捕まり癒やされし異世界

蝋梅

文字の大きさ
11 / 31

11.壁ドンの怖さを知る


「では、必ず此方の扉に戻ってきて下さい」
「はい。ありがとうございます」

 此方に再び戻り二日目、私は城内にある書庫に来ていた。護衛してくれている若い騎士さんに念をおされながら古めかしいドアを開ければ、独特な匂いに包まれる。

「図書館とおんなじだ」

 手すり一つとっても重厚な雰囲気で豪華である。でも自分の世界にある図書館と同じ本の匂いにほっとする自分がいた。

「よし。まず奥から見てみよう」

 今進めている騎士様ボイスのこれからを具体的に考えなくてはいけないし他のお話も追加したいなぁ。そんな事を考えながら豪華な椅子の上に荷物を置き探検を始めた。



*~*~*


 何処に何があるか把握ができないなか、奥まった場所で他と違う一際地味な背表紙の本を見つけた。

「なんか暗いから読みづらい。これは…」

 その本は、厚みがとても薄い作りで気になって手をのばせば突如、脇から伸びてきた手が目当ての本をさらっていき。

「夜の教本」

 男の人の声が頭のすぐ近くで聞こえた。というか何その怪しい題名は?!

「ふあっ?! とっ」

 そして小さな踏み台に乗っていた私は、お決まりのごとくバランスを崩し。

「あ、ありがとうございます」

 スパイシーな香りを感じれば片腕で抱え込まれた。なんとか声は震えないようにお礼は言えた。でも、顔も見えない人に背後から抱きしめられているこの状況はこわい。

「あのっ、もう大丈夫ですので! ありがとうございました!」

無理矢理体を捻ってみれば。

 ワインレッドの不揃いな髪に濃い青の目を持つ恐らく私より年下であろう整いすぎるイケメンが至近距離にいた。

「今から実践するか?」
「えっ?」

 そのイケメンの口角があがって体が離れた。ほっとしたのも一瞬で反転させられ両腕をあげられていた。

「忠実に最初から始めよう」
「ちょっ、やめ」

 足元にはイケメンの片足が間にいれられ、拘束された手首は更に強く掴まれて強い痛みを感じた。

「グランより良いと思うがな」

 何故グランさんの名前が? そんな事を考えられたのは一瞬だった。

 耳元で息を吹き込むように囁かれた為反射的に体が動き、そんな様子の私にイケメンがクッと低い笑い声をだした。

「つっ」
「異世界人は感じやすいのか?」

──この人は誰?

見たこともない年下の子に腕を掴まれ首元に顔をうめられた。捕まれている手首を外したくて強く動かしてみたけど、びくともしない。

「髪は美しいが、特に力を持っていないと聞いていたのだが。どうやら間違いだったようだな」

 肌に感じていた湿ったような感覚は移動していく。

嫌だ!
気持ち悪い!

 もがきつつも頭の隅で諦めがうまれてきた。奥まった暗いこの場所に気がつく人なんて。

「恐れながら!メディスワーグ様がお呼びです!」

 夕方の日の差し込む中、ピンチを救ってくれたのは、この扉から必ず戻るようにと念をおしてきた護衛騎士さんだった。

「お前…誰にものを言ったかわかっているんだろうね」

 赤い髪の男は、這うような低い声で若い騎士さんに言った。

どうしよう。

 顔が離れてほっとしたけど、やっぱりこの赤い髪の人は地位がかなり高いのかもしれない。

「はっ。存じ上げております!」

 そんな圧にも負けず金髪の若い護衛騎士さんは、目をそらさず赤髪に言い切った。何人か人の声もしてきたから、護衛騎士さんの言葉は本当なのかもしれない。

「お前の顔は覚えた。次はない」

 赤髪さんは、そう騎士さんにいい放ち、私に再度目を向け重さをかけられ、耳元で言われた。

「また会おう」
「遠慮します!」

二度と会いたくありません!!

