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38.感慨深いわ
しおりを挟む「二人の成長した様子が感慨深いわね」
以前会った時には既に成人していたけれど、中身より外見が大人びていたというか。
「カナは変わりないですね」
「ハイハイ、どうも」
お世辞なのはわかりきっているので適当に返事をしておく。
それよりも、やはり確認してしまった。
『ギュナイルは生きてるの?』
数分前にレイちゃんに尋ねた言葉は、生存しているかという意味ではない。
「とりあえず中身が死んでなくてよかったわよ」
あの時、私はランクルにこの世界で移住すると伝えるつもりだった。私の言葉で端正な顔が歪む。
「カナの判断は、当時の私には酷でした。話すことは叶わなくなったとしても、近くに存在してくれるなら耐えられると。なのに貴方が選んだのは完全な拒絶だった」
顎で切り揃えられている銀の髪が項垂れた顔に影を落とした。そんなギュナイルの動きに色っぽいなと思う私は不謹慎だろうか。
「カナ、私達は真面目な話をしているのですが」
「ちゃんと聞いてるわよ」
やれやれ変わらず鋭いな。
「本当は、君達と暮らすって言う予定だったのよ。でも、ギュナイルの顔を見てやめたの」
今更こんな話をしても意味があるのかわならないけど、どうやらまだ迎えが来ないようだし仕方がない。
「あの時、私が残ればギュナイルのメンタルは更に病むと思ったし、それだけじゃなくてランクルにも言えるんだけど」
上手い言葉が出ないな。
「そう、依存になるから」
正確には共依存か。
「人それぞれの考えがあるけど、私は嫌だった」
二人を振り回したのは認める。
「今ならば、望みはあるのか? この場にいるというのはそういう意味だと捉えているんだが」
至極真面目なランクルは、ザクザクと切り進めてくる。刺されそうな視線も重たいというか痛いというか。
「困ったな。レイちゃんが急に現れて落ちたというか転移してきたのよ」
「月日は経過しましたが、俺達の気持ちは変わりない。カナは?」
真っ直ぐ過ぎよね。まぁ、そこが良いとこでもあるんだけど。
「正直、今で手一杯なの」
自分の現状を維持する事しか考えていない。
「此方に来ていただけたら、病も完治するとレイルロード様が言っていた」
ランクルってレイちゃんを様づけしてたの?
「このままだと余命幾ばくもないのですよね?」
レイちゃん、君はいつから私のストーカーになっていたのかしら?
「今すぐってわけじゃないけどね」
ギュナイルの言う通り私の身体は緩やかにだが、確実に弱っている。
「年配の方々をケアするのが仕事だし、死は身近に感じてはいたけどね。まだ先だと思っていたのは否めない」
まさか自分が、こんなに早く終点行きの電車に乗るとわね。
「人生って、わかんないわよね」
だからこそ面白いんだけどさ。
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