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90.ナウル君は、私のもの
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「さて、出発前にする事は三つかな。ナウル君はどうする? 今さらだけど、風の国との縁は切れてよかったのかな?」
「私は」
今、部屋にいるのは私とナウル君、そして。
「ナウル。心して答えなさい」
リアンヌさん。なんだか顔つきが厳しい。これも彼女の一面だろうと他人事のように観察していればその顔が私に向けられた。
「ユラ様。切り捨てなければならない選択もあるという事を覚えておいて下さい。全てを手に入れるのは、この世界では難しいのです」
「……理解しています」
助けたい。可哀想。あれもこれも失いたくない。
「ただ、私は、二人のうち片方しか助けられない場面でも二人とも助ける」
助けたいではなく助ける。
願望だけでは足りない。せっかく神器があるのだ。最大限に活用する。
「それでご自身が傷つかれてもでしょうか?」
「ええ」
私は即答した。水色の瞳は何かを見透かすような色だ。この人は、戦ではどんな戦い方をしたんだろう。きっと隙のない美しい動きに違いない。
勝手にリアンヌさんがムサイ男達を蹴散らしていく姿を想像した。
「昔の私でしたら笑い飛ばしていたでしょう。ですが」
口許が少し上がっただけでふんわりと花が開くように一気に柔らかくなるから不思議。
「ユラ様に賭けます」
何を?
思わず首を傾げたら、笑われた。
「未来を」
なんか。
「壮大すぎて何と答えて良いのか分からないんですけど」
「あの、俺、私はもう二度と罪を犯しません!」
困惑する中、ナウル君が真剣そのものの表情で宣言した。
「それを信じるには無理がありますよ」
リアンヌさん、抑揚がない言葉って怖いです。
まぁ、国にとってはごもっともな台詞ではある。
「なら、なんか成約でもする? 破ったらナウル君の大事なモノが消えるとか。どお?」
私は腰に巻いていた袋から久々に巻物を取り出した。そこに日本語で書いていく。
「はい、手を触れて」
見上げたら、彼は怒っていた。
「俺が言う事じゃないですが、甘いですよ」
そうかな。
「私はね、自分が消えるより大事な人が傷つけられる、または消滅するほうがよっぽど罰になると思うの」
私は、君より数段狡い。
「どうする? ああ、大事な物および人は口にしなくても大丈夫。触れた時点で巻物が勝手に認識するらしいから」
予想通りナウル君は巻物に手を触れた。
「花…? 甘い匂いが」
私達の周りに薄紅色の花びらが舞い消えムスカリの花のような強い残り香が部屋に満ちた。
「その品は、使い方によっては大変危険です」
リアンヌさんは、いまや心配と険しさをその美しい顔に浮かべていた。
「そうですね。正義の為のアイテムとは言いきれない」
今、行った行為は強制的な縛りだ。
私は、ナウル君という駒を手に入れたのだ。絶対に背く事のない駒を。
「わかってます」
だって、こうでもしないと彼に待っているのは死だ。いくら湖の枯渇問題に貢献したとはいえ、あの王は許さない気がする。だから先回りをする。
私のモノだと。手を出すなと。
「次は、ラジのワニもどきの所に行くか。ノア、おいで」
「キュ!」
この気持ちの暗さがラジにバレませんようにと祈りつつ彼の部屋に向かった。
「私は」
今、部屋にいるのは私とナウル君、そして。
「ナウル。心して答えなさい」
リアンヌさん。なんだか顔つきが厳しい。これも彼女の一面だろうと他人事のように観察していればその顔が私に向けられた。
「ユラ様。切り捨てなければならない選択もあるという事を覚えておいて下さい。全てを手に入れるのは、この世界では難しいのです」
「……理解しています」
助けたい。可哀想。あれもこれも失いたくない。
「ただ、私は、二人のうち片方しか助けられない場面でも二人とも助ける」
助けたいではなく助ける。
願望だけでは足りない。せっかく神器があるのだ。最大限に活用する。
「それでご自身が傷つかれてもでしょうか?」
「ええ」
私は即答した。水色の瞳は何かを見透かすような色だ。この人は、戦ではどんな戦い方をしたんだろう。きっと隙のない美しい動きに違いない。
勝手にリアンヌさんがムサイ男達を蹴散らしていく姿を想像した。
「昔の私でしたら笑い飛ばしていたでしょう。ですが」
口許が少し上がっただけでふんわりと花が開くように一気に柔らかくなるから不思議。
「ユラ様に賭けます」
何を?
思わず首を傾げたら、笑われた。
「未来を」
なんか。
「壮大すぎて何と答えて良いのか分からないんですけど」
「あの、俺、私はもう二度と罪を犯しません!」
困惑する中、ナウル君が真剣そのものの表情で宣言した。
「それを信じるには無理がありますよ」
リアンヌさん、抑揚がない言葉って怖いです。
まぁ、国にとってはごもっともな台詞ではある。
「なら、なんか成約でもする? 破ったらナウル君の大事なモノが消えるとか。どお?」
私は腰に巻いていた袋から久々に巻物を取り出した。そこに日本語で書いていく。
「はい、手を触れて」
見上げたら、彼は怒っていた。
「俺が言う事じゃないですが、甘いですよ」
そうかな。
「私はね、自分が消えるより大事な人が傷つけられる、または消滅するほうがよっぽど罰になると思うの」
私は、君より数段狡い。
「どうする? ああ、大事な物および人は口にしなくても大丈夫。触れた時点で巻物が勝手に認識するらしいから」
予想通りナウル君は巻物に手を触れた。
「花…? 甘い匂いが」
私達の周りに薄紅色の花びらが舞い消えムスカリの花のような強い残り香が部屋に満ちた。
「その品は、使い方によっては大変危険です」
リアンヌさんは、いまや心配と険しさをその美しい顔に浮かべていた。
「そうですね。正義の為のアイテムとは言いきれない」
今、行った行為は強制的な縛りだ。
私は、ナウル君という駒を手に入れたのだ。絶対に背く事のない駒を。
「わかってます」
だって、こうでもしないと彼に待っているのは死だ。いくら湖の枯渇問題に貢献したとはいえ、あの王は許さない気がする。だから先回りをする。
私のモノだと。手を出すなと。
「次は、ラジのワニもどきの所に行くか。ノア、おいで」
「キュ!」
この気持ちの暗さがラジにバレませんようにと祈りつつ彼の部屋に向かった。
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