気がつけば異世界

蝋梅

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73.ナウルの本気

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「つ、やめて下さい!」

 私の振りを彼は戸惑いつつも受け止めた。

「早く鞘から抜かないと綺麗な装飾が傷だらけになるわよ」

 なにやら心の中で葛藤しているナウル君をよそに、私もまた懐かしいじゃないのと感慨深げになり意識が違う方向にいきかけていた。

 まだ来たばかりの頃、彼に剣を投げられ怒鳴りつけられたのが懐かしい。

「あの時、私に喧嘩をふっかけてきた威勢はどうしたの?」
「あの時とは違うっ!」

ガッ

 刃とは違う鈍い音を聞きながら、そういえば刃こぼれ大丈夫かしら。人になって、どこか光の体が無くなっていたとか普通にありそうで怖いんだけど。

「こんなふざけたような事になんの意味があるんですか?!」

 鞘で一気に押し返された。こっちも本気ではないとはいえ力は消耗しているんだけど。やっぱ男の子よね。

「何が可笑しいんですか?」

口が笑っていたらしい。

「だって、前とは状況が違うのは、そっちでしょ? ふざけた事ってさ、それ君でしょ」

 背筋を伸ばし呼吸を整えながら、腹の下を重心を意識する。私の気配が変わった事に気がついたのはナウル君だけではないらしい。賭けをしようと騒いでいた周囲のヤジが止んだ。

「ユラ様」
「ねぇ、他国に情報を流すって、王様をラジを裏切ったって事でしょ? 私にそんなに価値があったなんて素敵」
「それは」
「私を嫌うのはわかるけど、ラジの事は尊敬してたんじゃないの? そうまでして守りたい物は何?」

 まだ、一歩も動いていないのに、彼の足は後退した。

「教えてよ」

 左下に構え彼を凪ぎ払う為、一気に間合いをつめた。

ギィーン

 覚えのある痺れが手から腕に伝わる。

「そうこなくっちゃ」

 至近距離の彼は、先程の狼狽えた顔を豹変させ無表情だ。

「…どうなっても知りませんよ」

 軽やかに後方に飛んだのは逃げるわけではないようだ。彼が左手から生み出されたのは数えきれない美しい落ち葉。ただし、先が針の先のような尖り。風も作り出したのか螺旋を描き圧巻だ。

ただし見てるだけなら。

 彼が私に切りかかると同時にその葉も私に向かう。

「挑発しすぎたかな」
『貴方は時にとても愚かにみえます』

 私の話しかけるなオーラに大人しくしていた光が頭にため息と共に呆れたように言葉を送ってきた。

「ねぇ、そんなもんなの? もっといけるんじゃないの? 神器従えている私に失礼じゃない?」

 葉を光の力を利用し粉々にする。どうやら葉で何ヵ所か切れたらしく皮膚がピリピリする。ほう、やってくれんじゃないの!

 お返しと交えた刃の力を一気に抜き手首を返し軽く切りつければ彼の肩に刃が到達したようで服と共に斜めに服が破けそこから赤いものがみえた。

「くっそ!」
「若いわねー」

 当たり前だが悔しいらしい。恐怖がない姿にやはり騎士だわ異世界だわと、どこか冷静な私。

「早く来なさいよ」

 私の握る刃の長さは、この国の基準よりかなり短い。長い方が相手と距離もとれるし精神的にはいいんだけど、体格差、力の差がありすぎるので試行錯誤の結果、短かく軽めといってもそこそこある剣の形に落ち着いた。

「こんなもんじゃないわよね?」

 苛立たせる為に刃先をわざと揺らして挑発すれば、彼の怒気と共に土が浮かぶ。

そうこなくっちゃ。

「ねぇ、それじゃあ足りないわ。もっとよ」

 私に全てを出して。怒りを力に変えて。

『軽く防ぐだけでよいのですか?』

光がささやく。

「ええ」

消してはダメ。

「これを利用しない手はないでしょ」

 私は彼の本気を受け止める為腰を低くし剣を構えた。


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