気がつけば異世界

蝋梅

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57.どうして

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「ラジウスの姉です」

 ラジの好みは、ボインではなくスレンダーだったのか! しかも美人は当たり前。

 うん、私に絡むなと苛立っていたのにアッサリ終わった。

 私達は、フレンドリーな出迎えを受けた後すぐ神殿に案内され、こじんまりとした応接室で私と態度は難ありだけど地位の高いマート君がラジのお姉さんの正面のソファーに着席している。

 ちなみに壁際にはラジ、リアンヌさん、ナウル君が座っている。

 この後ろ三人がまた身分や警護やら言い出し椅子に座る迄に時間がかかっのだが、私が立たれていると落ち着かないと騒ぎ、またラジのお姉さんの助けもあり座らせた。


ようは、面倒なのよ。


 立場によって大事なのはわかる。でも、たかだか椅子に座るだけでと思う私はやはりこの世界の人ではないんだと改めて感じる。

 いや、此処が会社だと思えばアリなのか?

「紹介が遅れましたが、私は、セスタと申します。今はこのジュノール、聖域と呼ばれる島を護っております」
「セスタ様は、神官長よ。そしてわたくしの大切な方です」

 頬を染め上げながら話すお姉さんに10歳は上であろうセスタさんは、可愛くてしょうがない!という甘い視線。

私、場違いかも。

 正直、お人形さんの様な姉さんの隣にいる神官長さんは、威厳はない。

 ついでに顔も失礼ながら人がハッキリ言って整っているわけではない。

 だがしかし、人柄の良さが滲み出ている。なにより二人を見ていると仲の良さがまるわかりというか駄々漏れなので羨ましい。

 至近距離で浴びると、もはや凶器である。

 私は、この幸せ攻撃をかわす為に目の開きを極力細くし意識を逸らす。

「わざわざこの場所に足を運ばれたというのは、何か心配事があるのでしょうか?」

 ハッ!本題を忘れかけていた。

「実は、今まで聞こえていた神器の声が全く聞こえないんです」
「それは、いつ頃からでしょうか?」
「えっと」

 いつからら光と会話が途切れがちになったかを思い出しながら説明する。

「ざっとですが、こんな感じです」

 何故かお姉さんは少し悲しそうな、同情したような顔をしている。

「奥に清める場所があるのだけれど」
「是非。今からお願いしたいです」

即決したのに。

「ただ、効果はあまりないかもしれないわ」

 お姉さんからは、なんとも頼りない言葉が返ってきた。



* * *



「冷たい水で滝にうたれるとかを想像していたんだけど」

 案内されたのは、とても小さな水の溜まる場所だった。

 周囲は、半屋外という表現で良いのか分からないが、円形で岩をくりぬいたような状態だ。上には屋根がなく空が見えた。湯飲みの底にいる感じかなぁ。

 足元はタイルのような白い石が敷かれている。試しに片足を入れてみると。

「温水プールのような温さだわ」

 冷たくなくてよかった。一つ、不満があるとすれば。

「この薄いとはいえ服を着ながらっていうのが、体にはりついて嫌だな」

 薄いグリーンの飾りが全くないワンピースを1枚着せられたのだが、心ともない。

 目視では、一番深い箇所でも腰くらいのようだ。とりあえず膝まで入ってみたけれど、服の長さが足首辺りまであり、スカート部分を結んではいたものの布が濡れて肌に生地がくっついて気持ちが悪い。

「あれ? 魚がいる」

 小さな魚が足元をすり抜けていく。こんな温度の高い水の中でもいるんだ。

 何気なく掬った水を上から落とすときれいな滴が水の上に波紋を作りだす。

「……なんで、皆の声が聞こえないのかな」

なんて呟いていたら。

 神域で決まった人しか許されていない場所で、一人っきりのはずなのに。

「お前のせいだな」

 突然聞こえた声に日差しを手で遮り上を見上げれば。

「よぉ」

 いるはずのない人物、ダッガーだった。

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