気がつけば異世界

蝋梅

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19.開始

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「思っていたよりは快適だけど1人だとやっぱり怖いな」
「キュイ!」
「…リューナットさんも乗せてあげればいいのに」
「フッン!」

 ノアが盛大な鼻息で怒りを表した。

「頑固さんだなぁ」

 私の呟きが聞こえてるはずなのに、ノアは知らんぷりだ。

 出発前、戦が始まる場所は本当なら最短でも4日かかると言われて間に合わないじゃないとツッコミをいれようとしたら、途中迄転移魔法で移動すれば短縮されると言われた。

でも、その言い方だと。

「間に合わないって事ですか?」
「ヴァルなら間に合うが、三人は乗れない」
「他の子は?」
「本来グーノは、乗り手を選ぶ為一匹につき1人しか乗せない。今いるグーノで他者にも背を許すのは、ヴァルだけだ」

「乗り手になるのは、大変そうですね」

 まあ、見るからに気高そうだしなぁ。ラジウスさんがグーノの説明をしてくれた。

「ある時期にグーノの住む場所へ行き、選ばれた者だけが、グーノに乗れる。乗り手が選ぶのではなく、グーノが乗り手を選ぶのだが、リューは、そもそも生き物が好きじゃないからその場所へ行きもしなかった」
「俺は、地面に足がついてないと嫌なんだよ!」

まぁそれもわからなくはない。

 実際ヴァルに乗せてもらった時、ノアに乗っている今もだけど飛行機と違い何も遮るものがないのは、なんとも言えない。

そして、そう、ノア。

なんと大きくなれるのだ。

 移動手段が限られどうしようと話していた時、リューナットさんが、ノアを指差し言ったのだ。

「そういえば、ヒュラウって子供だとそんなちっこいのか?」
「えっ?」
「いや、化身を子供の頃一度だけ見たことがあるんだがデカいし空を飛んでたぞ」

 私は右肩にいるノアを見た。グレーの目と視線が合う。

「ノア、大きくなってみて?」
「キュ!」

ボフン!

「つっ!」

 凄く強い風を感じ閉じた目を開くと。

 真っ白なフサフサの身体に同じく白く太い尻尾にグレーの大きな瞳は変わらない…けど。

「…おっきい」

 試しに言ったんだけど、これ大き過ぎじゃない?ヴァルよりも大きい。

 いや、それもだけど気づいちゃったわよ私。

「というか、私、最初の冬の神に会う時、柱に命懸けで登る必要なんてなかったんじゃあ」
「今までデカくなんなかったのは、嬢ちゃんの気が安定してなかったからとか」
「だが、ユラ様は魔力が感じられない」

ですよね。

「う~ん」

 この時は、結局わからず解決したのは、また大分後のことだった。

 ちなみに大きくなれるのは6時間くらいが限度で、また小さくなった。個人的には、大きいノアの体に抱きつき顔をすりすりしモフモフ感を堪能できたのは物凄く癒しになった!

 もちろん小さいノアも可愛いんだけどね。

「見えてきた」

 少し離れて飛んでいたヴァルが横に近づいてきて、ラジウスさんが教えてくれた。ちなみにラジウスさんの腰のベルトをガッチリ掴むリューナットさんは、ずっと顔色が悪い。私はラジウスさんの指差す方向を見た。

「…これが全て人か」
「それ以上近づくと気づかれる」

 ラジウスさんに言われ、空中でノアを停止させる。ヴァルもノアも翼はないけれど、魔力が強い彼らは、風を操り自分の身体に風でできた翼を纏わせ時折駆けるように足を動かす。

 風で出来た翼は見えないけれど、背の部分に触れるとかたい感触があり、それは長く広がっているようだ。

 改めて地上を見た。赤と緑の点だ。

ラジウスさんが教えてくれる。

「ざっとだが情報では火の国、フィルラが5万、風の国ヴァーリアが8万」
「フィルラは大分減ったな~やっぱ血の気が多い奴らばっかだもんなぁ」

 世間話をするようなリューナットさん。

私は、点を見つめた。
あの小さな一つが一人の命。

 無意識に自分の身体を抱き締めていた。

「さて、どーする? 嬢ちゃん」

 二人を見ればあんな人数を見てもいつもと変わらない表情だ。

 私はきつく抱いていた腕を外し腕輪の光に触れた。

「こうします」

 念じた瞬間、白い光が彼らを包む。

「っ!ユラ様!」

 半透明の球体の中にいる彼らには光の縄みたいな物が巻きつき、ミノムシ状態だ。

 そして周りの球体は彼らを守る為。

「それ、あまり時間は持たないんで、早速行ってきます」

 行きかけた私をリューナットさんが呼ぶ。

「嬢ちゃん!」

この際だから伝えておこう。

「前から思ってたんですけど、私、27歳です」
「「…は?」」

見事に二人の声がハモった。

「まあ、ラジウスさんは、きっと年下だろうけど、迷惑かけっぱなしだし、二人ともユラでいいです。だから、これ終わったら、そう呼んで下さい」

 私は、まだ固まっているというか、物理的に動けない二人と一匹に挨拶をした。

「いってきます」
「ユラ様!」
「おいっ!」

 今度こそノアと共に地上へ向かう。

 私、上手く笑えたよね。これでも営業スマイルには年季がはいっているし。

 私達は、丁度お互いが睨みあっている空間の空いた平原の中央に降り立った。


「離れていいよ」
「キュイ!」
大きくなっていたノアに話しかけるとノアは、ボフンと小さく元に戻り右肩に登ってきて顔を私の頬にすりつけた。

「──ありがと」

 少し気持ちが落ち着いた私は両手を上に突きつけた。

「光、水、力を貸して」

さあ、始めようか。






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