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9.再び呑まれてみれば
「俺、普段何も言わないけど、ねーちゃん酒飲まないほうがいいと思う」
「うん」
「バイト明けで玄関の前にねーちゃんぶっ倒れてるのを発見した俺の気持ちわかる? 心配してみれば酒臭いし。おまけに変な格好だしさ。何してきたんだよ」
「うん」
「とにかく! 近所の噂になるような事するなよな! いってきます!」
「いってらっしゃい。未来、食べないならさげるわよ」
のろのろと手元をみれば、お母さんに焼いてもらった目玉焼きは黄身が破れ無惨な姿になっていた。
「ごめん、食べる」
「無理しなくていいわよ」
ご飯に崩れた目玉焼きと、それにくっついているベーコンを落ちないように載せ、お醤油をかけ食べた。次にお味噌汁をすする。
「…美味しい」
「そう? いつもとお味噌変わらないけど。未来?」
私にとっては約三ヶ月ぶりの家でのご飯だった。
ちょっと焼きすぎのカリカリベーコンも半熟すぎる目玉焼きも。定番の大根とワカメのお味噌汁も普通である。でも、このいつもの味に知らない間に餓えていたみたい。
「ごめん。なんでもない。ご馳走様でした」
目尻に出てきたものを無視して食器を重ねキッチンのシンクに置いたとき。
「お母さん今日夜勤だから戸締まりちゃんとしてね。あと好きにしなさいよ」
「え?」
泊まりなのは分かったけど、後の言葉の意味がわからない。
「人生一度っきり。後悔しないように自由に生きなさいって事」
「何で急に?」
尋ねた時には、もうドアが閉まっていた。
「一度っきり…か」
部屋に戻りベッドに横になれば、ヨーロッパ風のドレスがラグに転がっているのが見え、腕には昨日していたブレスレットがない。
頭がおかしくなったわけじゃない。
「確か冷蔵庫にお父さんが会社の人から貰った日本酒があったような」
どうしよう。
試してみる?
でも、もしあれが本当に起きた事なら。
「こっちで1日経過しただけでも向こうにしてみれば約3ヶ月経っている」
あくまでも予測だけど。
「しかも、あの場所に行けるのか確かじゃないし」
考えると怖くなった。
どうする?
今日は土曜日。
──体が先に動いた。
***
「美味しい~。お父さんが飲めないなんて勿体ない!」
いままでになく緊張しながらスタートした一人飲み。いつもは家では飲まないけど今日だけ。そんな気持ちもお酒がすすむ内にほぐれていった。
「スルメも欲しいなぁ」
ツマミに非常食用にストックされている焼鳥の缶詰をお皿にすら開けず缶のままフォークで口に放り込みながらつい洩れる。
「なんか、度数が高いだけあって酔いのまわりが早いかも…」
ふんわりしてきて、そのままベッドの縁に寄りかかり目を閉じ。
次に目を開ければ。
「久しぶりですね。朝から飲んだんですか?」
数十人が円形に設置されたテーブルを前に座っていて、皆が驚いたような顔をし固まっていた。ただ一人を除き。
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