62 / 72
61.ガイン〜デュラスSide〜
しおりを挟む
「嘘だろ? あの身体で転移しやがった!」
この部屋だけでなくカエデが使用している主な場には転移できないよう術をかけていたのだが、あっさり破られた俺は怒りよりも強靭な精神に驚いた。
歩くのもやっとだったはずだ。確実にヴィラスでぶっ倒れている。
「無理をしてでも戻りたかったんでしょうな」
宰相は椅子に座り冷めた茶を飲みながら呟いた。
そんなに気に入らないのか? いや、ガインがヴィラスに劣るって事か?
「カエデ殿が自ら訪れたくなるような国にすれば良いのですよ」
宰相にしては珍しく楽しそうに笑ってやがる。
「殿下が変えてみてはいかがかな。兄弟共に生きられるようにされたらカエデ様も満足されるかと」
防御と防音の結界の中とはいえ、クソジジイ、無茶を言いやがる。
だが、カエデが去る前にのたまった台詞が過った。
*~*~*
「この国で王様になるのは、長男じゃなくて実力主義なんでしょう? で、一番以外は他の兄弟は全て殺されちゃうって聞いたんだけど。それって悲しいし、凄くもったいないよね」
モグモグ飯を口に入れながら話す女は、俺の周りでは見たことがない。
いや、コイツは何と言った?
カエデは、喉を鳴らしながら飲みこめば、今度は菓子に手を出し始めて手が止まらない。
「勿体ないとは?」
その動作を目で追いながら問う。
「だって、王族の子達は、幼少期から超一流の先生に勉強を教わっているんでしょう? それこそ、各分野に特化した人材になるだろうから、より良くなるじゃない!」
コイツ…行儀が悪いが愚か者でらない…のか?
「武力に秀でた人は国境で守ったり。また数字に強い人は経済とか。お母さんが違ったりはあっても、小さい時からずっと一緒なんでしょ? あっ、でも偏りはよくないから経験がある第三者を数人上に置いて監視してもらうの。そうすれば、暴走した時も止めれるし、それ用に軍とか独立で1つ作ったりもありかな。うん、我ながら良いと思うなぁ」
何故か長かった黒髪が、今朝は首筋あたりまで短くなり、強く頷くカエデに合わせ揺れる。
カエデは、間をあけず話を続け、いきなり俺の方へ顔を向けてきた。
「王様から町の人達まで心身共に元気が理想だよね!」
……この生き物は、何なんだ?
スゥーリーすら一人で乗れず、転移すら酔う女が国の将来を語っている。
だが、見つめてくる真っ直ぐな黒い瞳は真剣だ。
冗談の欠片すらない。
お前には関係ないだろう?
何故、気を失うほど力を使い自分を犠牲にできる?
何故、不安そうに俺も他の兄弟も生き抜けと言う?
あぁ、カエデは馬鹿なんだ。
だが、あのくだらない夜会の時から目が離せない。
何故か、無性にこの馬鹿者を手に入れたくなってきた。
だが、今の俺ではカエデを側わに置く事は叶わない。
「宰相」
「何か?」
未だ呑気に茶をすすっている宰相に声をかけた。
「時間、あるか? 武器庫の件を挽回する為策を練る」
「面白そうですね。まずはお聞きしましょうか」
俺は宰相に協力させる為に頭をフル回転させ始めた。
カエデ、必ずお前と国の両方を手に入れる。
この部屋だけでなくカエデが使用している主な場には転移できないよう術をかけていたのだが、あっさり破られた俺は怒りよりも強靭な精神に驚いた。
歩くのもやっとだったはずだ。確実にヴィラスでぶっ倒れている。
「無理をしてでも戻りたかったんでしょうな」
宰相は椅子に座り冷めた茶を飲みながら呟いた。
そんなに気に入らないのか? いや、ガインがヴィラスに劣るって事か?
「カエデ殿が自ら訪れたくなるような国にすれば良いのですよ」
宰相にしては珍しく楽しそうに笑ってやがる。
「殿下が変えてみてはいかがかな。兄弟共に生きられるようにされたらカエデ様も満足されるかと」
防御と防音の結界の中とはいえ、クソジジイ、無茶を言いやがる。
だが、カエデが去る前にのたまった台詞が過った。
*~*~*
「この国で王様になるのは、長男じゃなくて実力主義なんでしょう? で、一番以外は他の兄弟は全て殺されちゃうって聞いたんだけど。それって悲しいし、凄くもったいないよね」
モグモグ飯を口に入れながら話す女は、俺の周りでは見たことがない。
いや、コイツは何と言った?
カエデは、喉を鳴らしながら飲みこめば、今度は菓子に手を出し始めて手が止まらない。
「勿体ないとは?」
その動作を目で追いながら問う。
「だって、王族の子達は、幼少期から超一流の先生に勉強を教わっているんでしょう? それこそ、各分野に特化した人材になるだろうから、より良くなるじゃない!」
コイツ…行儀が悪いが愚か者でらない…のか?
「武力に秀でた人は国境で守ったり。また数字に強い人は経済とか。お母さんが違ったりはあっても、小さい時からずっと一緒なんでしょ? あっ、でも偏りはよくないから経験がある第三者を数人上に置いて監視してもらうの。そうすれば、暴走した時も止めれるし、それ用に軍とか独立で1つ作ったりもありかな。うん、我ながら良いと思うなぁ」
何故か長かった黒髪が、今朝は首筋あたりまで短くなり、強く頷くカエデに合わせ揺れる。
カエデは、間をあけず話を続け、いきなり俺の方へ顔を向けてきた。
「王様から町の人達まで心身共に元気が理想だよね!」
……この生き物は、何なんだ?
スゥーリーすら一人で乗れず、転移すら酔う女が国の将来を語っている。
だが、見つめてくる真っ直ぐな黒い瞳は真剣だ。
冗談の欠片すらない。
お前には関係ないだろう?
何故、気を失うほど力を使い自分を犠牲にできる?
何故、不安そうに俺も他の兄弟も生き抜けと言う?
あぁ、カエデは馬鹿なんだ。
だが、あのくだらない夜会の時から目が離せない。
何故か、無性にこの馬鹿者を手に入れたくなってきた。
だが、今の俺ではカエデを側わに置く事は叶わない。
「宰相」
「何か?」
未だ呑気に茶をすすっている宰相に声をかけた。
「時間、あるか? 武器庫の件を挽回する為策を練る」
「面白そうですね。まずはお聞きしましょうか」
俺は宰相に協力させる為に頭をフル回転させ始めた。
カエデ、必ずお前と国の両方を手に入れる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
54
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる