捕まり癒やされし異世界

蝋梅

文字の大きさ
30 / 31

30.ジュリアと護衛騎士その1

~ 侍女ジュリア ~
 

 ジュリアは、閉めた扉の背に思わずよりかかった。

『私わたくしの仕える主はこの部屋の主人ミライ様でございます』

私わたくしとしたことが。

 仕える者として失格だろう。ただ間違っているとは思えなかった。

 自分の仕える主人は相手の事を優先しすぎる。月のものも以前滞在された時は、薬湯を服用できたが、今回は吐き気が強く受け付けなかった。向こうの世界の薬が数回分あったとの事でほっとした。

 そうだわ。確か使用する品で新しい物が出たと同僚が言っていたので聞いてみましょう。シーツや敷物を汚したらと気を遣い過ぎる主には快適に過ごして頂きたいわ。

それにしても。

「はぁ。やはり先程はやり過ぎたわ。担当を外されるかしら?」
「えっ」

 突然の自分以外の声にざっと無意識に距離をとり、つい構えてしまった。

 扉付近に警護の騎士がいたのを忘れていた。

 ジュリアは代々武術に優れている家の出だ。その為ある程度の訓練は受けていたというのに。何をしている時でも周囲を感じねばならないと教わっていた。

 なによりも構えた自分が恥ずかしい。そ知らぬふりでゆっくりと構えを解いた。

「あの、急に声をあげすみませんでした」

 礼をし立ち去ろうとすれば、再度やわらかい声がした。仕方なく見れば、見に覚えのある若い騎士だった。

 確かあの隣国の王子がミライ様にちょっかいを出した際に止めに入ったと他の者達が話していた。えーっと確か名前は。

「私は、マイルス・ザグリーと申します」

 悩んでいたのが分かってしまったらしい。ザグリー家というと…上流貴族だ。私の家も貴族で名前は武術のおかげで有名だが、階級はザグリー家より劣る。

「少し考え事を失礼致しました。私わたくしはミライ様つきの侍女、ジュリア・ノルジアと申します。騒がしくして申し訳ございませんでした」

 今更ながら淑女の礼をとり、正直、悪いとはこれっぽっちも思ってないが謝罪をした。

「あっ、いえっ俺、いや私の方こそ急に声を出してすみませんでした。あの、ミライ様の体調は大丈夫でしょうか?」

 貴方は護衛でしょう? と言いそうになったけれど本当に気にかけているようなので、やめた。

「顔色はまだすぐれませんが休めばよくなるかと」
「よかった。とても怖い思いをさせてしまったので穏やかに過ごしてもらいたくて」

 繕っていはいない、本心からの言葉に今度こそ警戒を解いた。そして、そう。

「同感ですわ。ミライ様は優し過ぎるので不安です」

 細くとも剣も操る魔術師団長なんて体力がありあまる方だ。私の主が壊れてしまわないように見守らねば! だいたい騎士なんて体力馬鹿ばっかりで。

「えっと、ジュリア様、心の声が漏れまくっています」

はっ! いけない興奮して思わず。

「私わたくしとしたことが。度々ご迷惑をお掛け致しました」

今のはついミライ様が心配で。

「えっと、ジュリア様。その体力馬鹿ですが、明日の夜に食事をお誘いしたいのですが」

えっ?

つい、いないのは理解していても周囲を確認してしまう。

「あの、私わたくしですか?」
「はい! できれば付き合って下さい。あっ、まずは食事くらいからでいいので」

「…私、可愛げがありません」
「充分可愛いです!」

何故か心がざわついて、焦ってしまう。

「…見た目と違ったと言われ続けておりますので」

 同僚には、見た目は柔らかな雰囲気なのに武器を手にした瞬間、別人で怖いと言われているのを知っている。

「どうしてですか? 可愛くて武術に優れているなんて素敵です。なので問題ないです。それで、最近できた店がとても美味しいのでよかったら」

──この騎士の名を知ったのはつい先程である。

「あと、私、いや俺は、ミライ様がいらしてから、なんか城に新しい風が入ってきているように感じます。だからミライ様が好きなジュリア様には辞めてもらいたくないです。というか俺が悲しいです!」

それは同感だわ! ん? どうして私わたくしがいなくなると貴方が悲しいのかしら?

「なので是非、素敵なミライ様について語り合いましょう!」
「はい!」

……あら? なんだか勢いに乗せられてしまったわ。まあ、無害そうだし。

 なによりミライ様を支える同志に悪い奴はいないはず!

 とりあえず「本当に一緒に食事してもらえるんですね?」と念をおしてくる目の前の騎士に肯定の意をこめ微笑んでみるジュリアだった。





~護衛騎士その1~



「はぁ。やはり先程はやり過ぎたわ。仕事変えないといけないかしら?」
「えっ」

 もの凄い勢いでグラン様がミライ様の部屋に入られ、またその後ろにミライ様付きの侍女、ジュリア様もご一緒だったけれど、直ぐにジュリア様だけ出てきた。そしていつものふんわりとした雰囲気はなく残念そうに呟いた一言に俺は、つい言葉を発してしまったのだ。

 その瞬間、彼女の雰囲気は変化した。構えた隙のない姿に騎士隊の新入りじゃあやられているなと、どこか冷静な自分と、なんで気になる人を驚かしたんだ! と焦る自分がいた。

 構えた自分が恥ずかしいのか、赤らめている顔は、とても可愛くて。でも直ぐにこの場を離れてしまいそうだと気がついた俺は、勇気を出して声をかけた。

俺の存在は紙よりも薄かった!

