。窓の仕掛けに驚いて立ち止まったミアが落ちるよう、床材にあらかじめ切り込みを入れ、その下には深い落とし穴を掘っておいた。これまでも似たようなことをしてきたんだろう」

 継母の顔から表情が消える。
「何故ここまでする」
 グイドが問いかけると継母はさして興味の無い様子で呟いた。

「ただの暇つぶしよ」
「暇つぶしだと?」
「ええ。人生には娯楽が必要でしょう? ミアは私達の退屈な時間を紛らわすためのおもちゃ。飽きてきたからそろそろ廃棄して、新しいおもちゃを手に入れようと思ってたの」

「本物の化け物だな」
 グイドは汚らわしいものでも見るような顔で、怒りを露わに吐き捨てた。
「だが要らないと言うのであれば、彼女はありがたく連れて行かせてもらう」

 そこにミアが大きなバッグを下げて歩いて来た。
 グイドはそのバッグを持ってやり、継母を一瞥した。
「今後二度とミアに関わるな。俺にとっては、この家一つ潰すことなど造作もないと覚えておけ」

 そう言うと、グイドは先ほどイザベラが飛び出して行った玄関から外へ出る。
 少し後ろを歩くミアが、背後を振り返る気配がした。


   ☆☆☆


 ミアはメルクリオの家を出る時、最後に後ろを振り返った。
(見なきゃ良かった)
 階段の途中に佇んでいた継母は、ミアが見た事もないほど恐ろしげで、屈辱に燃えた悔しげな表情をしていた。

 グイドは一体何を言ったのだろう。
 家々が並ぶ中、自分の前を歩くグイドは苛立っているように見える。

「グイド様」
「何だ」
「婚約話は、あの場を乗り切るための口実ですよね?」

 グイドは立ち止まった。けれど振り返らない。
 ミアも自然と立ち止まる。
「俺は本気だ。けど、お前が嫌なら好きな時に婚約破棄すれば良い」

「……グイド様。ひょっとして私もう死んでます?」
「は!?」
 グイドがぶん!と音がしそうなくらいの勢いで振り返った。

「いや私の人生にしてはあまりに恵まれすぎてて。死後の夢なら納得できるんです」
 ミアは自分の両手のひらに視線を落とした。

「分かった! 私の妄想ですね? だって私に都合が良すぎますもん。おかしいと思ったんですよ、だってグイド様ですよ? よりによって好きでたまらなかった人が現れて助けてくれて婚約を申し込んでくれるなんて完璧な乙女の妄想じゃないですか! はー、そうか、人生の終わりに、神様か誰かが私に夢のご褒美をくれたんですね」

 言いながらミアの瞳からポロポロと涙がこぼれる。

(夢は醒める。夢は終わる。夢は現実じゃない)

 グイドは堪えきれず頭を抱えた。
「待て待て待て待て! 俺の方が処理できん! お前が、俺を好き?」

「はい、好きです。グイド様は優しくて正義感があって、その上いつも全力で、素敵で可愛い人なんです」
 今の状況が夢だと信じて平然と『推し』について語るミアに、グイドの顔は赤くなったり青くなったりと忙しい。

「……お前の感覚、分かんねー……」
 グイドはヘナヘナと力が抜けたようにその場にしゃがみこんでしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

死にキャラに転生したけど、仲間たちに全力で守られて溺愛されています。

藤原遊
恋愛
「死ぬはずだった運命なんて、冒険者たちが全力で覆してくれる!」 街を守るために「死ぬ役目」を覚悟した私。 だけど、未来をやり直す彼らに溺愛されて、手放してくれません――!? 街を守り「死ぬ役目」に転生したスフィア。 彼女が覚悟を決めたその時――冒険者たちが全力で守り抜くと誓った! 未来を変えるため、スフィアを何度でも守る彼らの執着は止まらない!? 「君が笑っているだけでいい。それが、俺たちのすべてだ。」 運命に抗う冒険者たちが織り成す、異世界溺愛ファンタジー!

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月 瑠々奈
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください

楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。 ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。 ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……! 「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」 「エリサ、愛してる!」 ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。

処理中です...