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30.楓&ラウ
しおりを挟む「あ~、疲れたぁ」
椅子に寄りかかり、めいっぱい伸びをすると気持ち良いな。
あれからお城に戻り、マリーさん達にお風呂に入れられ今は客間から出られる庭に椅子をひっぱり外で夕御飯中である。
朝以降何も食べていないからお腹ぺこぺこだ。まあ脱水とかにならなくてよかったよ。
「カエデちゃんは、まず恥じらいという言葉を覚えたほうがいいかもね~」
石のベンチで長い足を組み優雅にお茶を飲んでいるラウさんは、ふんぞり返っている私を残念そうな顔で見ている。
「ラウさんって意外と品ありますよね」
そう、マリーさん達もそうだか、背筋が伸び動きに無駄がなく優雅なんだよね。
「意外ってなんだよ~。失礼だねぇ」
「あっ」
ラウさんが私のお皿からサンドウィッチのような物を摘まみ食べてしまった。
「それ最後に食べようと思っていたのに!」
「好きな物は先食べないと~」
「……もーいいです!」
大人げないですよ私は。
「じゃあ代わりに」
ラウさんが私の左腕をとり皆からのブレスレットのブラウンの石に人差し指で触れた。赤い淡い光が現れ石に吸い込まれたように見えた。
「はい、おしまい」
「また虫除けですか?」
光の色が違うからまた別かな?
「はぁ? なにそれ?」
違うらしい。
「ルークさんも今みたいに光を石に入れてくれたんです。虫よけって。私の世界に夏に血を吸う蚊というのがいるのですが、この世界は寒くてもいるのかな?」
「…カエデちゃん虫じゃないと思うよ」
「え?」
「流石にルーク副隊長殿に同情するなぁ」
私を残念な子みたいな顔して見ないでもらえます?
そういえば、確か。
「光といえば、閉じ込められていた時にブレスレットが一瞬光ったような気がしたんです」
あぁとラウさんが教えてくれた。
「気のせいじゃないよ~。そのブレスレットのおかげで早めに見つけられたんだ。ルークが追えるように印をつけてあったんだよ」
「なんか怖っ」
それってGPSですよ。
「それでも派手にやった後だったけど~」
いつの間にかラウさんは私の前にいて身体を屈ませ私の頬に指先でスルッと触れてきた。顔が近い…。
この世界の人はスキンシップ多いのかな。
「痛かったな」
「あっ」
じんわりと頬が暖かくなった。
「俺は、分野が違うから効果は少しだけ」
「有り難うございます。ズキズキがなくなりました」
あれ?
終わりましたよね?私のボブくらいになった髪を手でくるくるしないで下さい。
「あの手を」
「一つ気になるなぁ」
口調は軽いけど違う。あの外出した時の怖い気配だ。
更に顔が近づいてくるからラウさんのブラウンの長い睫毛がよく見えた。
「きっと防御かけてたよね?なのになんで?」
頬を今度は手のひらで撫でられくすぐったい。
「城に戻る時、自分はイメージで膜をはるから悪意などの選別が弱いのかもとか言ってたけど」
言い逃れは無理そうだなぁ。
「言ってもいいですけど、ルークさんには内緒で。あとモフらさせて下さい!」
首を傾げるラウさん。
「うーん興味のが強いからいいよ。モフるってわからないけど」
「わざとです」
「は?」
「だから、わざと叩かれたんです」
その君大丈夫?っていうような顔止めて下さい。
✻~✻~✻
「痛いのが好きなの? ま、まあ人それぞれあるよね。色々と」
後退りしているし。そもそもなんて事を言うんですか!
「違います!ちょっと待っていて下さい!」
私はラウさん説明する為に部屋に小走りで戻る。
「手を出して下さい」
息をきらせながら再び庭に戻り手を出してとお願いすれば不思議そうな顔をしながらも出してくれた。
その手に部屋から持ってきた辛子おじさんのカフスを落とす。そして私は周りを見渡し丁度いい凹凸の少ない石の壁を見つけた。
「こっちに来てもらえます?」
手でおいでをしてラウさんを呼ぶ。そして、念のためもう一度外から見えなくし音も遮断と呟いておく。
私は腕輪に触れ、金色の石を壁に向け囁いた。
「再生」
スッと石から細い光が出て壁に広がりスポットライトのようになる。
『泣き叫んでいるかと思いきや余裕だな』
そこには辛子おじさんが、音声付きで映っていた。隣にいるラウさんを横目で見上げれば。
固まっていた。
やっぱり録画のような物はないのかな。まぁ、普通は石にこんな事が出来るわけないだろうけど。
この腕輪が特別だからだろうな。ヴィラはこんな事に使って怒るかな?
そうこうしている内に映像は終わり光も消えた。ちらっともう一度、隣を見上げてみれば、ラウさんと目が合った。ニヤリとラウさんが笑っている。
なんかこれはこれで怖い。
「カエデ、アンタやっぱり面白い」
呼び捨てだし遂にアンタ呼ばわりだ。
「でも、多分これは証拠にならないでしょう?」
何故? と目が聞いてくる。
私は続ける。
「ラウさんの反応をみるに、この国には似たような物すらない。私はこの国、この世界の人間じゃないから、勝手に辛子おじさんを陥れる為に映像を作ったと言われる可能性があるかも」
そして一番のネックは。
「しかも私には地位が高い人の後ろ楯がないけど、相手は相当位が高い。などを後から考えて、ただの叩かれ損でした」
ホント痛い思いしただけだったな。
ラウさんが何故か頭をポンポンしてくる。
「頭もそこまで馬鹿じゃないんだよなぁ」
「私の評価って…」
「馬鹿な部分はとりあえず一個だけな」
ラウさんがしゃがみ私と目線を合わせてきた。
「自分の体を傷つけるのは禁止だ」
なんとなく素直にはい。と言いたくない。
また顔に出ていたのだろう。ラウさんが私の眉間を人差し指でつつきながらじっと見てくる。
「カエデちゃん、お腹いっぱいになった?」
「?はい」
唐突に聞かれた。
返事をした瞬間、頭の後ろに手が置かれ引き寄せられてラウさんの胸に顔がぶつかる。
「とりあえず、お休み」
体の中に暖かい何かが流れ私は意識を手放した。
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