ナディア・クライノートは筆を折る〜「私はこの小説のヒロイン達を愛している、三次元の女に興味は無い」と婚約破棄されましたが、それ書いたの私です

藤咲紫亜

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第一稿 掴みはテンプレで。

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これは、高潔な皇子が魔女に魅了される物語。


☆☆☆☆☆


「ナディア・クライノート、私は真実の愛を見つけた! お前との婚約を破棄させてもらう!」

 王都に程近い、小高い丘の上に作られたノーヴァ帝国魔法学校。
 その、緑薫る中庭での出来事だった。

 心地よい春の日差しの中、持参したサンドイッチを一人のんびり頬張っていた。
 そこに婚約者のノーヴァ帝国第三皇子ヴィラントが足早に近付いてきて、昼休みを楽しむ生徒達の面前で私に突然宣言したのだ。
 
(……ええ、と?)
 ぬるくなった紅茶でサンドイッチを慌てて胃に流し込むと、私はナプキンで口元を拭き拭き、身だしなみを整えて優雅に立ち上がった。

 ヴィラント皇子は整った顔に、厳しい表情を浮かべている。
 陽を受けて輝く、彼の金色の髪。

 間違えてはいけない。
 ここは、これで合っているはず。
 胸を張り、ツン、と取り澄ました顔で皇子を見据える。

「婚約破棄? どうぞご自由に!」

 これが、流行りの台詞。
 『月が綺麗ですね』を受けたら、『死んでもいいわ』で返すように、お決まりの文言なのだ。

「どうしたんだろ、あの二人……」
「痴話喧嘩?」

 ザワザワと周囲の生徒達が騒いだ。

(返しやすいテンプレ通りの御言葉、痛み入ります殿下)
 特に思い入れのある婚約でもないし、周囲の邪推は甘んじて受けよう。

 でもその後、興味を抑えられなかったのが災いした。
 好奇心が猫を殺した。

「真実の愛と仰いましたわね。最後に、お相手がどなたかお聞きしても?」
 この言葉にヴィラントは頬を赤くした。

 何その純情そうな反応は。
「真実の愛ゆえ、隠すべきではないだろう! こ、これだ」
 ヴィラントは、懐からサッと一瞬だけ四角いものを見せた。

 いや隠すの速すぎて見えないし。
 見えなかったのだが、私はその品を『よく知っていた』。

 知りすぎていて悲鳴をあげそうだった。
 あれは私の黒歴史。
 『破滅エンドを回避させた令嬢達が僕を毎晩悩ませてくる』——略してハメレイ!!

 ヴィラントは赤面したまま叫んだ。
「この悲運の悪役令嬢マチルダが……いや、この可憐な令嬢達全員が! 私の運命の女性達だ! 悪いが、三次元の女に興味は無い!」

 やめて!
 綺麗な顔で私の黒歴史を大声で叫ばないで!!
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