89 / 124
89.次の場所は
しおりを挟む
「はぁ?シャイエに行く?」
「うん」
マート君が、はてなマークを頭にいくつも浮かばせている。
「シャイエからダイジェとなると、かなり遠回りですね」
リアンヌさんが出だしから発言するとは珍しい。ちなみにダイジェとは闇の国だ。
私は、ラジからお叱りを受けた次の日の朝、再びナウル君の部屋で集合した皆にこれからの予定を告げた。
「端と端に位置しているのは地図で確認済み。分かっていての判断よ」
滅びた場所に期待はしていない。
「なんか気になるから。ただそれだけ」
この気になるは、解消すべきだと。寄って損はないと私の内なる声は言っているのだ。
「私の勝手な判断だし、ついてこなくていいわよ」
もう充分付き合ってもらったし。だから適当に此処で体を休めて皆は帰ってと口を開きかければ。
「ならば保存食の量は増やした方がよいですね」
リアンヌさんが、メモをとり始めた。
「そうだな。まだ住人はいるかもしれないが、治安など最近の状況は把握していない。リューから話を聞くか」
ラジがリアンヌさんに話しかけ。
「移動手段はどうしますか? 途中まで転移盤を使用すれば日数の短縮が可能になります。ただ一部王族のみ使用の場も」
ナウル君が日数を計算しはじめた。
「俺、稼働させる鍵を持ってるぞ」
マート君が首から提げていた重たそうな鍵を取り出した。
「あ、そういえば王族の方でしたね。すっかり忘れていました」
「あんだと?! どうみても俺は身分が高いだろ!」
ナウル君とマート君の争いまでスタートし、室内が一気に騒がしくなる。
「うるさいわよ! 発言は一人ずつ!」
キレる私をよそに窓辺ではノアとワニモドキが日に浴びて寝ている。いや寝過ぎよ!
「いやいや違う! そもそもおかしい!」
「「何がおかしいんだ?」」
立ち上がり頭を振る私を皆は見上げて首を傾げた。
「だからー! もう世話にはなりっぱなしだし、あと最後の神器を集めて終わりだからいいわよ」
「それは本心か?」
ラジの間髪入れずに投げられた言葉に思わず間が空いた。
「……そうよ」
昨日といい弱っている場面を多々みせてしまっている彼には強く言えなかった。
その肩に寄りかかりたい。一人ぼっちは不安で怖い。
なによりも
──寂しい。
ふいに周囲に影ができた。
「昨日ので伝わらなかったのか?」
覗きこまれた瞳と目が合う。
「頼れ」
信じるなとか言ったくせに。
「利用できるモノはしろ」
命令口調なのに瞳は優しい。
だけど。
「近い」
私は、伸びてきた手を払った。
「おやおや。色男も形無しですねぇ」
粘着質、ナーバスさんが楽しそうに笑った。
「救世主、この男が言うように何でも使うべきですよ。ああ、ただ我々は途中、転移盤を使用する場までという形をとらせて頂きます」
「何でお前が決めてんだよ」
マート君が鼻息荒く意義を申し立てた。
「何故なら、私は忠実な家臣ですから。マトリュナス様は、ご自身の立場を存じてらっしゃいますよね?」
声色が変わった彼は、まとう気配も変化した。まるで真冬の海に足を入れた時のよう。
「━━チッ、わーったよ」
にらみ合い、というか一方的にマート君が粘着質さんを睨み付けていたが、最後は部下の勝利であった。
「という事で、この人数で荷造りの準備を進めてよろしいでしょうか?」
「…よろしくお願いします」
笑顔のリアンヌさんに勝てるわけがなかった。
「うん」
マート君が、はてなマークを頭にいくつも浮かばせている。
「シャイエからダイジェとなると、かなり遠回りですね」
リアンヌさんが出だしから発言するとは珍しい。ちなみにダイジェとは闇の国だ。
私は、ラジからお叱りを受けた次の日の朝、再びナウル君の部屋で集合した皆にこれからの予定を告げた。
「端と端に位置しているのは地図で確認済み。分かっていての判断よ」
滅びた場所に期待はしていない。
「なんか気になるから。ただそれだけ」
この気になるは、解消すべきだと。寄って損はないと私の内なる声は言っているのだ。
「私の勝手な判断だし、ついてこなくていいわよ」
もう充分付き合ってもらったし。だから適当に此処で体を休めて皆は帰ってと口を開きかければ。
「ならば保存食の量は増やした方がよいですね」
リアンヌさんが、メモをとり始めた。
「そうだな。まだ住人はいるかもしれないが、治安など最近の状況は把握していない。リューから話を聞くか」
ラジがリアンヌさんに話しかけ。
「移動手段はどうしますか? 途中まで転移盤を使用すれば日数の短縮が可能になります。ただ一部王族のみ使用の場も」
ナウル君が日数を計算しはじめた。
「俺、稼働させる鍵を持ってるぞ」
マート君が首から提げていた重たそうな鍵を取り出した。
「あ、そういえば王族の方でしたね。すっかり忘れていました」
「あんだと?! どうみても俺は身分が高いだろ!」
ナウル君とマート君の争いまでスタートし、室内が一気に騒がしくなる。
「うるさいわよ! 発言は一人ずつ!」
キレる私をよそに窓辺ではノアとワニモドキが日に浴びて寝ている。いや寝過ぎよ!
