1 / 13
プロローグ
しおりを挟む
「ねえ、皇子さま、これを差し上げますわ」
それは幼い折、春霞香るある日の記憶だった。彼はいまだ五歳と半年、艶のある藍のお髪を光に瞬かせた、牡丹もたじろぐ眉目秀麗な皇子様であった。その彼へと、碧髪を揺らめかせた、ほぼ同い年の少女が贈り物をした。白き箱を紗で包んで。広い宮殿の四阿に、長い朱の袖を青草に触れさせて。
「ねえ、開けてみてくださいな」
少女の見せる、子猫の甘えるようなまなざしは、あまりに愛らしく断ることは不可能だった。龍王と呼ばれる皇子はしずしずと紗を開き、箱のふたに触れる。その時、であった。
突然、ふたが開いて、その中に押し込まれていた毛虫が踊りだした。
「きゃああああ」
龍王が泣き叫び、碧の宝玉のような眼をした少女が指をさして笑った。
「おほほ、龍王ったら、いつでもこんな手にひっかるんだから! 私がお前に優しくして、何か仕組んでいない訳ないじゃないの! 」
ひーっひひ、ほほほと少女の笑いは止まらない。ばねで飛び跳ねる毛虫の人形に、いまだ
震えの止まらぬ皇子は泣きじゃくるばかり。
(この女、この女……)
この毎度の悪行に、龍王は眼に涙をたっぷり含ませて、心中密やかに誓う。
(いつかこの女に復讐してやる! 俺を散々泣かせたこの女、碧玉へ!!)
それは幼い折、春霞香るある日の記憶だった。彼はいまだ五歳と半年、艶のある藍のお髪を光に瞬かせた、牡丹もたじろぐ眉目秀麗な皇子様であった。その彼へと、碧髪を揺らめかせた、ほぼ同い年の少女が贈り物をした。白き箱を紗で包んで。広い宮殿の四阿に、長い朱の袖を青草に触れさせて。
「ねえ、開けてみてくださいな」
少女の見せる、子猫の甘えるようなまなざしは、あまりに愛らしく断ることは不可能だった。龍王と呼ばれる皇子はしずしずと紗を開き、箱のふたに触れる。その時、であった。
突然、ふたが開いて、その中に押し込まれていた毛虫が踊りだした。
「きゃああああ」
龍王が泣き叫び、碧の宝玉のような眼をした少女が指をさして笑った。
「おほほ、龍王ったら、いつでもこんな手にひっかるんだから! 私がお前に優しくして、何か仕組んでいない訳ないじゃないの! 」
ひーっひひ、ほほほと少女の笑いは止まらない。ばねで飛び跳ねる毛虫の人形に、いまだ
震えの止まらぬ皇子は泣きじゃくるばかり。
(この女、この女……)
この毎度の悪行に、龍王は眼に涙をたっぷり含ませて、心中密やかに誓う。
(いつかこの女に復讐してやる! 俺を散々泣かせたこの女、碧玉へ!!)
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
【完結】悪の尋問令嬢、″捨てられ王子″の妻になる。
Y(ワイ)
ファンタジー
尋問を生業にする侯爵家に婿入りしたのは、恋愛戦略に敗れた腹黒王子。
白い結婚から始まる、腹黒VS腹黒の執着恋愛コメディ(シリアス有り)です。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
廃城の泣き虫アデリー
今野綾
ファンタジー
領主の娘だったアデリーはある日家族を殺され育った領地から命からがら逃げ出した。辿り着いた先は廃城。ひとり、ふたりと住人が増える中、問題が次々とおこって…
表紙はフリー素材です
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる