18 / 130
始動
ep.18 始動
しおりを挟む
翌日。
休日の朝に私は昨夜作ったクッキー生地をオーブンで焼いていた。
香ばしく、甘い香りがキッチンを漂う。
『菜乃、そろそろ来るかな…』
時刻は正午過ぎ。
特に何時に来るとは約束していない。
だがお昼とはこのくらいの時間帯だろう。
—— ピンポーン——
インターホンの鳴る音が部屋じゅうに鳴り響いた。
モニターを見ると言わずもがな、菜乃だった。
私はオートロックを解除して彼女を部屋に招く。
「お邪魔しまーす!
……いい匂い。なんか作ってた?」
『クッキー。
丁度焼けたとこ』
「やったぁ!
美愛のクッキー大好き!」
菜乃は愛嬌のある笑顔を浮かべた。
彼女の手には色々手荷物が握られている。
手土産をいくつか持ってきてくれたようだ。
『お昼どうする?
何も用意してないけど』
「買ってきた!」
菜乃は手に提げていたビニール袋を目の前に掲げた。
食欲を誘ういい香りが袋からだだ漏れている。
ちゃんと用意してきてくれてたみたい。
彼女は黒髪の癖のない髪を伸ばし、ハーフツインテールにした可愛いらしい女の子。
写真投稿アプリでフォロワー100万人以上を誇るインフルエンサー。
主に新作コスメを紹介するアカウントらしい。
『ありがとう。
仕事、忙しそうだね』
「まぁ、そこそこかな。
好きな仕事だからあんまり苦に感じないんだよね」
キラキラの笑顔で菜乃は言った。
彼女はリビングのソファーに腰掛け、身体を背もたれに預ける。
紅茶の入ったグラスをテーブルに置き、焼きたてのクッキーを菜乃に差し出した。
身を乗り出してそのクッキーに彼女は手を出す。
「おいしい!」
『よかった』
「お店のよりおいしいよ」
『そりゃ、焼きたてだからね』
「食べよっか!
チキンとチキンサンド買ってきた」
ガサガサ、とビニール袋から目当てのものを取り出す菜乃。
なんともバランスの悪いラインナップだろう。
確か冷蔵庫に作り置きの副菜があった筈。
チキンづくしではあまりにも油っこすぎる。
私はそれを一品、皿に取り分けてテーブルに置いた。
キュウリとツナ缶の和えものを。
『作り置きだけどよかったら食べて。油っこいでしょ』
「ありがとう。
いただきます!」
私達は素手でチキンを貪った。
ザクザク、と咀嚼音を鳴らせながら。
「ここ、いいとこだね。
おじさんとこの?」
『うん。
丁度一部屋空いてたから』
おじさん、というのは私の父親のことだ。
不動産会社を経営している。
このマンションも彼のおかげもあり、破格の金額で借りれていた。
家族の特権、というやつだ。
「いいなぁ…
もう一部屋空いてたりしない?」
『さぁ…
今度会った時聞いてみようか?』
「お願い」
父親と会う予定は今んとこない。
あの人は殆ど家にはいなく、実家には母親が一人寂しくペットと暮らしている。
何故離婚しないのだろう、と思うくらい彼等は不仲だった。
それは子供の頃からずっと。
休日の朝に私は昨夜作ったクッキー生地をオーブンで焼いていた。
香ばしく、甘い香りがキッチンを漂う。
『菜乃、そろそろ来るかな…』
時刻は正午過ぎ。
特に何時に来るとは約束していない。
だがお昼とはこのくらいの時間帯だろう。
—— ピンポーン——
インターホンの鳴る音が部屋じゅうに鳴り響いた。
モニターを見ると言わずもがな、菜乃だった。
私はオートロックを解除して彼女を部屋に招く。
「お邪魔しまーす!
……いい匂い。なんか作ってた?」
『クッキー。
丁度焼けたとこ』
「やったぁ!
美愛のクッキー大好き!」
菜乃は愛嬌のある笑顔を浮かべた。
彼女の手には色々手荷物が握られている。
手土産をいくつか持ってきてくれたようだ。
『お昼どうする?
何も用意してないけど』
「買ってきた!」
菜乃は手に提げていたビニール袋を目の前に掲げた。
食欲を誘ういい香りが袋からだだ漏れている。
ちゃんと用意してきてくれてたみたい。
彼女は黒髪の癖のない髪を伸ばし、ハーフツインテールにした可愛いらしい女の子。
写真投稿アプリでフォロワー100万人以上を誇るインフルエンサー。
主に新作コスメを紹介するアカウントらしい。
『ありがとう。
仕事、忙しそうだね』
「まぁ、そこそこかな。
好きな仕事だからあんまり苦に感じないんだよね」
キラキラの笑顔で菜乃は言った。
彼女はリビングのソファーに腰掛け、身体を背もたれに預ける。
紅茶の入ったグラスをテーブルに置き、焼きたてのクッキーを菜乃に差し出した。
身を乗り出してそのクッキーに彼女は手を出す。
「おいしい!」
『よかった』
「お店のよりおいしいよ」
『そりゃ、焼きたてだからね』
「食べよっか!
チキンとチキンサンド買ってきた」
ガサガサ、とビニール袋から目当てのものを取り出す菜乃。
なんともバランスの悪いラインナップだろう。
確か冷蔵庫に作り置きの副菜があった筈。
チキンづくしではあまりにも油っこすぎる。
私はそれを一品、皿に取り分けてテーブルに置いた。
キュウリとツナ缶の和えものを。
『作り置きだけどよかったら食べて。油っこいでしょ』
「ありがとう。
いただきます!」
私達は素手でチキンを貪った。
ザクザク、と咀嚼音を鳴らせながら。
「ここ、いいとこだね。
おじさんとこの?」
『うん。
丁度一部屋空いてたから』
おじさん、というのは私の父親のことだ。
不動産会社を経営している。
このマンションも彼のおかげもあり、破格の金額で借りれていた。
家族の特権、というやつだ。
「いいなぁ…
もう一部屋空いてたりしない?」
『さぁ…
今度会った時聞いてみようか?』
「お願い」
父親と会う予定は今んとこない。
あの人は殆ど家にはいなく、実家には母親が一人寂しくペットと暮らしている。
何故離婚しないのだろう、と思うくらい彼等は不仲だった。
それは子供の頃からずっと。
0
あなたにおすすめの小説
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜
柿 心刃
恋愛
僕の幼馴染で姉的な存在である西田香奈は、眉目秀麗・品行方正・成績優秀と三拍子揃った女の子だ。彼女は、この辺りじゃ有名な女子校に通っている。僕とは何の接点もないように思える香奈姉ちゃんが、ある日、急に僕に急接近してきた。
僕の名は、周防楓。
女子校とは反対側にある男子校に通う、ごく普通の男子だ。
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
半年間、俺の妻になれ〜幼馴染CEOのありえない求婚から始まる仮初の溺愛新婚生活〜 崖っぷち元社畜、会社が倒産したら玉の輿に乗りました!?
とろみ
恋愛
出勤したら会社が無くなっていた。
高瀬由衣(たかせゆい)二十七歳。金ナシ、職ナシ、彼氏ナシ。ついでに結婚願望も丸でナシ。
明日までに家賃を用意できなければ更に家も無くなってしまう。でも絶対田舎の実家には帰りたくない!!
そんな崖っぷちの由衣に救いの手を差し伸べたのは、幼なじみで大企業CEOの宮坂直人(みやさかなおと)。
「なぁ、俺と結婚しないか?」
直人は縁談よけのため、由衣に仮初の花嫁役を打診する。その代わりその間の生活費は全て直人が持つという。
便利な仮初の妻が欲しい直人と、金は無いけど東京に居続けたい由衣。
利害の一致から始まった愛のない結婚生活のはずが、気付けばいつの間にか世話焼きで独占欲強めな幼なじみCEOに囲い込まれていて――。
高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の低田悠真のクラスには『高嶺の花』と呼ばれるほどの人気がある高嶺結衣という女子生徒がいる。容姿端麗、頭脳明晰、品行方正な高嶺さんは男女問わずに告白されているが全て振っていた。彼女には好きな人がいるらしい。
ゴールデンウィーク明け。放課後にハンカチを落としたことに気付いた悠真は教室に戻ると、自分のハンカチの匂いを嗅いで悶える高嶺さんを見つける。その場で、悠真は高嶺さんに好きだと告白されるが、付き合いたいと思うほど好きではないという理由で振る。
しかし、高嶺さんも諦めない。悠真に恋人も好きな人もいないと知り、
「絶対、私に惚れさせてみせるからね!」
と高らかに宣言したのだ。この告白をきっかけに、悠真は高嶺さんと友達になり、高校生活が変化し始めていく。
大好きなおかずを作ってきてくれたり、バイト先に来てくれたり、放課後デートをしたり、朝起きたら笑顔で見つめられていたり。高嶺の花の高嶺さんとの甘くてドキドキな青春学園ラブコメディ!
※2学期編4が完結しました!(2025.8.4)
※お気に入り登録や感想、いいねなどお待ちしております。
置き去りにされた恋をもう一度
ともどーも
恋愛
「好きです。付き合ってください!」
大きな桜の木に花が咲き始めた頃、その木の下で、彼は真っ赤な顔をして告げてきた。
嬉しさに胸が熱くなり、なかなか返事ができなかった。その間、彼はまっすぐ緊張した面持ちで私を見ていた。そして、私が「はい」と答えると、お互い花が咲いたような笑顔で笑い合った。
中学校の卒業式の日だった……。
あ~……。くだらない。
脳味噌花畑の学生の恋愛ごっこだったわ。
全ての情熱を学生時代に置いてきた立花美咲(24)の前に、突然音信不通になった元カレ橘蓮(24)が現れた。
なぜ何も言わずに姿を消したのか。
蓮に起こったことを知り、美咲はあの頃に置き去りにした心を徐々に取り戻していく。
────────────────────
現時点でプロローグ+20話まで執筆ができていますが、まだ完結していません。
20話以降は不定期になると思います。
初の現代版の恋愛ストーリーなので、遅い執筆がさらに遅くなっていますが、必ず最後まで書き上げます!
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる