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87.なんだか甘えたくなった日
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「キュイ? キュキュ」
「ギャイ」
「キュ」
子ワニもどきがラジの頭から降りたと思えば、なにやらノアとソファーの上で会話をし始めた。
種族は違えど聖獣同士通、話が通じるのだろうか?
「ちょっと、自分で脱げるわよ」
私は、ラジに自室となる部屋に担がれベッドの縁に座らされた。次に彼は何で屈むのかと動きを追えば、私の靴を脱がしていく。
なんだろう。
イケメンをこき使う女の図で嫌なんだけど。
「うわっ」
「寝ろ」
そのまま肩を軽く押され後ろに倒れた私に覆い被さり襲う…わけではなく片膝を乗り上げた彼は、私の頭をクッションの上に慎重に乗せた。
「いくら神器を用いたとしても力を使い過ぎだ」
とたんにベッドの縁に座った彼からお説教が始まったが、私も主張はしておきたい。
「でも、湖でナウル君を採用したのは良い案だったでしょう?」
密偵、スパイ容疑のかかったナウル君は、他国の血が混ざる人物だが、身を削り重要な湖の枯渇を改善させ国益に貢献した。
うん。我ながら悪くないストーリーである。なんか皆、結局は英雄みたいの好きじゃない?
「それは別としてユラ、力の消耗だけではなく乱れているから神器の浄化が出来なかったんじゃないのか?」
──精神が、心が。
「また話は違うが、マトリュナスやナーバスに気を許すな。いや彼らだけではない。全てだ」
なんでよ。
「マトリュナス殿下は、悪い人物ではない。だが彼は地の国の王位継承権を持っている。彼やナーバスは国にとって何が利かを常に頭の隅に置いている」
そんなの分かってるわよ。
「なら、ラジだって同じじゃない。私に気を許すなんてないんじゃないの?」
背を向けたままだった彼が振り向いた。夜の気配が濃くなりつつある夕暮れのなか、灯りが小さく灯された光で瞳が不思議な色をしている。
「夜を共にしたいと思う近さだが」
……え?
想定外の台詞と同時に私の頬に大きな手が触れた。思わず体が少し動いてしまう。そんな私を見て彼は、頬を撫でながら微かに笑った。
困ったような悲しいような、そんな入り交じった表情だ。
「俺は、帰るのを止める事はしたくない。だが、その時まで共に朝を迎えたいとは思う」
期間限定の彼氏って事?体貸しますみたいな?
「だが、ユラは貴方はそうじゃないだろう?」
指が頬から唇へとゆっくり移る。
「割りきれるような人ではない。罪悪感に苛まれる」
私に言っている言葉なのに独り言のように呟くラジは、いつもの彼と違う。
「私、前に言ったかもしれないけど、この世界に来て暫くしてから夜は、近くに武器がないと寝むれないの」
光達やノアがいるのに。それに武器を抱えていたって寝ている状態で敵に襲われたら、すぐに戦えるかと言われたらかなり厳しいと分かっていてる。
「特に夜が怖い。自分がいた場所の数倍怖い」
人生で予想外の日々。
神器を持っていたって所詮ただの人だ。
もしかして今夜か明日?いつ死ぬか分からない。
つめが甘い私なんて案外簡単に終わってしまうかも。
「ユラ」
唇から指が離れクッションに寄りかかっていた体を頭を抱かれた。
ノアの暖かさも落ち着くけど、ラジの細いくせに鍛えられた腕に体に抱かれると安心する。
「大丈夫だ」
ラジのいつもの抑揚のない冷静な声を聞き、浅くなっていた息をその胸の中で落ち着かせた。
「今夜だけ…悪いけど、寝るまで部屋にいてくれる?」
ラジが夜、近くにいれば、私は武器を握って寝る事をしなくても寝れるかも。
「仰せのままに」
額に軽く唇が掠めていき、彼がゆっくりと離れていく。
ラジ、貴方なら信用していい?
