気がつけば異世界

蝋梅

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77.彼にお願いした仕事は

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「おっ、いい冷たさ。そうだ!お前、何やらかした? いいとこ見過ごしちまったじゃん! 誰も教えてくれないしさぁ~」

 いきなり現れたマート君は、矢継ぎ早に喋り出す。おもわず背後にいた粘着質に訊いてみた。

「ねぇ、貴方の仕えている王子様、普段からこんな感じなの? 女子の集まり並に騒がしいんだけど」
「いえ。おそらくマトリュナス様は救世主様方を信頼しているのかと。私も驚いております」

 眼鏡をクイッと上げ粘着質、ナーバスさんが答えた。

「ふーん」

 それは良い傾向なのか? とりあえずリラックスしているのは見てもわかる。

 それよりも問題は、この子だ。ずっと暗い顔の美少年に飲みなよとカップにたっぷり注いで渡す。

「ほら、冷やしたの私じゃないけど美味しいから飲みなさいよ」

 受け取らないので無理矢理手にカップを握らせた。これは重症だな。日にあびた輝く金髪が風で揺れまたひと房、肩から滑り落ちていく。

「あのさ、ラジあたりにでも、さっさと終わらして欲しいとか思ってるんでしょ? だんまりだとわかんないわよ」
「…はい」
「そんな楽、させるわけないじゃない」
「つ!」

 やっと顔を上げた彼を見て内心純粋だなと羨ましくなる。

「ね、集中して。あれ、わかる?」

 指差した方向は、先程私の素晴らしいコントロールで力を飛ばした場所だ。

「はい」

 何の疑問も持たずナウル君は、素直に答えた。

「合格ね」
「え?」

 幼さが残る彼は、不思議そうに首を傾げた。くっ、この子も近い将来かなりのモテが到来するに違いない。

「なぁー、何をコソコソと話してるんだ? 俺にも教えろよ」

 マート君、君ってメンドクサイ子ね。まぁ、他国の王子を邪険にはできないので教えてあげよう。

「あの私の素晴らしい腕で狙い撃ちした場所は枯渇している湖なの」
「だから?」

マート君、君は残念脳だ。

「その目、馬鹿にしてんな?」

 そういう時の察知能力は高いのね。

「俺は、優れた力はないです」

 今日のナウル君は、ネガティブ街道まっしぐら。そんなアナタにお姉様が渇を入れてあげましょう。

「君、水だけでなく地や風の力使えるでしょ? それって普通じゃないわよね。あの煙みたいなのは地の力を操れないと見えないらしいから」

 お、探るような視線。少し生気が戻ったかな。

「…俺に何をさせたいんですか?」

勘づいているでしょうに。

「枯渇の改善」
「それで終わりませんよね?」

 あー、こういう子、部下に欲しい。

「ついでに地の神器の浄化」
「俺が…ですか?」
「そうよ」

 演技じゃなくて驚いているようだ。だってねぇ。

「君、そもそも地の血筋ひいてるわよね。周りに聞こえない壁はってるからついでに言うけど、マート君と同じ系列、本当なら王位継承権があるんじゃないの?」
「は?! ユラ!どういう事だよ?!」

 大声をあげたのは、ナウル君ではなく、地の国の王子、マトリュナス様。

 彼は、もう一人の兄の存在を知らなかったらしい。


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