 護衛に就いて多少は経過しているのに俺はその他だと知り泣きそうになったのをこらえて自己紹介をした結果。

 護衛その1からマイルスと認識された!

 彼女にとっては護衛なんて顔が判別できればいいんだろうとは思っていたけど、しばらく心の傷は残りそうだ。

ジュリア様、俺は木から降りれなくなった動物をよじ登って救い、大量の葉っぱをくっつけながら、笑いかけている姿を見た瞬間、もう二年も前からお慕いしていたんです!

 接点がなかった俺に舞い込んできたこの任務は、まさに運命が味方したとしか思えない。

 俺は、もう少し勇気を出し、ミライ様の体調を伺った。部屋に運ばれた顔色は真っ青だったので、あのトワイラルの王子の時を思いだし、心配が増していた。大事ないと聞きほっとした。

「よかった。とても怖い思いをさせてしまったので、穏やかに過ごしてもらいたくて」

 俺の言葉に、驚いたようなジュリア様と話すうちに彼女はとても自己評価が低い事に気がついた。

 可愛くて武術に優れているなんて、長所にしかならないだろう!

 なにやら弱っている彼女に、勢いで食事をとりつける事ができた!

ミライ様! 貴方のおかげです! 

 いえ、本当に皆、明るい裏のないミライ様の姿に癒されてます! 異世界からいらしたと最近知りましたが、なんか納得してしまいます! 

 なんせ、あの一見穏やかなでも実は癖のありすぎるグラン様を手なずけているのですから!俺も頑張って恋人に昇進してみせます!

ジュリアの笑みを見て気合いをいれたマイルス(19歳)であった。


感想 0

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

召喚先は、誰も居ない森でした

みん
恋愛
事故に巻き込まれて行方不明になった母を探す茉白。そんな茉白を側で支えてくれていた留学生のフィンもまた、居なくなってしまい、寂しいながらも毎日を過ごしていた。そんなある日、バイト帰りに名前を呼ばれたかと思った次の瞬間、眩しい程の光に包まれて── 次に目を開けた時、茉白は森の中に居た。そして、そこには誰も居らず── その先で、茉白が見たモノは── 最初はシリアス展開が続きます。 ❋他視点のお話もあります ❋独自設定有り ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付いた時に訂正していきます。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

【優秀賞受賞】賭けから始まった偽りの結婚~愛する旦那様を解放したのになぜか辺境まで押しかけて来て愛息子ごと溺愛されてます~【完結】

Tubling
恋愛
無事完結しました^^ 読んでくださった皆様に感謝です! この度、こちらの作品がアルファポリス第19回恋愛小説大賞にて「優秀賞」を受賞いたしました! ありがとうございます!!<(_ _)> ルシェンテ王国の末の王女カタリナは、姉たちから凄惨な嫌がらせをされる日々に王女とは名ばかりの惨めな生活を送っていた。 両親は自分に無関心、兄にも煙たがられ、いっそ透明人間になれたらと思う日々。 そんな中、隣国ジグマリン王国の建国祭に国賓として訪れた際、「鬼神」と恐れられている騎士公爵レブランドと出会う。 しかし鬼とは程遠い公爵の素顔に触れたカタリナは、彼に惹かれていく。 やがて想い人から縁談の話が舞い込み、夢見心地で嫁いでいったカタリナを待っていたのは悲しい現実で…? 旦那様の為に邸を去ったけれど、お腹には天使が―――― 息子の為に生きよう。 そう決意して生活する私と息子のもとへ、あの人がやってくるなんて。 再会した彼には絶対に帰らないと伝えたはずなのに、2人とも連れて帰ると言ってきかないんですけど? 私が邪魔者だったはずなのに、なんだか彼の態度がおかしくて… 愛された事のない王女がただ一つの宝物(息子)を授かり、愛し愛される喜びを知るロマンスファンタジーです。 ●近世ヨーロッパ風ですが空想のお話です。史実ではありませんので近世ヨーロッパはこうだというこだわりがある方はブラウザバックをお願いします。 ●本編は10万字ほどで完結予定。 ●最初こそシリアスですが、だんだんとほのぼのになっていきます^^ ●最後はハッピーエンドです。

騎士団寮のシングルマザー

古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。 突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。 しかし、目を覚ますとそこは森の中。 異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる! ……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!? ※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。 ※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。

〖完結〗終着駅のパッセージ 

苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。 その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。 婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。 孤独な結婚生活を送る中。 ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。 始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。 他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。 そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。 だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。 それから一年ほどたった冬の夜。 カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。 そこには彼の想いが書かれてあった。 月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。 カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。 ※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。 ※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。 稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。