「まあ、そう言うな」

 赤髪男子は体をゆらし笑いながら去っていった。

「大丈夫ですか!?」

 完全に姿が見えなくなったのを確認して私は、膝から崩れ落ちた。

「つ、これを。今キャル副隊長とグラン様が来ますので」

 金髪の護衛さんが、紺色のマントを頭の上からかけてくれた。

 手を触れないようにしてくれたのは気のせいじゃないよね。

「ごめんなさい。ううん、ありがとう」

頑張って笑ってみた。

ちょっと声が震えちゃったけど、気づかれていませんように。

 手首を見たら大きな手のあとがついていたので少し上げていた袖を限界まで伸ばし隠した。

「ミライ!」

 聞きなれた声にほっとしたけど、伸ばされた手につい身体が不自然に動いてしまった。

ああ。
どうしよう。
顔、上げらんない。

 今、上げたら耐えてる涙が端から流れそう。

そう心の中で葛藤してたら、体が浮いて。

「今は、何も話さなくていいです」

 抱きかかえられていた。嗅ぎ慣れたレモンバームのような香り。

ああ。

 この人は、グランさんは怖くない。私は、腕の中でやっと力を抜いた。


感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

召喚先は、誰も居ない森でした

みん
恋愛
事故に巻き込まれて行方不明になった母を探す茉白。そんな茉白を側で支えてくれていた留学生のフィンもまた、居なくなってしまい、寂しいながらも毎日を過ごしていた。そんなある日、バイト帰りに名前を呼ばれたかと思った次の瞬間、眩しい程の光に包まれて── 次に目を開けた時、茉白は森の中に居た。そして、そこには誰も居らず── その先で、茉白が見たモノは── 最初はシリアス展開が続きます。 ❋他視点のお話もあります ❋独自設定有り ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付いた時に訂正していきます。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

【優秀賞受賞】賭けから始まった偽りの結婚~愛する旦那様を解放したのになぜか辺境まで押しかけて来て愛息子ごと溺愛されてます~【完結】

Tubling
恋愛
無事完結しました^^ 読んでくださった皆様に感謝です! この度、こちらの作品がアルファポリス第19回恋愛小説大賞にて「優秀賞」を受賞いたしました! ありがとうございます!!<(_ _)> ルシェンテ王国の末の王女カタリナは、姉たちから凄惨な嫌がらせをされる日々に王女とは名ばかりの惨めな生活を送っていた。 両親は自分に無関心、兄にも煙たがられ、いっそ透明人間になれたらと思う日々。 そんな中、隣国ジグマリン王国の建国祭に国賓として訪れた際、「鬼神」と恐れられている騎士公爵レブランドと出会う。 しかし鬼とは程遠い公爵の素顔に触れたカタリナは、彼に惹かれていく。 やがて想い人から縁談の話が舞い込み、夢見心地で嫁いでいったカタリナを待っていたのは悲しい現実で…? 旦那様の為に邸を去ったけれど、お腹には天使が―――― 息子の為に生きよう。 そう決意して生活する私と息子のもとへ、あの人がやってくるなんて。 再会した彼には絶対に帰らないと伝えたはずなのに、2人とも連れて帰ると言ってきかないんですけど? 私が邪魔者だったはずなのに、なんだか彼の態度がおかしくて… 愛された事のない王女がただ一つの宝物(息子)を授かり、愛し愛される喜びを知るロマンスファンタジーです。 ●近世ヨーロッパ風ですが空想のお話です。史実ではありませんので近世ヨーロッパはこうだというこだわりがある方はブラウザバックをお願いします。 ●本編は10万字ほどで完結予定。 ●最初こそシリアスですが、だんだんとほのぼのになっていきます^^ ●最後はハッピーエンドです。

〖完結〗終着駅のパッセージ 

苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。 その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。 婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。 孤独な結婚生活を送る中。 ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。 始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。 他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。 そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。 だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。 それから一年ほどたった冬の夜。 カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。 そこには彼の想いが書かれてあった。 月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。 カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。 ※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。 ※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。 稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中