気がつけば異世界

蝋梅

文字の大きさ
117 / 124

117.閉塞感は好まない

しおりを挟む
「ったく、私は攻められるより攻める方がいいのに!」
「ブハッ」
「ゲホッ」

 前後の人が盛大にむせた。ちなみに一人は水を飲んでいる最中で、もう一人は飲食はしていない。唾液を詰まらせたのかしら。まだ若いのに嚥下機能が心配である。

「ラジとナウル君、なんか文句あんの?」

 歩きながらも前後に苛立ちビームを放てば先に降参したのはナウル君。

「……卑猥な事を言うからですよ。ダッ」

 なんか寝ぼけた事を言い出したので、とりあえず目を覚ませと小さな頭を軽くはたいとく。

「ナウル君、君はカブちゃんで爆睡してたのにアホな事を言うんじゃありません。この場所、水攻めって嫌だって言いたかったの」

 普通に怖いじゃない!

「あ、でも水がいるのか」

 普段は無表情、たまにテレが可愛い神器で水の少女(年齢不明)

「なんか嫌な事まで思い出した」

『重っ』

 可愛らしい口調から出た台詞。私は自分の体を撫で見下ろす。

「そんな重くない……はず」

 あるべき箇所に脂肪が少ないのが問題なのよ。

「ユラ様」
「ん?」

 先頭にいた光の国のお姫様、フルーレちゃんに呼ばれたが、なんだか表情が強張ってるような。

「フルーレちゃん、ここは一本道?」
「はい。もう少し先に塞がれていなければ、出口につながる扉があります」
「オッケ、早く地上にでましょう」

 高さはあっても閉鎖的な空間は苦手だ。なんとなく彼女の表情が気になりつつも悩んでも仕方がないのでまずは出口を優先する事にした。


* * *


 そう時間をかけることなく言葉は悪いけど、自分が巨人の国へ迷い込んだのかというくらい縦長にドデカイ観音開きの扉の前に到着した。

「ねぇ、とても美人とイケメンだけど、いやにリアルな石像ね」

 その扉の左右には、これまたビッグサイズの男女の石像が建っていた。

「フルーレちゃん
?」

 彼女は俯き、その華奢な身体が震えている。

やっぱりおかしい。

「マイン、やはり私には出来ません」
「ここまで来てしっかりしなよ! 俺がやる!」
「駄目っ!」

 なにやら兄弟は言い合いをし始め、じれったくなったのか、マイン君は彼女の首にかかるネックレスを力任せに引きちぎり、何故か石像の一体に投げつけた。

「ユラ様、もっと離れて!」

 リアンヌさんがいち早く反応し私の盾になるように前に出てくれたけど、遅かった。

「光っ防御壁!皆を守って!傷無し完璧に無傷にして!」

 最近、雰囲気で察しろは難しいようなので短い文で可能な限り指示を詰め込むという練習をしていた。

 これで、とりあえずセーフ。

『無理ですね』
「へ? ツッ」

 光の声と突風が同時だった。いや、差はあったに違いない。

というより。

「これっ不味いじゃん!皆っ!」

 超強力な掃除機に吸い取られてる?!踏ん張りがきかず足が地面から離れて。

「生理的に嫌なんだけどー!!」

 吸い取られて行く先は、石像の口。

「ユラ様っ」

 逆さまに見えたのは、普通に立っている二人。

 フルーレちゃんとマイン君。

「あ~ぁ、まだまだ甘いな」

 言葉にしたはずの声も爆風で消えた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する

雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。 ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。  「シェイド様、大好き!!」 「〜〜〜〜っっっ!!???」 逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。

処理中です...