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10.変態ではないからね!
両開きの扉が背後で閉まり急に静かになった。
「よかったんですか?」
おそらく会議中だったはず。
「当たり前ですよ。こちらのが重要に決まっているじゃないですか」
こちらは夜なのだろう。廊下は薄明かりだ。そんな夕闇の中で爽やかさ全開の笑顔が間違いなく私に降り注がれていた。というか。
「あの」
「何ですか?」
「姫だっこは重いと思うし、なにより心臓に悪いので降ろしてもらえますか?」
何にも伝わっていないのか、キョトンとした後に。
「でも、ミライが先に俺の膝の上に来たんですよ?」
「それは! 私だって予想外で!」
まさか人の膝の上に移動するなんて思わないでしょ!
「じゃあ、これで」
「え? うわっ、なお悪いじゃないですか! 」
横抱きからの縦抱きになって、バランスをとるために必然的にグランさんの肩を掴めば。
「えぇ!?」
抱き締められていて。
「グランさん?」
なんか様子が変だよ?
抱きつかれたせいで私の胸あたりにグランさんの顔があるから表情がみえない。
「…無事でよかった」
くぐもった声だけどそう聞こえて。
他人事じゃなくて本当に心配してくれたのが伝わってきて、なんだか嬉しくなって。
ちょっと躊躇ったけど、目の前にある少し茶色の猫っ毛の髪をなでてみたら、予想以上に触り心地がよく止まらなくなってきたなと思えば。
「…ミライは危機感ないですね」
その声に我にかえった。というか、グランさんの息が、恐らく彼の高い鼻が私の残念な胸元に当たっている!
そういえば、私、シャワー浴びてキャミとこちらではアウトの短パン姿!
ヤバイ!
「私、変態じゃないですから! これは朝でシャワー浴びたばっかりだったんです!」
「シャワー? 湯を浴びたんですか? 確かにいい香りがしますね」
ああっ!
だからスンスンと顔を近づけないで!
どうしたらいい?!
「焦る姿も可愛いですけど、風邪をひかれても困りますのでこのへんで止めておきますね」
慌てる私をよそにクスクスと笑うグランさん。だから、息がかかるから離れてと言おうとしたら宙に浮く感覚の後、出窓の縁に降ろされた。
「着ている物ですみませんが」
そう言いながら制服の上着を脱いで着せてくれた。なんか片手でボタン外す仕草カッコ良すぎなんですが。
「ん?」
「な、なんでもないです!」
問う視線をもらいましたが言えません。
「…手が出ない」
悲しいかな。腕も背も女子には笑ってはすまされないお胸もこの国の平均以下の私には男性のサイズもさることながら、ブカブカだ。
「見せたくないのが一番ですけど。その姿もまたそそるなぁ」
……は?
「えっ、今なんて」
優等生のようなグランさんから、まさかの。聞き間違いだよね?
「じゃあ、とりあえず着替えかな。お腹はすいてませんか?」
「ええっ? やっぱり抱っこ?!」
いきなりまた抱えられて歩き出すグランさん。
「だって靴はいてないですし」
あっ、そうでした。
「いや、でも歩いて後で足を洗えば…」
「却下」
バッサリ切られ、なお諦めない私に。
「今度は、その剥き出しの胸元に跡つけましょうか?」
笑っているけど、この人本気だ。緑の瞳にじっと見つめられて。
「大人しくします…」
「よろしい」
くぅ。
なんか面白くない!
*~*~*
「目の毒だな」
「嫌がらせだ」
「うう。俺も恋人欲しい。やっぱり噂の通り二人は恋人同士なんですかね?」
「「知るか!」」
未来は、廊下で警備をしている騎士達の存在に全く気づいていなかった。
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