言葉にしそうになり寸前でやめた。
「ギャイ」
「キュ」
子ワニもどきがラジの頭から降りたと思えば、なにやらノアとソファーの上で会話をし始めた。
種族は違えど聖獣同士通、話が通じるのだろうか?
「ちょっと、自分で脱げるわよ」
私は、ラジに自室となる部屋に担がれベッドの縁に座らされた。次に彼は何で屈むのかと動きを追えば、私の靴を脱がしていく。
なんだろう。
イケメンをこき使う女の図で嫌なんだけど。
「うわっ」
「寝ろ」
そのまま肩を軽く押され後ろに倒れた私に覆い被さり襲う…わけではなく片膝を乗り上げた彼は、私の頭をクッションの上に慎重に乗せた。
「いくら神器を用いたとしても力を使い過ぎだ」
とたんにベッドの縁に座った彼からお説教が始まったが、私も主張はしておきたい。
「でも、湖でナウル君を採用したのは良い案だったでしょう?」
密偵、スパイ容疑のかかったナウル君は、他国の血が混ざる人物だが、身を削り重要な湖の枯渇を改善させ国益に貢献した。
うん。我ながら悪くないストーリーである。なんか皆、結局は英雄みたいの好きじゃない?
「それは別としてユラ、力の消耗だけではなく乱れているから神器の浄化が出来なかったんじゃないのか?」
──精神が、心が。
「また話は違うが、マトリュナスやナーバスに気を許すな。いや彼らだけではない。全てだ」
なんでよ。
「マトリュナス殿下は、悪い人物ではない。だが彼は地の国の王位継承権を持っている。彼やナーバスは国にとって何が利かを常に頭の隅に置いている」
そんなの分かってるわよ。
「なら、ラジだって同じじゃない。私に気を許すなんてないんじゃないの?」
背を向けたままだった彼が振り向いた。夜の気配が濃くなりつつある夕暮れのなか、灯りが小さく灯された光で瞳が不思議な色をしている。
「夜を共にしたいと思う近さだが」
……え?
想定外の台詞と同時に私の頬に大きな手が触れた。思わず体が少し動いてしまう。そんな私を見て彼は、頬を撫でながら微かに笑った。
困ったような悲しいような、そんな入り交じった表情だ。
「俺は、帰るのを止める事はしたくない。だが、その時まで共に朝を迎えたいとは思う」
期間限定の彼氏って事?体貸しますみたいな?
「だが、ユラは貴方はそうじゃないだろう?」
指が頬から唇へとゆっくり移る。
「割りきれるような人ではない。罪悪感に苛まれる」
私に言っている言葉なのに独り言のように呟くラジは、いつもの彼と違う。
「私、前に言ったかもしれないけど、この世界に来て暫くしてから夜は、近くに武器がないと寝むれないの」
光達やノアがいるのに。それに武器を抱えていたって寝ている状態で敵に襲われたら、すぐに戦えるかと言われたらかなり厳しいと分かっていてる。
「特に夜が怖い。自分がいた場所の数倍怖い」
人生で予想外の日々。
神器を持っていたって所詮ただの人だ。
もしかして今夜か明日?いつ死ぬか分からない。
つめが甘い私なんて案外簡単に終わってしまうかも。
「ユラ」
唇から指が離れクッションに寄りかかっていた体を頭を抱かれた。
ノアの暖かさも落ち着くけど、ラジの細いくせに鍛えられた腕に体に抱かれると安心する。
「大丈夫だ」
ラジのいつもの抑揚のない冷静な声を聞き、浅くなっていた息をその胸の中で落ち着かせた。
「今夜だけ…悪いけど、寝るまで部屋にいてくれる?」
ラジが夜、近くにいれば、私は武器を握って寝る事をしなくても寝れるかも。
「仰せのままに」
額に軽く唇が掠めていき、彼がゆっくりと離れていく。
ラジ、貴方なら信用していい?
言葉にしそうになり寸前でやめた。
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