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28.愛の証明(後編)
しおりを挟むしかし、同じ頃。
自室でラリサは、机の上に積まれた資料の山を見下ろしていた。
「……これでもない」
セリーヌが孤児院にいたという記録は、存在しなかった。
ロランが徹底的に処分していたからだ。
そのため、孤児院出身というのはあくまで売買の際に伝えられたという公爵の証言のみで、セリーヌが売られるまで過ごしていた正確な地域すら、特定できずにいた。
唯一の手がかりとなりそうなものは、彼女の髪色——帝国ではまず見かけない、アッシュブロンドの髪。
同じ身体的特徴を持つ、隣国の古い貴族家系の存在が、ラリサの脳裏によぎる。
だが、あの一族は極端なまでに排他的だという。
公爵の亡き妻ですら、駆け落ち同然でこの帝国へ嫁いできたほどに。
もしセリーヌが彼らの血を引いているのなら、放置されるはずがない。
「……つまり、あの髪はただの突然変異」
ラリサは唇を歪めた。
「もっと下。もっと、捨てられて当然の階層……」
娼婦。浮浪者。身寄りのない女。
公爵から聞き出した推定年齢をもとに、セリーヌが生まれたと思われる時期を中心に調査させた。
公爵領内の孤児院周辺。
出産した娼婦がいた娼館。
死亡台帳。
執念とも言える追跡の末、ついに、ラリサは一人の女性に辿り着いた。
それは、公爵領内、かつて孤児院があったとされる場所の近くの娼館に関する、小さなニュースだった。
——人気のあった娼婦が、産後まもなく死亡。
「……見つけたわ」
探させたその娼婦の肖像画を使用人から受け取ると、そこに描かれていた女の顔は——
「そっくり……」
輪郭も、目元も、微笑み方ですら。
違うのは、髪の色だけだった。
ラリサの唇が、醜く歪む。
「なるほど。だからあんな女が生まれたのね」
奴隷であることは証明できなかったが、十分だ。
そもそも、帝国内で奴隷商売が行われていたことを公にしてしまえば、国際的な批難は免れない。
そうなってしまえば、皇帝である父は全力で揉み消そうとするだろう。
だが、あの女が卑しい娼婦の血を引いているという話なら、別だ。
娼館が違法でない以上、誰に咎められることもなく、あの女を公然と引き摺り落とすことができる。
「ふふ……やっぱり私は女神様に愛されているのね」
すべてが上手くいっている。
父に邪魔されることなく、あの女の醜い正体を暴き出し、ロランを救い出す。
ラリサは恍惚としたため息をつくと、愉悦に目を細めた。
「見ていなさいよ、奴隷女」
低く、甘い声で囁く。
「あんたがいかに穢れた存在なのか——彼に、全部教えてあげるわ」
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