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88.頑張るにも限界があるよね
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まだ夜だと身体は教えてくれる。慣れてきてしまった草木の少し湿気のある匂いも。
「あ、居てくれたの?」
重たい瞼をなんとか開けば光をかなり落とした室内には、居ないと思っていたラジがいた。
何の案件なのか不明だが、机の上にはかなりの書類の量が積まれている。また、それらはキッチリと区分されているようで彼の性格を表しているようだ。
「クギャ」
「キュイ!」
「あ、君達もいてくれたのね。ありがと」
元の世界にいたときは、寝てる間に人がいるのは苦手だった。
けれど、一肌が恋しい夜も確かにある。夜中、彼の家を出る時などは、無性に離れたくなかったな。
「眠れたか?」
背を向けたままなのは彼なりの配慮かな。
「お陰さまで熟睡できたわ」
もしかして、既に夜中だろうか。それくらい寝た気がする。
「いや、まだ食堂に行けば、食事に間に合うはずだ。食べるか?」
紙をめくる音と虫の音だけ。時おり遠くから声がする。なにやら笑っているようで元気でなにより。
「うん。お腹空いたわ。君達も行こっか」
「ギュ」
「キュ」
鳴き声も意気投合すると似るのかな? そんな事を思いながら腕をおもいっきり伸ばして伸びをし、やっと立ち上がった時、服から何かが滑り落ちて床に転がった。
「これは髪に使え」
ラジがそれを拾って私の乱れていた髪を耳にかけ、挿した。武器ではなく本来の着飾る道具として。
「そうね」
いつか、そうなれたら良いわ。
* * *
「ラジ?」
食堂に続く道をゆっくりと進んでいたら、急に後ろにいた彼が私の腕をひっぱった。
「何? 私は、軽くないんだからやめてよ」
足でも蹴ってやるかと動かしかけた。だけど次の言葉に固まってしまった。
「もし…もし叶わなかったとしても側にいる」
何よ。好きだからとか言うわけ?
「リアンヌやリューもユラに寄り添うだろう」
仰ぎ見れば真剣な顔だった。
「私のヴァルのようにノアも離れることはないだろう」
だから?
「恐れるな」
無理だよ。
ちょっと運動神経がいい事務勤務なんだって。
「ただ怖がっていても進めない」
恐怖は不安になり、寝れなくなっていく。不眠は気持ちを更に不安定にさせると充分に頭では理解している。
「正しい言葉ね。だけどさ、そう簡単に出来ないのよ」
頑張れ。
もっと、もっと。
前向きなはずの言葉は重くなっていく。
「切り替えて、頑張れるといつも自分に言い聞かせている」
でもね。
「いつか確実に折れる」
それも知っている。
「だから、いるんだろ?」
ラジの言葉がくだけた口調になっていく。
「戦は、体が停止する前に心が壊れる。そんな奴は山ほどいる」
経験してきたであろう見てきたであろう言葉は響く。
「体くらい貸す」
え? いきなり夜のお話?
「ちょっと!今、馬鹿にした笑いしたでしょ!」
シリアス場面なのに。流石に怒るぞ。
「いや、それでも俺は構わないが。何でも話して時に泣け。感情を出すのは悪い事ではないという意味だ」
くっ、なんて清々しいほどのクリーンさ!
「あっそ」
私は、抱かれていた彼の腕をツッと下から上に撫でながら彼の首に両手をかけて唇と唇が触れそうな瞬間、体を沈め。
「もぅ! また失敗か」
急所を蹴りあげ足払いをするはずが、彼の動きのほうが速かった。
「なかなか尻もちをつかせらんないわ」
ラジは、怒りもしないが毎回生徒を残念な子というような目で私を見下ろす。その視線の方が逆に心にくるのよね。
その背中、腕になってしまったが、自分が痛いくらいに手をパーにし叩いた。
「なんか色々ありがと!」
ちょっと照れたのなんてお見通しのラジは口角だけ上げて笑った。
「ああ」
伸びた手は、私の頭に着地し、子供にするようにクシャリと撫でられた。
だから私は幼稚園児じゃないから。
……でも、嫌じゃない。
「あ、お前達もこれから飯か? 一緒に食おうぜ!」
反対側の通路から来たマート君が元気に手を振っていた。
「しょうがないから食べてあげるー!」
さっきより、私の声は元気になっているのは気のせいじゃないだろう。
「あ、居てくれたの?」
重たい瞼をなんとか開けば光をかなり落とした室内には、居ないと思っていたラジがいた。
何の案件なのか不明だが、机の上にはかなりの書類の量が積まれている。また、それらはキッチリと区分されているようで彼の性格を表しているようだ。
「クギャ」
「キュイ!」
「あ、君達もいてくれたのね。ありがと」
元の世界にいたときは、寝てる間に人がいるのは苦手だった。
けれど、一肌が恋しい夜も確かにある。夜中、彼の家を出る時などは、無性に離れたくなかったな。
「眠れたか?」
背を向けたままなのは彼なりの配慮かな。
「お陰さまで熟睡できたわ」
もしかして、既に夜中だろうか。それくらい寝た気がする。
「いや、まだ食堂に行けば、食事に間に合うはずだ。食べるか?」
紙をめくる音と虫の音だけ。時おり遠くから声がする。なにやら笑っているようで元気でなにより。
「うん。お腹空いたわ。君達も行こっか」
「ギュ」
「キュ」
鳴き声も意気投合すると似るのかな? そんな事を思いながら腕をおもいっきり伸ばして伸びをし、やっと立ち上がった時、服から何かが滑り落ちて床に転がった。
「これは髪に使え」
ラジがそれを拾って私の乱れていた髪を耳にかけ、挿した。武器ではなく本来の着飾る道具として。
「そうね」
いつか、そうなれたら良いわ。
* * *
「ラジ?」
食堂に続く道をゆっくりと進んでいたら、急に後ろにいた彼が私の腕をひっぱった。
「何? 私は、軽くないんだからやめてよ」
足でも蹴ってやるかと動かしかけた。だけど次の言葉に固まってしまった。
「もし…もし叶わなかったとしても側にいる」
何よ。好きだからとか言うわけ?
「リアンヌやリューもユラに寄り添うだろう」
仰ぎ見れば真剣な顔だった。
「私のヴァルのようにノアも離れることはないだろう」
だから?
「恐れるな」
無理だよ。
ちょっと運動神経がいい事務勤務なんだって。
「ただ怖がっていても進めない」
恐怖は不安になり、寝れなくなっていく。不眠は気持ちを更に不安定にさせると充分に頭では理解している。
「正しい言葉ね。だけどさ、そう簡単に出来ないのよ」
頑張れ。
もっと、もっと。
前向きなはずの言葉は重くなっていく。
「切り替えて、頑張れるといつも自分に言い聞かせている」
でもね。
「いつか確実に折れる」
それも知っている。
「だから、いるんだろ?」
ラジの言葉がくだけた口調になっていく。
「戦は、体が停止する前に心が壊れる。そんな奴は山ほどいる」
経験してきたであろう見てきたであろう言葉は響く。
「体くらい貸す」
え? いきなり夜のお話?
「ちょっと!今、馬鹿にした笑いしたでしょ!」
シリアス場面なのに。流石に怒るぞ。
「いや、それでも俺は構わないが。何でも話して時に泣け。感情を出すのは悪い事ではないという意味だ」
くっ、なんて清々しいほどのクリーンさ!
「あっそ」
私は、抱かれていた彼の腕をツッと下から上に撫でながら彼の首に両手をかけて唇と唇が触れそうな瞬間、体を沈め。
「もぅ! また失敗か」
急所を蹴りあげ足払いをするはずが、彼の動きのほうが速かった。
「なかなか尻もちをつかせらんないわ」
ラジは、怒りもしないが毎回生徒を残念な子というような目で私を見下ろす。その視線の方が逆に心にくるのよね。
その背中、腕になってしまったが、自分が痛いくらいに手をパーにし叩いた。
「なんか色々ありがと!」
ちょっと照れたのなんてお見通しのラジは口角だけ上げて笑った。
「ああ」
伸びた手は、私の頭に着地し、子供にするようにクシャリと撫でられた。
だから私は幼稚園児じゃないから。
……でも、嫌じゃない。
「あ、お前達もこれから飯か? 一緒に食おうぜ!」
反対側の通路から来たマート君が元気に手を振っていた。
「しょうがないから食べてあげるー!」
さっきより、私の声は元気になっているのは気のせいじゃないだろう。
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