「いやいや違う! そもそもおかしい!」
「「何がおかしいんだ?」」
立ち上がり頭を振る私を皆は見上げて首を傾げた。
「だからー! もう世話にはなりっぱなしだし、あと最後の神器を集めて終わりだからいいわよ」
「それは本心か?」
ラジの間髪入れずに投げられた言葉に思わず間が空いた。
「……そうよ」
昨日といい弱っている場面を多々みせてしまっている彼には強く言えなかった。
その肩に寄りかかりたい。一人ぼっちは不安で怖い。
なによりも
──寂しい。
ふいに周囲に影ができた。
「昨日ので伝わらなかったのか?」
覗きこまれた瞳と目が合う。
「頼れ」
信じるなとか言ったくせに。
「利用できるモノはしろ」
命令口調なのに瞳は優しい。
だけど。
「近い」
私は、伸びてきた手を払った。
「おやおや。色男も形無しですねぇ」
粘着質、ナーバスさんが楽しそうに笑った。
「救世主、この男が言うように何でも使うべきですよ。ああ、ただ我々は途中、転移盤を使用する場までという形をとらせて頂きます」
「何でお前が決めてんだよ」
マート君が鼻息荒く意義を申し立てた。
「何故なら、私は忠実な家臣ですから。マトリュナス様は、ご自身の立場を存じてらっしゃいますよね?」
声色が変わった彼は、まとう気配も変化した。まるで真冬の海に足を入れた時のよう。
「━━チッ、わーったよ」
にらみ合い、というか一方的にマート君が粘着質さんを睨み付けていたが、最後は部下の勝利であった。
「という事で、この人数で荷造りの準備を進めてよろしいでしょうか?」
「…よろしくお願いします」
笑顔のリアンヌさんに勝てるわけがなかった。
21
あなたにおすすめの小説
竜帝と番ではない妃
ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。
別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。
そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・
ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!
期限付きの聖女
蝋梅
恋愛
今日は、双子の妹六花の手術の為、私は病院の服に着替えていた。妹は長く病気で辛い思いをしてきた。周囲が姉の協力をえれば可能性があると言ってもなかなか縦にふらない、人を傷つけてまでとそんな優しい妹。そんな妹の容態は悪化していき、もう今を逃せば間に合わないという段階でやっと、手術を受ける気になってくれた。
本人も承知の上でのリスクの高い手術。私は、病院の服に着替えて荷物を持ちカーテンを開けた。その時、声がした。
『全て かける 片割れ 助かる』
それが本当なら、あげる。
私は、姿なきその声にすがった。
【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】
sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。
遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら
自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に
スカウトされて異世界召喚に応じる。
その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に
第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に
かまい倒されながら癒し子任務をする話。
時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。
初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。
2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。
私は、聖女っていう柄じゃない
蝋梅
恋愛
夜勤明け、お風呂上がりに愚痴れば床が抜けた。
いや、マンションでそれはない。聖女様とか寒気がはしる呼ばれ方も気になるけど、とりあえず一番の鳥肌の元を消したい。私は、弦も矢もない弓を掴んだ。
20〜番外編としてその後が続きます。気に入って頂けましたら幸いです。
読んで下さり、ありがとうございました(*^^*)
帰還したアイリーシア
meimei
恋愛
女神様、生まれなおしってなんですか??
え!!!弟神のせいで元々生まれる世界、生まれる予定日の2日前に手違いで
異世界(地球)に落としてしまったって……じゃそもそも地球は私にとっては異世界だったのですね……。
どうりで……。で今さら赤子からって何かの罰ゲームかなにかですか??
【完結】恋につける薬は、なし
ちよのまつこ
恋愛
異世界の田舎の村に転移して五年、十八歳のエマは王都へ行くことに。
着いた王都は春の大祭前、庶民も参加できる城の催しでの出来事がきっかけで出会った青年貴族にエマはいきなり嫌悪を向けられ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる