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第一章【史上最強雀士コテツ編】

二十打目◉麻雀熱

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 スグルとメタは花火大会でナンパする気満々だった。その釣りエサとしてコテツを誘ってきた。花火大会一緒に回ってナンパしようぜと。スグルたちは反対番だから知らないのだ。シオリとコテツの関係を。
 いや、どんな関係かっていう程の仲でもないのだが。それでもコテツは花火大会だけはシオリと一緒にいたいと考えてはいた。少なくともシオリを置いてナンパに回るつもりは毛頭ない。

「悪いけど、おれナンパとか苦手だから」と断るも「嘘つけバカやろ! しょっちゅう女子バイトと仲良くキャッキャしてんのは知ってるんだよ、先週だって『なんちゃんケーキ半分こしよー』って言われて『良いよー』とか言って仲良く食べてたろーが」
「ああ、菱木ひしきとフルーツケーキ分けたやつか。言っとくけどアレ上下で半分こされたんだぞ」
「…上下」
「そう、上下。下はフルーツの匂いがするスポンジだけな」
「で、でも、いずれにせよ女子と仲良くなる才能があるのは間違いではないだろ」と言われてしまう。まあ、実際そうなのでムゥ困った。となってしまった。
 するとそこにイケメンのジンギが来店した。あ、助かった~。とばかりにコテツはジンギにスグルを押し付けて退散。
 ジンギは全てを理解するのに時間はいらない察しのいい男だ。シオリとコテツの仲も分かっているので、大丈夫だここは任せろと言わんばかりにサムズアップをしてコテツを応援してくれた。
 
 その頃、シオリはリーグ戦をまたしても制していた。3度目の女王位。不動の強さから男女混合リーグへの再登録を是非にと願われるがこれ以上忙しいのはお断りだとし、来期もまた女流リーグのみの参戦とした。
 シオリの麻雀熱に火をつけることが出来るのはコテツたち富士2の面々だけ。シオリはここでだけ熱くなってる自分を感じることが出来るのだ。なので、富士2号店最強決定戦を心から楽しみにしていた。
(私が勝ちたいのは富士2の——もっと言えばコテツくんになんだ。私は私を分かってくれる人に認められたい。今日も相変わらず強いねと彼に褒めてもらいたい。
 彼に勝つ! 強い私を見てもらうんだ。私だけを——)

 そう息を巻きながら旅行に着て行く服と帽子を延々と悩んでいた。


 旅行まであと1週間
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