気がつけば異世界

蝋梅

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83.地下にて恥ずかしい台詞が口から出せば

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「カビ臭い。湿気がかなりあるけど本は大丈夫かしら?」

 乾燥し過ぎても、また逆に湿度の高い場所は本にとっては致命的じゃないのかなと薄暗い通路を進みながら思った。

「問題ない」

 けれど、それを聞いた人物がアッサリと不安を消してくれた。

「貴重な書物は、なんらかの力で傷まないよう保護されているはずだ」

 さも当たり前だという言葉に少し安心した。

「それより地下に書物があるというのは誰からの情報だ? 閲覧禁止の見取り図にさえ記載されていなかったはずだが」

 ラジが気になるのはそっちか。

「そんなの私の行動範囲をみれば分かりきっているんじゃない」

 ラジは、ほぼ私の側を離れない。いないと思っていても距離をとっているだけ。また常に彼は気配を消している。


 でも、それに気づいたのは情けないことに最近だけど。

「あの人がそこまでする理由が理解出来ない」

 珍しく嫌がる素振りを見せた。シルビアさん苦手なのかな?

「癖はあるけど、それさえ押さえれば楽じゃない?」

 よほど私が勤務している営業や得意先の方々の方がいい性格をしているわよ。

「あー、この本探しが終わったら次の日程を組まなきゃ」

 綱渡りな危ない世界なだけに一つの目的の為だけに何通りもの案を出さねばならない。

 また、そこから最善な道を選びとるのが大変なのよねぇ。

「ラジ? どうし」

 無言だった彼が急に振り向けば、次に私はこの男の腕の中にいた。

「もう少し周りを頼れ」

 片腕で頭を軽く抱き込まれ、その手は、そのまま私の頭を行き来する。

「充分頼りにしているつもりだけど」

 彼の胸あたりに顔を押さえつけられているのでくぐもった声にしからない。自分でも弱っちい声に驚いた。

 いい大人が何やってんのよ。

「つもりではなく頼りにしろ」
「命令は嫌」

 私の動揺は彼に伝わるわけでもなく、ラジの腕が解かれた後も暫く気持ちが落ち着かなかった。



* * *


「なんかさ、随分ショボくない?」

 少しして目的地に着いた私は、その扉の前で腕を組み考えた。

『我々はよいのですね』

「いいわけないでしょ! 働きなさいよ!というかもう少し率先して持ち主を護ってくれてても罰は当たらない気がするんだけど」

 個性はあれど神器達共通するのは。

「あなた達ね。気合いが足んないのよ」

 そういえば場所は違えど今日、既に同じことを叫んだわ。

『気合い…ですか』

食べ物ですか?

「これから疲労するっていうのに疲れさせないでよ」

 こりゃあ諦めだ。私は、早々に神器達の精神を鍛える事を放棄した。まず根本的に違うんだもの。

「話はまとまったか?」


 いや、ラジさんや。井戸端会議みたいに聞くな。

「もーヤメヤメ! よしっ! 開けるわよ」

 秘密にしては、随分と地味な扉に付いている銀色のハンドルを掴み引くが動かない。ならば押す。

はい、無理。

「鍵穴もないし、もう資質とか始まっているのかしら?」

 いっそ、本は護られているなら扉を吹っ飛ばすか。

「不採用。力加減ができない! 使えないわー。自分が使えないのが腹立つ!」

 隣でラジが扉に触れ探っているようだけど表情がいまいちだ。

「救世主様のお通りよぉ。開け~!なーんてね」

 あぁ、言った自分が酷く恥ずかしい。

「開いた」
「…は?」

 デカイ背中にワンモアとお願いする。

「だから、開いたぞ」

マジですか。

「え、私…救世主様なの? アホっぽくて辛いんだけど」
「勝手に騒いでろ。入るぞ」

ラジさんや。

 最近、私に対して雑すぎではないかね? だが、彼が既に抜刀していた剣を構えているので言葉にするのは後にした。

「下がれ」

 筋肉が緊張している背中を、その先に見えた銀色の巨大なカマが此方目掛けて飛んできたのを見て、私は笑った。

「なんだ、人相手じゃないじゃないのね。なら、どんとこい!」

 加減はしなくて済みそうだわ。

 神経をすり減らす事がないと判明した私は俄然やる気を出した。



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