7 / 21
7.彼の秘密と謎の女性
しおりを挟む
「これをどうするのか分からないけれど必要ならあげます」
ランスさんには、もしかしたらこの塊を動かせるかも知れないけれど、私には無理だ。
「本当にいいんですか?」
「はい」
いやに念押しするなぁ。何回か聞かれて頷いたら満足したらしく早速とりかかるようだ。純粋に気になる。
「やってみます」
彼はこの原石、表面は転がっている石の色で中には紫色の小さい突起がびっしり詰まった細長いそれに手をかざした。
しばらくすると変化が。
徐々にアメジストの紫の色が抜けて白く透明になっていき、石の形も崩れ最後は…少量の砂が残った。
「気持ち悪いですよね」
彼の声に私はランスの顔を見た。
何でそんな悲しそうなの?
「俺は異端なんです」
彼は自分の手のひらを見ながら話し出す。
「昔子供の頃、まだこの能力に気づいていなかった時、崖から落ち死にかけた事がありました。側には一緒に遊んでいた年老いたサシル、飼っていた動物がいました」
彼の表情は、悲しさと悔しさだろうか。
「死にかけていた俺は、無意識にサシルの生命力を奪っていた。気がついたらベッドの上で、いつも俺の側にいるサシルがいないのを不思議思い看病してくれていたであろう母に聞いたら母は俺にサシルがいつもしていた首輪を渡しました」
水色の瞳が私を一瞬見た。
「俺は生命力だけでなく全てを、骨すら遺さず奪い取ってしまった。この能力を知るのは、両親とヒュラルだけです」
私は、言葉を選びながら、もどかしさを感じつつランスに話しかけた。
「本当は、ランスの為にそのサシルは役にたってよかったと思ってるよって言えばよいんだろうけど、そんなのサシルにしか分からないから私は言えないかな」
誰にもわからない。
ただ。
「とりあえずランスを助けて損したとサシルが思わないような生き方するとか」
私は人を慰めるとかできない。
「これだけは言えるよ。砂になったのは、少しびっくりしたけど気持ち悪くない」
それに。
「例えばその力で雑草の生命力を少し貰って他の生き物に移せたりできるのかな?」
貰うことが出来るならあげる事も可能な気がする。
「いえ、試した事すらないです」
ランスは困惑しているような表情。
「万が一友達がケガして緊急の時とか近くにある草とかから貰えたら、その貰う量も調節できれば草も枯れないし便利じゃない?」
かなりの間があいた後に。
「そうですね。今度、試してみます」
呟くような声が返ってきた。うん。絶対試してほしい。
「じゃあ力はとりあえず大丈夫なんですよね?ここじゃあ空気も悪いし座る場所もないから下で通信とやらをする?」
「はい」
*~*~*
私は夕方に作って冷蔵庫に冷やしておいた紅茶ゼリーの用意をしはじめた。彼はソファーに座り腕輪の操作しているようだ。
「私がいない方がよいなら部屋にいるから」
ソファーに座っているランスに声をかける。
「いえ、大丈夫です。ただ、少し部屋を暗くしてもいいですか?」
「いいけど。こうかな?」
キッチンの部分だけ照明を残し電気を消した。
「ありがとうございます」
彼は、そう言い終るとなにやら腕輪に手をあてブツブツと呟き始めた。
私は、それを眺めながらお湯を沸かす。紅茶ゼリーだと飲み物どうしよう。そんな事を考えていたら、ランスさんの腕輪が急に光を放ち始めた。
その光の中に怒鳴り声と同時に人が現れた。
「※※※!」
そこには、真っ青な髪に真っ赤な瞳の美女が映し出されて彼女は何やら興奮しながら叫んでいた。
これ、テレビ電話だ。そしてその美人の人は?
微妙なタイミングでお湯が沸いた事を知らせるヤカンのけたたましい音が暗い部屋に響き渡った。
ランスさんには、もしかしたらこの塊を動かせるかも知れないけれど、私には無理だ。
「本当にいいんですか?」
「はい」
いやに念押しするなぁ。何回か聞かれて頷いたら満足したらしく早速とりかかるようだ。純粋に気になる。
「やってみます」
彼はこの原石、表面は転がっている石の色で中には紫色の小さい突起がびっしり詰まった細長いそれに手をかざした。
しばらくすると変化が。
徐々にアメジストの紫の色が抜けて白く透明になっていき、石の形も崩れ最後は…少量の砂が残った。
「気持ち悪いですよね」
彼の声に私はランスの顔を見た。
何でそんな悲しそうなの?
「俺は異端なんです」
彼は自分の手のひらを見ながら話し出す。
「昔子供の頃、まだこの能力に気づいていなかった時、崖から落ち死にかけた事がありました。側には一緒に遊んでいた年老いたサシル、飼っていた動物がいました」
彼の表情は、悲しさと悔しさだろうか。
「死にかけていた俺は、無意識にサシルの生命力を奪っていた。気がついたらベッドの上で、いつも俺の側にいるサシルがいないのを不思議思い看病してくれていたであろう母に聞いたら母は俺にサシルがいつもしていた首輪を渡しました」
水色の瞳が私を一瞬見た。
「俺は生命力だけでなく全てを、骨すら遺さず奪い取ってしまった。この能力を知るのは、両親とヒュラルだけです」
私は、言葉を選びながら、もどかしさを感じつつランスに話しかけた。
「本当は、ランスの為にそのサシルは役にたってよかったと思ってるよって言えばよいんだろうけど、そんなのサシルにしか分からないから私は言えないかな」
誰にもわからない。
ただ。
「とりあえずランスを助けて損したとサシルが思わないような生き方するとか」
私は人を慰めるとかできない。
「これだけは言えるよ。砂になったのは、少しびっくりしたけど気持ち悪くない」
それに。
「例えばその力で雑草の生命力を少し貰って他の生き物に移せたりできるのかな?」
貰うことが出来るならあげる事も可能な気がする。
「いえ、試した事すらないです」
ランスは困惑しているような表情。
「万が一友達がケガして緊急の時とか近くにある草とかから貰えたら、その貰う量も調節できれば草も枯れないし便利じゃない?」
かなりの間があいた後に。
「そうですね。今度、試してみます」
呟くような声が返ってきた。うん。絶対試してほしい。
「じゃあ力はとりあえず大丈夫なんですよね?ここじゃあ空気も悪いし座る場所もないから下で通信とやらをする?」
「はい」
*~*~*
私は夕方に作って冷蔵庫に冷やしておいた紅茶ゼリーの用意をしはじめた。彼はソファーに座り腕輪の操作しているようだ。
「私がいない方がよいなら部屋にいるから」
ソファーに座っているランスに声をかける。
「いえ、大丈夫です。ただ、少し部屋を暗くしてもいいですか?」
「いいけど。こうかな?」
キッチンの部分だけ照明を残し電気を消した。
「ありがとうございます」
彼は、そう言い終るとなにやら腕輪に手をあてブツブツと呟き始めた。
私は、それを眺めながらお湯を沸かす。紅茶ゼリーだと飲み物どうしよう。そんな事を考えていたら、ランスさんの腕輪が急に光を放ち始めた。
その光の中に怒鳴り声と同時に人が現れた。
「※※※!」
そこには、真っ青な髪に真っ赤な瞳の美女が映し出されて彼女は何やら興奮しながら叫んでいた。
これ、テレビ電話だ。そしてその美人の人は?
微妙なタイミングでお湯が沸いた事を知らせるヤカンのけたたましい音が暗い部屋に響き渡った。
31
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
乙女ゲームっぽい世界に転生したけど何もかもうろ覚え!~たぶん悪役令嬢だと思うけど自信が無い~
天木奏音
恋愛
雨の日に滑って転んで頭を打った私は、気付いたら公爵令嬢ヴィオレッタに転生していた。
どうやらここは前世親しんだ乙女ゲームかラノベの世界っぽいけど、疲れ切ったアラフォーのうろんな記憶力では何の作品の世界か特定できない。
鑑で見た感じ、どう見ても悪役令嬢顔なヴィオレッタ。このままだと破滅一直線!?ヒロインっぽい子を探して仲良くなって、この世界では平穏無事に長生きしてみせます!
※他サイトにも掲載しています
中途半端な私が異世界へ
波間柏
恋愛
全てが中途半端な 木ノ下 楓(19)
そんな彼女は最近、目覚める前に「助けて」と声がきこえる。
課題のせいでの寝不足か、上手くいかない就活にとうとう病んだか。いやいや、もっと不味かった。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
続編もあるので後ほど。
読んで頂けたら嬉しいです。
氷の騎士と陽だまりの薬師令嬢 ~呪われた最強騎士様を、没落貴族の私がこっそり全力で癒します!~
放浪人
恋愛
薬師として細々と暮らす没落貴族の令嬢リリア。ある夜、彼女は森で深手を負い倒れていた騎士団副団長アレクシスを偶然助ける。彼は「氷の騎士」と噂されるほど冷徹で近寄りがたい男だったが、リリアの作る薬とささやかな治癒魔法だけが、彼を蝕む古傷の痛みを和らげることができた。
「……お前の薬だけが、頼りだ」
秘密の治療を続けるうち、リリアはアレクシスの不器用な優しさや孤独に触れ、次第に惹かれていく。しかし、彼の立場を狙う政敵や、リリアの才能を妬む者の妨害が二人を襲う。身分違いの恋、迫りくる危機。リリアは愛する人を守るため、薬師としての知識と勇気を武器に立ち向かうことを決意する。
【本編完結】美女と魔獣〜筋肉大好き令嬢がマッチョ騎士と婚約? ついでに国も救ってみます〜
松浦どれみ
恋愛
【読んで笑って! 詰め込みまくりのラブコメディ!】
(ああ、なんて素敵なのかしら! まさかリアム様があんなに逞しくなっているだなんて、反則だわ! そりゃ触るわよ。モロ好みなんだから!)『本編より抜粋』
※カクヨムでも公開中ですが、若干お直しして移植しています!
【あらすじ】
架空の国、ジュエリトス王国。
人々は大なり小なり魔力を持つものが多く、魔法が身近な存在だった。
国内の辺境に領地を持つ伯爵家令嬢のオリビアはカフェの経営などで手腕を発揮していた。
そして、貴族の令息令嬢の大規模お見合い会場となっている「貴族学院」入学を二ヶ月後に控えていたある日、彼女の元に公爵家の次男リアムとの婚約話が舞い込む。
数年ぶりに再会したリアムは、王子様系イケメンとして令嬢たちに大人気だった頃とは別人で、オリビア好みの筋肉ムキムキのゴリマッチョになっていた!
仮の婚約者としてスタートしたオリビアとリアム。
さまざまなトラブルを乗り越えて、ふたりは正式な婚約を目指す!
まさかの国にもトラブル発生!? だったらついでに救います!
恋愛偏差値底辺の変態令嬢と初恋拗らせマッチョ騎士のジョブ&ラブストーリー!(コメディありあり)
応援よろしくお願いします😊
2023.8.28
カテゴリー迷子になりファンタジーから恋愛に変更しました。
本作は恋愛をメインとした異世界ファンタジーです✨
答えられません、国家機密ですから
ととせ
恋愛
フェルディ男爵は「国家機密」を継承する特別な家だ。その後継であるジェシカは、伯爵邸のガゼボで令息セイルと向き合っていた。彼はジェシカを愛してると言うが、本当に欲しているのは「国家機密」であるのは明白。全てに疲れ果てていたジェシカは、一つの決断を彼に迫る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる