ランダムで能力が決められるVRMMOを始めたらSTR極振りのヒーラーだった件

ありたん

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 蝉が鳴き声がだんだんと減り、夏の暑さがどこかへ行くと、季節は冬へ向け気温を徐々に下げていく。
 部屋に掛けてあった時計の短針は2時を指しており、部屋には見慣れない黒色のヘルメットの様な物が、ベットに付属している木製の棚に置いてある。
 黒色のそれに緑色のカーテンの隙間から射される日光に当たり、キラリと光った。

「やった!! 当たったぞッ! ハンドレットオンラインの先行OBTッ……ってうがっ!!?」

 俺は現在17歳、西条高校に通う一般的な高校生、秋宮章三だ。身長は普通、より少し低いくらい、体重も普通、んでもって学力、頭は上の中、身体能力は中の中と、まぁまぁな人生を歩んでいる。
 俺は自室のベットにて待ち望んでいた、初の〈ヴィクトリア〉を利用したフルダイブ技術を搭載したVRMMORPG、〈ハンドレットオンライン〉の運営からの先行OBTの当選情報がスマホに届くと、嬉しさのあまり飛び起き掛けていた布団を跳ね除け、二段ベットに頭をぶつけてしまったのだ。
「つ、ついてねぇ……。」

 俺は、離れていく意識の中、自分の不幸さに苦笑しドサッとベットに倒れ、気絶したのだった。

                   ◇◆◇◆◇

 2020年、電子信号で、脳への直接アクセスできる技術、通称〈ヴィクトリア〉が開発される。
 当初この発見は、医療などで利用される予定だったが、この技術を発見した科学者、木上きじょう森高もりたかは、大のゲーム好きで知られており、この技術を利用した新感覚、フルダイブ機能を搭載したゲームの作成を始めた。
 彼の技術、ゲームという企画に注目、ヒットを予想した企業が、彼に莫大な金額を投資する。その結果、VR(仮想世界)と呼ばれる、大人数のプレイヤーが行き交う、現実世界とは一風も二風も変わった、仮想世界が作成される計画が始動したのだった。

 そして2034年現在。〈ヴィクトリア〉を利用した仮想世界へ移動する為の、ヘルメット型ログイン機器通称〈ヴェロシティ〉が普及し、少々高いが個人で所有することがあたりまえの世界になった。そんな遠くもあり近くもある世界で、ゲーマーが夢見た、剣と魔法とあと色々……、そんな世界を経験する、とある少年の物語。


                      □■□■□


「……にき……、兄貴、大丈夫?」
 俺は倦怠感に襲われながら、聞きなれた声に目を開いた。
 すると目の前に妹の顔が見え驚くが、兄の威厳? を保つため別段気にしていないフリをする。

「奏……少し退いてくれ。」
 妹の奏がベットの塀から離れると、俺は掛けていた布団をどかし、体を起こす。
 するとズキリと頭が痛み、反射的に右手でたんこぶの出来たおでこを押さえた。

「大丈夫?」
 こちらを覗き込みながら聞いてくるのは妹の秋宮奏、高校一年生だ。
 身長は普通より低い、体重は普通……らしい。
 髪は日本人らしく黒、ロングで後ろで結びポニーテールにしている。
 色白で、外ではあまり遊ばないタイプ。
 部活は特にしておらず帰宅部。容姿は、少女特有のかわいらしさと、大人の魅力を合わせてプラス5くらいした感じ。
 最近はかなり暇らしく、下のベットで寝ている俺に良く悪戯をしている、やめてくれと言うのが本心だ。
 気づいたかもしれないが同室だ、特になにもないがな。何もないぞ、大切なことだから2回言ったからな?
 見たところ、帰宅直後だろうか、学校指定の制服を着用していた。

「頭にたんこぶ作ってぶっ倒れてたけど、なんかあったの?」
 さも何が起こったか分かっている様に、口に手を当てクスクスと笑い、手に持っていたカバンを二段ベットの二階へ投げると、奏は悪戯っぽくそう問うてきた。
 俺は、極力馬鹿にされない言い方を考えたが、特に思いつかず、本当のことを話した。

「今日、昔俺が言ってた先行OBTオープンベータテストを応募してたゲームがあるだろ? あれが当選してたんだよ、5000倍だぞ? それで嬉しくなりすぎちまって、二段ベットとがっつんこってわけさ……。」
 「馬鹿じゃないの?」と、笑いながら、奏は続けた。

「まぁ予想は出来てたけどね。ま、よかったじゃん、それでその……なんだっけ?」
「ハンドレットオンラインな。」
「あー、そのハンドレットオンラインは、いつ開始なの?」
 顎に手を添えながら、奏は、あーそれそれと言い俺を指さすと、先行OBTがいつ始まるかと聞いてきた、確か発表から3時間後にログイン可能だってメールに書いてあったな……。

「奏、今何時だ?」
「えっとー、5時?」
 二段ベットの上に上がる階段をのぼり始めていた奏に時間を尋ねると、返事が返ってくる。
ん? ……そいや当選者発表が確か午後2時だろ? んで今は午後5時ちょうど3時間……。
 瞬間、俺の体が反射的に動いていた。

「やべぇ!! 開幕ログインに遅れる!」
 俺はベットの端に置いてあった、ヘルメット──、ではなく黒い、ヘルメット型のログイン端末、〈ヴェロシティ〉を頭にかぶると、充電器がコンセントに刺さっている事を確認し、「ちょっといきなりどうしたの?」という奏の声を無視、ベットに寝転びログインへのキーワードを口にした。



                     「リンクイン!」

                ──瞬間、俺の視界が白く染まった──
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