離した手の温もり

橘 凛子

文字の大きさ
103 / 130
衝突

ep.103

しおりを挟む
『……そうしようかな』
「明日、俺も手伝いいくよ。休みだし」
『じゃあこれ飲んだら帰るね』
「…ん。
送るよ」
『ありがとう…いつも』
「一緒にいたいだけだから気にしないの」

食後のティータイムを楽しんでいたが、のんびりはしていられない。

帰って荷造りをしなくては。

菜乃と彗くんにも連絡しよう。

何日か手伝えないか、と。

『私、着替えてくるね』
「俺も」

蒼ちゃんが淹れてくれた紅茶を飲み終えた私は部屋着のまま外出するわけにはいかないので、着替えるためにバスルームへ足を運んだ。

そこに着替えが置いてある。

彼は私とは別に寝室で着替えてくるよう。

別に蒼ちゃんは着替える必要はないとは思うのだが。

ダル着で出かけることが出来ないのだろう。

「行ける?」
『うん』

お互いラフな外出着に着替えた私達はマンションをでた。

蒼ちゃんの車に乗り込んで私のマンションまで軽いドライブをする。

「明日、昼頃に美愛んとこ行くけど昼飯いる?」
『あー…欲しいかも』
「適当に買っていくよ。欲しいのあったら連絡して」
『…ん、ありがと』

蒼ちゃんの提案は素直に有り難かった。

リモートワークとはいえ、明日は仕事で忙しい。

昼食を作っている余裕はないだろう。

なので彼がお昼を持参してきてくれるのは単純に嬉しい。

素直に甘えることにした。

「火曜日、家具買いに行く予定だったけど…どうする?」
『ん?どうするって…?』
「行ってる余裕ある?」
『あー…でも買いに行かなきゃだよね』

本音を言えば、火曜日は一日荷造りをしていたい。

だが、家具家電も揃えなければ蒼ちゃんのマンションで快適に暮らすことは難しいだろう。

ハードなスケジュールにはなるが、午前に買い物を済ませれば時間は確保できるかもしれない。

「まぁ…ね」
『早めに行けば午前中には買い物、終わるかな?』
「細々したもの除けば終わると思うよ。家具と家電だけなら」
『じゃあ、そうしようよ』

基本的に家具屋さんメインの買い物になるだろう。

家電量販店で買うものといえば、テレビくらい。

他のものは全て揃っている。

「じゃ、また明日」
『あ…』

話しているうちに車はマンションに着いていた。

夜だから道が空いていたのだろう。

話に夢中で気がつかなかった。

「あんまこん詰め過ぎないようにね」
『……気をつける』
「うん。よろしく」

蒼ちゃんは私の頭を撫でながら言った。

なんでわかるのだろう。

私の思考が読まれている。

敵わないな。

私はシートベルトを外して彼を見上げる。

名残惜しげに蒼ちゃんはこちらを見つめていた。

手持ち無沙汰な指先は私の肩にかかる毛先を弄んでいる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃
恋愛
僕の幼馴染で姉的な存在である西田香奈は、眉目秀麗・品行方正・成績優秀と三拍子揃った女の子だ。彼女は、この辺りじゃ有名な女子校に通っている。僕とは何の接点もないように思える香奈姉ちゃんが、ある日、急に僕に急接近してきた。 僕の名は、周防楓。 女子校とは反対側にある男子校に通う、ごく普通の男子だ。

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

いつから恋人?

ざっく
恋愛
告白して、オーケーをしてくれたはずの相手が、詩織と付き合ってないと言っているのを聞いてしまった。彼は、幼馴染の女の子を気遣って、断れなかっただけなのだ。

半年間、俺の妻になれ〜幼馴染CEOのありえない求婚から始まる仮初の溺愛新婚生活〜 崖っぷち元社畜、会社が倒産したら玉の輿に乗りました!?

とろみ
恋愛
出勤したら会社が無くなっていた。 高瀬由衣(たかせゆい)二十七歳。金ナシ、職ナシ、彼氏ナシ。ついでに結婚願望も丸でナシ。 明日までに家賃を用意できなければ更に家も無くなってしまう。でも絶対田舎の実家には帰りたくない!! そんな崖っぷちの由衣に救いの手を差し伸べたのは、幼なじみで大企業CEOの宮坂直人(みやさかなおと)。 「なぁ、俺と結婚しないか?」 直人は縁談よけのため、由衣に仮初の花嫁役を打診する。その代わりその間の生活費は全て直人が持つという。 便利な仮初の妻が欲しい直人と、金は無いけど東京に居続けたい由衣。 利害の一致から始まった愛のない結婚生活のはずが、気付けばいつの間にか世話焼きで独占欲強めな幼なじみCEOに囲い込まれていて――。

高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の低田悠真のクラスには『高嶺の花』と呼ばれるほどの人気がある高嶺結衣という女子生徒がいる。容姿端麗、頭脳明晰、品行方正な高嶺さんは男女問わずに告白されているが全て振っていた。彼女には好きな人がいるらしい。  ゴールデンウィーク明け。放課後にハンカチを落としたことに気付いた悠真は教室に戻ると、自分のハンカチの匂いを嗅いで悶える高嶺さんを見つける。その場で、悠真は高嶺さんに好きだと告白されるが、付き合いたいと思うほど好きではないという理由で振る。  しかし、高嶺さんも諦めない。悠真に恋人も好きな人もいないと知り、 「絶対、私に惚れさせてみせるからね!」  と高らかに宣言したのだ。この告白をきっかけに、悠真は高嶺さんと友達になり、高校生活が変化し始めていく。  大好きなおかずを作ってきてくれたり、バイト先に来てくれたり、放課後デートをしたり、朝起きたら笑顔で見つめられていたり。高嶺の花の高嶺さんとの甘くてドキドキな青春学園ラブコメディ!  ※2学期編4が完結しました!(2025.8.4)  ※お気に入り登録や感想、いいねなどお待ちしております。

置き去りにされた恋をもう一度

ともどーも
恋愛
「好きです。付き合ってください!」  大きな桜の木に花が咲き始めた頃、その木の下で、彼は真っ赤な顔をして告げてきた。  嬉しさに胸が熱くなり、なかなか返事ができなかった。その間、彼はまっすぐ緊張した面持ちで私を見ていた。そして、私が「はい」と答えると、お互い花が咲いたような笑顔で笑い合った。  中学校の卒業式の日だった……。  あ~……。くだらない。  脳味噌花畑の学生の恋愛ごっこだったわ。  全ての情熱を学生時代に置いてきた立花美咲(24)の前に、突然音信不通になった元カレ橘蓮(24)が現れた。  なぜ何も言わずに姿を消したのか。  蓮に起こったことを知り、美咲はあの頃に置き去りにした心を徐々に取り戻していく。 ──────────────────── 現時点でプロローグ+20話まで執筆ができていますが、まだ完結していません。 20話以降は不定期になると思います。 初の現代版の恋愛ストーリーなので、遅い執筆がさらに遅くなっていますが、必ず最後まで書き上げます! 少しでも楽しんでいただければ幸いです。

処理中です...