恋をする

蝋梅

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5.祖父の秘密基地

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 使ってもらう部屋へ案内する為二階に上がった。

「湖が見える。眺めがいい。本当に使用させて頂いてよいのでしょうか?」

 ベランダに出たランスさん、ランスが私の方に首を向け言った。

「空いてるから大丈夫」

 確かに彼が聞いてくるくらいに良い部屋なのだ。

 10畳ほどの正方形の部屋にベッドとテレビ、アンティークの二人掛けソファーとローテーブル。トイレ、シャワー付きで快適だ。

 一番はベランダというよりテラスと言ったほうが似合う場所で眺めれば湖と山。デッキチェアまである。

 この別荘が小さいというのは、周りの建物に比べてであって、戸建てと同じくらいはある。

 そしてこの一帯はお金持ちの人のエリアなので、家と家はかなり離れており、とても静かだ。

 私は一階から持ってきた雑巾やバケツ、シーツ類、タオルをローテーブルに置く。

「とりあえず拭いてもらって、衣類は備え付けクローゼットに置いてください。クローゼットの中も拭いたほうがよいかも。エアコン、えっと部屋の温度を上げたり下げたりする物で先に教えますね」

暑いから使い方教えとかなくては。

「その間私は庭で苗を植えているので、終わったら呼んで下さい」
「はい、ありがとうございます」

 さて、私はリビング前の窓を開けると洋風の寝転べるくらいの縁側から靴をおろし、場所を決めて土を掘り起こしていきながら小石を取り除いていく。

 周りは木がうっそうとしていて夏は涼しいけれど冬はかなり寒くなるだろう。家庭菜園には正直向かない場所だけど、ささやかでいいから育ててみたかったのだ。

今まで忙しくて時間がなかった。

 すぐ使える苗やこれから実がなる苗を植えていく。食べ物だけでは寂しいので、大きめな花の苗を植えた。

「手伝い間に合わなかったですね」

 仁王立ちで自分の植えた苗を眺めていると声がかかった。

「意外と1人でできました。」

 でも明日はきっと足が筋肉痛になっていそうだ。

 泥をはたきガーデニング用の手袋を外しリビングに戻り時計を見た。思っていたより時間が経っていた。

私はランスに話しかけた。

「少し祖父の部屋を覗いて、どう探すか決めて夕食を食べたらまた再開しますか。それとも休憩しますか? そういえば夜勤明けって言ってましたよね?」

私は彼を見上げ観察する。

 う~ん外国人だからか、表情が読み取りづらい。

 くすっと笑いランスは私を見下ろし手が私の頭に伸びてきた。

「そんなに疲れていないので大丈夫です。あと葉っぱ頭についてます」

 そう言うと葉っぱをとってくれた。なんか、調子狂うなぁ。とった葉っぱを彼はくるりと回し考えるようにゆっくり話す。

「正直、最初はかなり気がせいでいたのですが、今さら焦っても仕方がないと思い少し落ち着きました」

水色の目と視線があう。

「転移した場所がホノカの所でよかったです」

ニッコリ笑った。

眩しすぎる笑顔。
この人かなりの天然だ。

もう、いい。

 気分をきりかえよう。 私は雑巾とバケツを持ち、彼と二階へ上がっていく。

「これは」

入って彼はすぐに固まった。

「多分、子供は好きですよね。こういう空間」

 私は、改めて部屋を眺めた。物がなければ十畳くらいはある。でも、今は人1人通れるくらいしかスペースがない。

 長方形の部屋は入って左側は大きな年代物の木の本棚が壁を埋め尽くしている。

 右も棚になって一番右奥にブドウ彫りの開くと台になる机とセットで同じ彫りの引き出し付きの棚がある。机の上も棚も、物で溢れている。

祖父が生きていた頃を思いだす。

ここは祖父の秘密基地だ。

「他は掃除したんですけど、ここは埃を払っただけで生前祖父が使っていた状態なんです」
「…動かしてよいのですか?」

 こちらを気遣うような気配。知らない所に飛ばされ人を気遣っている場合じゃないだろうに。

「片付けるいい機会です」

私は彼を見上げ微笑んだ。

「とりあえず本棚を空にして拭いて足元の本を入れていきましょうか。ランスさん」
「ランスで」

 彼が高い所の本や物を取り出しながらこちらを向く。うっ。心で言うのと実際口にだすのと躊躇いがある。視線に負け小さく言う。

「…ランス」
「はい」

 だから、あんまり笑わないでほしいな。なんか負けた感。しばらく黙々とこなしていたら。

「これ」

 ランスが見せてきたのは、小さい兎の形のオルゴールの箱だ。昔見た覚えがある。

「それ、確か仕掛けがあるんです」

どうやるんだっけ。
ランスは手を箱にかざす。

「これに強い力を感じます。あと向こうにもいくつか」

 彼は手をつけていない右側の机の当たりを指さす。そこは、ガラクタが山のようになっている。

「まだ時間かかりそうですね」

ついため息がでた。

「すみません、疲れさせて休憩しましょう」
「でも、早く見つけた方が」
「さっきも言いましたが、今更なので、大丈夫です」

下に降りましょうと、そっと肩を押される。

「じゃお言葉に甘えて」

正直、クタクタだった。
朝から動きっぱなしだったし。

「夕御飯どうしようかな」

お腹が空いてきてつい呟く。

「俺が作りますよ。味は保証できませんが」

本当?

「是非お願いします!」

 疲れたのでおまかせする。ちょっと罪悪感があったので、夕食後の簡単なデザートを私が作る事にした。

 メニューは、紅茶ゼリー。小鍋に水を入れ沸騰したら火を止めティーパックを入れ濃さは渋めにし砂糖を少し。

 ゼラチンを入れ溶けたら、耐熱のミニガラスへ入れてあとは冷蔵庫へ入れて固まるのを待つだけ。

 しばらくしてランスに出来ましたと声をかけられた。ランスが寸胴からよそってカウンターテーブルに置いてくれる。

「どうぞ」

深皿にでてきたのは、スープと具がたっぷり。

 ポトフに似ているかな。大きめに切られた野菜、じゃがいも、人参、玉ねぎ、ゴロリとブロックの牛肉が入っており、ちゃんと後のせされた茹でたブロッコリー。

 ご飯はやめて昼間買っておいたフランスパン。お皿からいい匂いとともに湯気がでている。夏でも夜は涼しいので温かいのも大歓迎だ。

「早速いただきます」

フーフーしながら口にいれてみると。

「美味しい」

 玉ねぎはよく炒め火を通してから煮たのか、トロリとしていてスープにも旨味がよく出ている。お肉を頬張るとホロリと柔らかい。

「よかった」 

 彼はほっとした笑みを浮かべた。ふと隣で食べる彼の手元を見ると食器のあたる音がまったくしない。

 子供の頃から教え込まれているんだろうなぁ。とても動きが綺麗なのよね。

羨ましい。

 片付けは私がしようとしたら、さっと取り上げられた。きっと彼はもてるだろうなぁ。

 そんな彼を横目に見ながら私はソファーに座り、彼が力を感じると言った箱を手にし格闘しはじめた。

 兎の形のこの箱は、パズルのように外す順番が決まっていたはずだ。


 カタカタしばらく動かしていくと一個二個とパーツがばらされて最後の蓋を開ける頃ランスが洗い物を終え側にきた。

「これで最後です」

 私は蓋を開けた。中に入っていた物を摘まみ出す。

「ムーンストーンのネックレス?」

 それは楕円形の少し大きめな青みを帯びた乳白色の石だった。



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