30 / 130
始動
ep.30
しおりを挟む
『…珍しいですね。千葉さんが生クリームなんて』
「ああ…
疲れがとれなくてね。糖分摂取」
千葉さんは困ったような笑みを目尻を下げて浮かべた。
週末は休みだったはずだが、多忙過ぎて疲れがとれないのだろう。
如月さんが彼女の負担を減らしたいと思ったのは千葉さんの疲労感を見抜いていたからかもしれない。
「じゃ、始めよっか」
『はい。お願いします』
私と千葉さんは資料を広げて引き継ぎを開始した。
ランチまでの数時間、詰め込めるだけの情報を頭に詰め込む。
私の担当エリア店舗は約十店舗。
関東エリアの店舗数は県外の倍以上ある。
普通は二名体制で振り分けして関東エリアを管理するのだが、人手不足により千葉さん一人で管理していたよう。
この数の店舗数をよく出来たものだ。
彼女にしか出来ない所業。
「——こんなもんかな。
一気に詰め込んじゃったけど」
『ありがとうございます』
「一応私からもメールしとくけど、原田さんからも担当店舗にメールしといてね。
一括送信でいいから」
『はい。午後送ります』
「うん。よろしく」
丁度、グラスのコーヒーが空になった。
カラン、と溶けた氷が音を鳴らす。
「このままランチにする?」
『一回、デスクに戻ります。荷物置きに』
「そう。じゃあ、私は先出るね」
『はい。お疲れ様です』
本当は荷物を持ったままランチに出てもよかった。
ただ私は部署に戻りたい理由がある。
如月さんにコーヒーを一杯買って戻りたかった。
先週末奢ってもらったせめてものお詫びとして。
私は店のレジカウンターでカフェラテを一杯買ってから部署に戻る。
どうせ彼ならデスクでコンビニ飯だろう。
『如月さん』
「…原田か。どうした」
『これ、よかったらどうぞ』
持ち帰り用の紙のカップに淹れられたコーヒーを私は如月さんのデスクにそっと置いた。
彼は不思議そうにこちらを疑視する。
それはそうだろう。
今までこんなことしたことはない。
「?」
『この間のお詫びです』
「お詫び?」
『ご馳走していただいたので…』
「ああ…
律儀な奴だな」
如月さんは呆れたように言った。
否定できない。
私は人より他人の感情的に敏感だ。
他人にどう思われているのか気になってしまう。
気にし過ぎだとはわかっているのだが、過剰に気を遣ってしまうのだ。
『迷惑でしたか?』
「いや、助かる。
ありがとう」
『いえ…
私、ランチ行ってきますね』
邪魔をしては悪い。
私はすぐにその場を立ち去った。
いつものように私は社員食堂で食事する。
うどんやラーメン、メニューの種類は豊富。
破格の金額で食べられるのは魅力的。
見知った顔触れはいなそうなので今日は一人で食べることになりそう。
「ああ…
疲れがとれなくてね。糖分摂取」
千葉さんは困ったような笑みを目尻を下げて浮かべた。
週末は休みだったはずだが、多忙過ぎて疲れがとれないのだろう。
如月さんが彼女の負担を減らしたいと思ったのは千葉さんの疲労感を見抜いていたからかもしれない。
「じゃ、始めよっか」
『はい。お願いします』
私と千葉さんは資料を広げて引き継ぎを開始した。
ランチまでの数時間、詰め込めるだけの情報を頭に詰め込む。
私の担当エリア店舗は約十店舗。
関東エリアの店舗数は県外の倍以上ある。
普通は二名体制で振り分けして関東エリアを管理するのだが、人手不足により千葉さん一人で管理していたよう。
この数の店舗数をよく出来たものだ。
彼女にしか出来ない所業。
「——こんなもんかな。
一気に詰め込んじゃったけど」
『ありがとうございます』
「一応私からもメールしとくけど、原田さんからも担当店舗にメールしといてね。
一括送信でいいから」
『はい。午後送ります』
「うん。よろしく」
丁度、グラスのコーヒーが空になった。
カラン、と溶けた氷が音を鳴らす。
「このままランチにする?」
『一回、デスクに戻ります。荷物置きに』
「そう。じゃあ、私は先出るね」
『はい。お疲れ様です』
本当は荷物を持ったままランチに出てもよかった。
ただ私は部署に戻りたい理由がある。
如月さんにコーヒーを一杯買って戻りたかった。
先週末奢ってもらったせめてものお詫びとして。
私は店のレジカウンターでカフェラテを一杯買ってから部署に戻る。
どうせ彼ならデスクでコンビニ飯だろう。
『如月さん』
「…原田か。どうした」
『これ、よかったらどうぞ』
持ち帰り用の紙のカップに淹れられたコーヒーを私は如月さんのデスクにそっと置いた。
彼は不思議そうにこちらを疑視する。
それはそうだろう。
今までこんなことしたことはない。
「?」
『この間のお詫びです』
「お詫び?」
『ご馳走していただいたので…』
「ああ…
律儀な奴だな」
如月さんは呆れたように言った。
否定できない。
私は人より他人の感情的に敏感だ。
他人にどう思われているのか気になってしまう。
気にし過ぎだとはわかっているのだが、過剰に気を遣ってしまうのだ。
『迷惑でしたか?』
「いや、助かる。
ありがとう」
『いえ…
私、ランチ行ってきますね』
邪魔をしては悪い。
私はすぐにその場を立ち去った。
いつものように私は社員食堂で食事する。
うどんやラーメン、メニューの種類は豊富。
破格の金額で食べられるのは魅力的。
見知った顔触れはいなそうなので今日は一人で食べることになりそう。
1
あなたにおすすめの小説
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜
柿 心刃
恋愛
僕の幼馴染で姉的な存在である西田香奈は、眉目秀麗・品行方正・成績優秀と三拍子揃った女の子だ。彼女は、この辺りじゃ有名な女子校に通っている。僕とは何の接点もないように思える香奈姉ちゃんが、ある日、急に僕に急接近してきた。
僕の名は、周防楓。
女子校とは反対側にある男子校に通う、ごく普通の男子だ。
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
半年間、俺の妻になれ〜幼馴染CEOのありえない求婚から始まる仮初の溺愛新婚生活〜 崖っぷち元社畜、会社が倒産したら玉の輿に乗りました!?
とろみ
恋愛
出勤したら会社が無くなっていた。
高瀬由衣(たかせゆい)二十七歳。金ナシ、職ナシ、彼氏ナシ。ついでに結婚願望も丸でナシ。
明日までに家賃を用意できなければ更に家も無くなってしまう。でも絶対田舎の実家には帰りたくない!!
そんな崖っぷちの由衣に救いの手を差し伸べたのは、幼なじみで大企業CEOの宮坂直人(みやさかなおと)。
「なぁ、俺と結婚しないか?」
直人は縁談よけのため、由衣に仮初の花嫁役を打診する。その代わりその間の生活費は全て直人が持つという。
便利な仮初の妻が欲しい直人と、金は無いけど東京に居続けたい由衣。
利害の一致から始まった愛のない結婚生活のはずが、気付けばいつの間にか世話焼きで独占欲強めな幼なじみCEOに囲い込まれていて――。
高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の低田悠真のクラスには『高嶺の花』と呼ばれるほどの人気がある高嶺結衣という女子生徒がいる。容姿端麗、頭脳明晰、品行方正な高嶺さんは男女問わずに告白されているが全て振っていた。彼女には好きな人がいるらしい。
ゴールデンウィーク明け。放課後にハンカチを落としたことに気付いた悠真は教室に戻ると、自分のハンカチの匂いを嗅いで悶える高嶺さんを見つける。その場で、悠真は高嶺さんに好きだと告白されるが、付き合いたいと思うほど好きではないという理由で振る。
しかし、高嶺さんも諦めない。悠真に恋人も好きな人もいないと知り、
「絶対、私に惚れさせてみせるからね!」
と高らかに宣言したのだ。この告白をきっかけに、悠真は高嶺さんと友達になり、高校生活が変化し始めていく。
大好きなおかずを作ってきてくれたり、バイト先に来てくれたり、放課後デートをしたり、朝起きたら笑顔で見つめられていたり。高嶺の花の高嶺さんとの甘くてドキドキな青春学園ラブコメディ!
※2学期編4が完結しました!(2025.8.4)
※お気に入り登録や感想、いいねなどお待ちしております。
置き去りにされた恋をもう一度
ともどーも
恋愛
「好きです。付き合ってください!」
大きな桜の木に花が咲き始めた頃、その木の下で、彼は真っ赤な顔をして告げてきた。
嬉しさに胸が熱くなり、なかなか返事ができなかった。その間、彼はまっすぐ緊張した面持ちで私を見ていた。そして、私が「はい」と答えると、お互い花が咲いたような笑顔で笑い合った。
中学校の卒業式の日だった……。
あ~……。くだらない。
脳味噌花畑の学生の恋愛ごっこだったわ。
全ての情熱を学生時代に置いてきた立花美咲(24)の前に、突然音信不通になった元カレ橘蓮(24)が現れた。
なぜ何も言わずに姿を消したのか。
蓮に起こったことを知り、美咲はあの頃に置き去りにした心を徐々に取り戻していく。
────────────────────
現時点でプロローグ+20話まで執筆ができていますが、まだ完結していません。
20話以降は不定期になると思います。
初の現代版の恋愛ストーリーなので、遅い執筆がさらに遅くなっていますが、必ず最後まで書き上げます!
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる