離した手の温もり

橘 凛子

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再会

ep.9

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「そういえば…」
『ん?』
「同窓会の案内、きた?」
『あー…
来てたかも。まだ返事してないや』

車を走らせてから数分。

彗くんは何の前触れもなく唐突に言い出した。

同窓会というのは高校の同窓会。

定期的に開催の通知が来る。

前回の開催が確か二年前くらい。

生憎私は仕事だったので行けなかった。

もう随分、皆んなに会っていない。

「参加する?」
『どうしようかなぁ…
彗くんは行くの?』
「一応、その予定」
『いつだっけ?』
「来月の頭」
『来月かぁ…』
「予定埋まってる?」
『ううん。多分平気』
「一緒に行く?」
『それは嫌。イジられるもん』
「何を今更」

彗くんは呆れたように笑った。

小、中、高、と学校が一緒だと二人でいるだけで皆んなに揶揄われる。

それは大人になってからも変わらない。

私と彗くんがそういう雰囲気になったことは一度もないというのに。

諦めてほしい。

『皆んな結婚してるかな』
「適齢期だからなぁ…
何人かはいると思うよ」
『だよね。話、ついてけなさそう』
「限界きたら一緒にフケる?」
『なにそれ。
学生じゃないんだから』
「俺はいつでも付き合うよ」
『考えとく……』

お互い笑い合いながら、道中の会話を楽しんだ。

懐かしいなぁ。

学生の時はこんな風に笑い合いながら登下校した。

くだらない話で喧嘩したり、馬鹿みたいに笑ったり。

私の青春時代にはいつも彗くんがいた。

きっとそれは彼も一緒だろう。

「またさ…」
『?』
「こうやって笑ってたいと思うのは俺だけ?」
『………』
「どうせ、今日っきりにするつもりだろ」
「!」

図星だった。

今日はたまたま会っただけ。

明日からまた仲良くしよう、なんてつもりはない。

彗くんと一緒にいたらいつか、蒼ちゃんに出会ってしまいそう。

そんな気がする。

それは避けたい。

出会ってしまったら私は今以上に欲が溢れてしまう。

そんな資格ないのに。

『………』
「美愛の考えなんてお見通し。何年一緒にいたと思ってんの。
思い通りにはさせないよ」
『………』
「俺をどんだけ心配させるんだよ。
連絡よこさないし」
『それは仕事が…』
「連絡一本出来ないくらい忙しい?」
『………』

話しているうちにマンションに着いた。

彗くんは道路脇に止めるが、降ろしてくれそうにない。

完璧怒っている。

『ごめん…』
「別に俺は蒼に告げ口みたいなこするつもりはないよ。
会いたくないみたいだし」

彗くんの顔が直視出来ない。

こんな彼は初めてだ。

くだらない喧嘩はしたことあるが、そんな時でも彗くんの表情は穏やかなまま。

だが、目の前にいる彼は明らかに表情を歪めている。

機嫌悪げにこちらを見ていた。

『……降参です』
「は?」
『彗くんには敵わないよ』
「なんだよ、それ」

クスリ、と彗くんは目尻を下げて笑った。

その瞬間、重かった二人の間の空気が軽くなった気がする。

やっぱりこっちの顔の方がいい。

怒っている顔より、彼には人たらしでいてほしい。

これ以上言い合ったところで何も解決しないのだから。
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