本を片手に今夜は何を食べようか

波間柏

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9.久しぶりの平日休みに

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「うーん、平日しかやってないって不便だなぁ」

 普通なら旅行とかで有給を使うべきよね。まぁ、捨てるよりは断然良いけど。

「免許更新って受け取りも含め土日にやってくれないかなぁ。世の中、働いている人なんて大勢いるはずなのに」

 そして、冒頭と被るが、社会人をやっていて定期的に感じる愚痴が口から出てしまう。

 平日で、しかも夜はやってないって不便。市役所や銀行窓口も、あまり利用はしないけれど夜に短時間開けてくれた嬉しいな。

ガサッガサッ

「しかし、買いすぎちゃった」

 トートバッグ1つ、エコバッグ1つに。

「足りなくて袋を購入したのが悔しい」

 たかが五円されど五円。なによりエコバッグを持参していてのミスが許せない。

「あぁ、しかも破れてる!」

 ラップの角に耐えられなかったのか、そこから縦に切れている。

「なんとか家まで持ってよ~!」

 道路で物をぶち撒くのだけは裂けたいと、私の足は、慎重かつ小走りになった。



✢~✢~✢


「うん、いい調子!」

 魚類では、シシャモを焼いて、その間にブリを醤油に付けておく。肉類は、鶏ひき肉はそぼろにして、豚肉の切り落としは、一部冷凍し、残りは生姜とドライガーリックで炒めた。

 仕事の日は、もう作れないと想定して、とりあえずメインは作り冷凍庫へストックする。

「やっと暑さも和らいだから、食べる気になり作る気がしてきたなぁ」

 食べたい気持ちは作る気力に繋がるのは間違いない。

「あれ?」

 珈琲を飲みながら一息ついていたら、チカチカとお知らせだ。

『今日、空いてる?』

 修からスタンプと簡素な一文が来ていた。先日のご飯から約二週間くらいかな。結局、もやもやしたまま今日に至る。とりあえず、有給で家に居ると入れたら、直ぐに既読がついた。

『夕方、寄っていい?』

 インドアな私とは違いフットワークが軽い彼には友達も多かろうに。転勤前の貴重な時間を私に使っていいの?

「あ~っ、なんか卑屈で自分にイライラする⋯」

 ベッドに放り投げたスマホを悩んだ末に膝を伸ばして再び掴んで。

『どうぞ』

 可愛いスタンプもつける気がおきなくて修の事を言えたもんじゃないな。



✢~✢~✢



「返事ないなら勝手に解釈するんだけど」

 あれ、出張前の挨拶も兼ねて夕飯食べに来ただけじゃないの?

「な、なんで、こんな情況に⋯」

 どうして私が、修に壁ドンならぬ床に転がされているわけ?


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